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デザイナー・川口ユリナ「優しいグレーに、気持ちが整う」|クリエイターたちの快適空間に潜入 vol.8

  • 2021.8.17

ファッションやアートなど、さまざまな分野の表現者たちが作りあげたプライベートルームを拝見。もの選びの基準、色彩へのアプローチ、スペースの捉え方。それぞれが追求する“居心地のよさ”とは?

優しいグレーに、気持ちが整う

川口ユリナ
デザイナー

「とにかく広い窓が、この家を購入した決め手。カーテンもつけず、光のうつろいを1日中楽しんでいます」

谷尻誠率いるSUPPOSE DESIGN OF FICEに設計デザインを依頼した自宅兼アトリエは、川口ユリナさんが培ってきた美意識を体現する場所だ。

壁やテーブル、窓下の本棚などは柔らかくあたたかみのあるグレーで統一。床や棚、引き出しの木材は、表面に白い塗料を塗り込み、あらためて削り出したもの。ナチュラルになり過ぎない風合いを意識したという。

「部屋全体で見た時、色のコントラストが強くならないように…。室内にいろんな色があるともの作りに集中できないんです。自宅でデザインすることが多いので、リフォームでは〝目に優しい色調〟を一番重視しました」

着物や食器、食事など、自身の好きなものを語る上で和の要素は欠かせない。

「自分のベースにあるもの。日本の陶芸家の器コレクションも年々増えています」

静謐に整えられた部屋と、深い愛情が注がれる器やオブジェ。審美眼が導いた住まいは、穏やかな空気をまとっていた。

外光を美しく反射するのは西村森衛の丸鏡。〈ピエール・ジャンヌレ〉の椅子も存在感を醸し出すアトリエスペース。

床板を低くし、ゆとりのある空間に仕上げられたベッドルーム。右側のデスクスペースでは読書をしたり、書き物をしたり。右奥の扉の先は、クローゼットにつながっている。

木工作家、川合優が手がけた丸太スツールが並ぶ寝室。奥にはさんさんと光が差し込むバスルームが。

盛永省治のオブジェとサボテン。「竣工祝いに建築事務所からいただいた鉢植えです。広島県の植物店『叢 –Qusamura』のもので、作家さんが手がける鉢も素敵なんです」

和食器や調理器具がぎっしりと収納された引き出しは三層構造。「クローゼットと同じ考え方で、まず持っている食器の高さや長さを測り、すべてが収納できる造りを考えました。テイストやサイズごとに仕分けしています」

料理好きの川口さん。キッチンに立つ時間を豊かに彩るのはコレクションしている作家ものの器。「エレガンスを感じる丸い形や中間色に惹かれます。なかでも、吉田直嗣さんと寒川義雄さんが作る食器が好きですね」

ガラス作家、ピーター・アイビーの照明が印象的なダイニングスペース。奥には和室、手前の螺旋階段を上ると、ベッド&バスルームが広がる。

アトリエとリビングの窓際には作り付けの本棚が。「建築やインテリア関連の本が多いですね」。傍には吉川和人の木のプレートと、森本仁の花器が。

四ツ口のコンロはスウェーデン生まれの〈ASKO〉。壁にビルトインされたワインセラーと冷蔵庫はドイツ製の〈LIEBHERR〉。「とにかく広く、思いっきり料理時間を楽しめる理想のキッチン。家電やコンロ、キッチン機器は私が好きなブランドを指定しました」

川口さんの夢だったという光が差し込むバスルーム。シンプルな水栓はキッチンと同じく、アルネ・ヤコブセンが手がけた〈VOLA〉のもの。

GINZA2021年7月号掲載

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