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佐藤愛子98歳、断筆宣言。「最後のエッセイ集」も爆発的ヒットの予感。

  • 2021.8.13
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佐藤愛子さんの「ヤケクソが籠った」痛快エッセイこと『九十歳。何がめでたい』(2016年、小学館)は、2017年「年間ベストセラー総合第1位」を獲得し、130万部超のベストセラーに。編集部のもとには、なんと2万通超の読者ハガキが届いたという。

そしてこのたび、『九十歳。何がめでたい』の待望の続刊『九十八歳。戦いやまず日は暮れず』(小学館)が発売された。

今年11月、佐藤さんは98歳になる。本書は、70年を超える作家人生に幕を下ろすことを宣言した「さようなら、みなさん」を収録する「最後のエッセイ集」。担当編集者も名残惜しさをにじませる。

「いつまでも佐藤さんの文章に触れていたい身としては寂しい限りですが、その断筆宣言にも、痛快で爽快で、破れかぶれの愛子節は健在! ゲラゲラ笑えて元気がわく天下無双のエッセイ集。ぜひお手元に置いてたっぷりとご堪能ください」

97年生きてきた人生の実感

タイトルの「戦いやまず日は暮れず」は、1969年に発売され、直木賞受賞作となった佐藤さんの小説『戦いすんで日が暮れて』の本歌取り。同作は、夫が作った莫大な借金をひとり背負い込んで奮闘する妻(=佐藤さん)の姿を活写し、「愛子センセイ」が世に出るきっかけになった代表作の1つ。

それから52年。「最後のエッセイ集」のタイトルに『九十八歳。戦いやまず日は暮れず』と付けたのは?

「借金は返済したけれど、人生の戦いはやまず、今も日も暮れていない」――。これが、「愛子センセイ」が97年を生きて来た人生の実感なのだそう。

本書は、「女性セブン」(2019年2月21日号~2021年5月20・27日号)に「気まぐれ連載」された「毎日が天中殺」のエッセイ21編を収録。「毎日が天中殺」と思えるほどの出来事が、「愛子節」たっぷりにユーモラスに綴られている。

■目次
こうしてソレは始まった/ヘトヘトの果/どこまでつづくヘトヘトぞ/桃食ったむくい/なんでこうなる?/時は流れぬ/お尻の役目/算数バカの冒険/不精の咎/今になってしみじみと/前向き横向き正面向き/嘘は才能か?/ブルンブルン体操/小さなマスク/みいれなのか ねのね/思い出考/マグロの気持/千代女外伝/「ハハーン」のいろいろ/釈然としない話/さようなら、みなさん

天中殺だったのだ

2016年秋。六星占術を勉強している知人から「佐藤さんは来年、天中殺に当ります、気をつけて下さい」といわれたという。

天中殺とは何か。佐藤さんは昔、占いの先生から「例えばですね、魚を食べる筈の人が逆に魚に食べられてしまうというような、そんな廻り合せの年です」と教わった。つまり、「こうなる筈のものがすべてそうならなくなるのだ」と。

もし、天中殺を無視したらどうなるか。先生は「困苦に見舞われ結果としては空しく滅び去ることもあります」といった。それを聞いた佐藤さんは「納得!」した。

度重なる結婚の失敗も、娘が高校受験におっこちたのも、我が家に強盗が入ったのも......「不都合なことは全部、天中殺のせいにしてしまえば気が楽だ」と思い至ったのだ。

「イヤ、これは愉快だ。こんなふうに考えれば、すべてに気が楽でいい。天中殺だったのだ、の一言で、朗らかに元気よく暮せるではないか......。そんなくだらない戯れ言をいってすべて後先考えず、困苦を困苦と思わずまっしぐらに生きて来た私である」

果たして、2017年に佐藤さんはどんな出来事に見舞われたのか――。

『九十歳。何がめでたい』の爆発的ヒットを受け、「私は作家という仕事を商売と思ったことがないので、売れた、売れたというふうに表現されると、だからどうした、と毒づきたくなる」とコメントしていた佐藤さん。

8月6日発売の本書は早速、各ネット書店のエッセイ部門でランキング上位を席捲している。本書も何せ面白い。「愛子節」に病みつきになる人が、またもや続出しそうだ。

また、『増補版 九十歳。何がめでたい』(小学館文庫)も同日発売された。単行本の内容に、佐藤さんのインタビュー、旭日小綬章受章時の記者会見の一問一答、冨士眞奈美さんとの対談、瀬戸内寂聴さんの解説などを追加。単行本を読んだ人も楽しめる「永久保存版」になっている。

■佐藤愛子さんプロフィール

1923年大阪府生まれ。甲南高等女学校卒業。69年『戦いすんで日が暮れて』で第61回直木賞、79年『幸福の絵』で第18回女流文学賞、2000年『血脈』の完成により第48回菊池寛賞、15年『晩鐘』で第25回紫式部文学賞を受賞。17年旭日小綬章を受章。近著に『人生論 あなたは酢ダコが好きか嫌いか 女二人の手紙のやりとり』(小島慶子さんとの著書)など。

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