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おじさん・おばさん世代は知らない「テレビ離れが激しい若者たちが五輪をどう見たか」

  • 2021.8.15
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無観客で開催された今回の東京五輪。リアルで観戦する機会がなく、テレビも「普段あまり見ない」という若者たちは、どんな形で五輪と接していたのでしょうか。原田曜平さんと若者10人によるオンライン座談会の模様をお届けします――。

インスタグラム
※写真はイメージです

【座談会参加者】 國武/立教大学3年生
森/青山学院大学4年生
鈴木/慶應義塾大学4年生
土井/立教大学2年生
矢追/早稲田大学3年生
山崎/慶應義塾大学2年生
池上/日本大学1年生
青野/専修大学2年生
岡田/高校2年生
赤峰/高校3年生

テレビ観戦しない若者も「情報は入ってくる」

【原田】今回の東京五輪は無観客開催でした。僕たちの世代はテレビで観戦した人が多かったようですが、若者はどんな形で五輪の情報に触れていたのでしょうか。何から情報を得たのか、盛り上がった人はどんな話題で盛り上がったのかなどを教えてください。

【青野】僕はテレビでも観戦しましたが、選手のインスタやTikTokもよく見ていました。海外の選手が結構、選手村の様子を上げていたんですよ。村内のことがわかって面白かったし、「料理がおいしい」とか喜んでくれている様子を見るとうれしい気持ちになりました。

【岡田】私は女子柔道の阿部詩選手がすごくかわいいなと思って推していて、柔道は第1試合から決勝まで全部テレビで見ました。あと、競泳のベルケサカ選手がすごいイケメンで。開会式でトルコ選手団の旗手をしていたんですけど、すごくかっこよかったのでインスタを調べてフォローしました。友達ともイケメン選手の話題でかなり盛り上がりました。

【國武】私は進んで観戦することはなかったんですが、SNSを見たらやっぱり五輪の話題が多くて、自然と情報が入ってきました。特に話題になっていたのはスケボーの解説者の瀬尻稜さん。「やべえ」とか若者言葉を連発していて、真面目に実況しているアナウンサーとの対比が面白すぎるってSNSで盛り上がっていました。このコンビ最高って。

期間中にSNSでバズっていたこと

【矢追】僕も五輪期間中はSNSをよく見ました。中でも選手の発信をよく見ていて、本当に楽しかったです。スポーツには興味がなかったんですが、SNSを通して興味を持つようになったし、選手との距離も近く感じられました。

新国立競技場
※写真はイメージです

【原田】皆さんの中では、テレビでしっかり観戦した人が7人、自分から進んで観戦はしないけれどSNSから情報が入ってきたという人は3人。今は若者のテレビ離れが叫ばれていますが、代わりにSNSが当たり前のものになっているから、五輪に興味がない若者も皆何かしらのタッチポイントはあるということですね。そのSNSの中で、他にバズった話題があれば教えてください。

【青野】たくさんあるんですけど、僕が印象に残ったのはサッカーの試合後のインタビュー。内田篤人さんのインタビューが独特のゆるーい空気感でいいってバズっていました。元日本代表選手だったからだと思うんですけど、選手との距離が近い感じで好感を持った人が多かったみたいです。

【池上】私が目にした中では、ブラジルのカルグニン選手が話題になっていました。柔道の選手なんですが、胸に漢字で「家族」ってタトゥーが入ってるんですよ。日本語のタトゥーに親近感をもって、応援する人も増えたみたいです。

選手村の生活がダイレクトに伝わってきた

【鈴木】Twitterでは、ドイツ代表のポロシャツに注目が集まっていました。胸のところにカタカナで、しかも縦書きで「ドイツ」って書いてあって。海外の人から見たらカタカナってかっこいいのかな(笑)。

【森】スケボーのヒューストン選手の動画も大人気でした。選手村の中をスケボーで走りながら紹介する動画を上げてくれたんですよ。動画自体もかっこよかったし、村の中の様子が見られて楽しかったです。

【青野】飛び込みのフリッカー選手のTikTokも、選手村での生活の様子がたくさん上がっていて人気でした。自販機で飲み物を買うとか日本食を食べるとか、ごく普通の紹介動画なんですけど、村は選手じゃなきゃ入れないから。選手の素の姿も見られて楽しかったです。

ツイッターで飛び交った話題のワード

【山崎】Twitterでは、一時「ヌルヌル半裸イケメン」っていうワードがすごい勢いで飛び交っていました。開会式でトンガ選手団の旗手が、国の伝統的なスタイルだと思うんですが、上半身裸でオイルを塗った姿で登場して。インパクトが強かったし、しかもすごいイケメンだったので話題になったんだと思います。

【國武】バレーボールの高橋藍選手も、イケメンだってSNSで騒がれていました。海外のTikTokでは、かっこいい男子スケボー選手を集めた動画もバズっていましたよ。あとTwitterでは、スケボーの堀米選手と名前が似ている新潟のサッカー選手が注目の的になっていました。堀米選手と間違えてフォローしちゃった人が多かったみたいで、本人が「なんにもしてないのになんかフォロワー増えててワロタ」ってツイートしてて(笑)。それに反応して、わざと間違えてフォローするっていう遊び方をする人も多かったみたい。

【土井】女性では、カザフスタン選手団の旗手だったルイパコワ選手が大人気でした。最初はすごくきれいだってことで話題になったんですが、後から2児の母だってこともわかって、SNS上ではさらに盛り上がっていました。

「国やメダルの色は関係ない」という価値観

【矢追】イケメンとか美人っていう以外にも、芸能人の誰かと似ているっていう話題も多かったです。フランスのサッカー選手が芸人のアイクぬわらに似ているって話も、結構盛り上がっていました。アイク本人が「フランスの18番、俺じゃねーよ」ってツイートしていて、それもバズっていましたね。

【土井】芸人さんの場合は、本人がネタにすることも多かったですよね。霜降り明星のせいやも、開会式でスペインのプラカードを持っていた人に似ているってことで、自分のTwitterでネタにしていました。実際、すごく似ていて面白かったです。

【原田】皆さんはテレビで観戦するだけじゃなくて、SNS上でも色々な楽しみ方をしたようですね。前回のリオデジャネイロ五輪のときは、テキスト中心のツイッターが主流でインスタも静止画が中心でした。しかし今は、「動画」中心のインスタのストーリーズやtiktokが盛り上がっています。選手自身が選手村の様子や自分の素の姿を「リアルな動画」で積極的に発信してくれています。

これほど選手の生の姿に「動画」で触れられた五輪は、史上初かもしれません。リアルでの観戦ができないにも関わらず、若者はSNSのおかげで五輪や選手をこれまでのオリンピック以上に身近に感じることができていたようです。これは今大会の大きな特色だったのではないかと思いました。

これまでのオリンピックは、テレビ局が中継した競技や取り上げることが多かった選手が人気を博してきました。しかし、皆さんはそうした「テレビ局の意図」とは必ずしも一致しない、SNS上の「Z世代の感覚」に合う生の動画に触れ、良いと思ったものを見て、拡散しました。この「Z世代の感覚」に合うスポーツや選手は、必ずしも「国」や「メダルの色」は関係ない。きっと北京オリンピックもパリオリンピックも、今後のスポーツ業界は全体的に、「Z世代の心を掴む動画」をSNS上で流すことができる競技や選手が人気を博していくことになるでしょうね。

構成=辻村 洋子

原田 曜平(はらだ・ようへい)
マーケティングアナリスト
1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。信州大学特任教授。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』などがある。2019年1月より渡辺プロダクションに所属し、現在、TBS「ひるおび」、フジテレビ「新週刊フジテレビ批評」「Live News it!」、日本テレビ「バンキシャ」等に出演中。「原田曜平マーケティング研究所」のYouTubeチャンネルでは、コロナ禍において若者の間で流行っていることを紹介中。

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