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「野菜不足」解消のコツは?市販サラダやカット野菜は気休め?管理栄養士に聞く

  • 2021.8.13
野菜不足を解消するには?
野菜不足を解消するには?

多忙で自炊が難しい人の中には、日々の「野菜不足」を解消するために、コンビニやファストフード店でサラダやカット野菜を買っている人もいるのではないでしょうか。特にコンビニは24時間営業の店舗が多いため、いつでも気軽に購入できますが、ネット上では「カット野菜は栄養がない」「コンビニやファストフード店のサラダでは、栄養が十分に摂取できないのでは?」といった声もあります。

コンビニやファストフード店で売られているサラダやカット野菜を食べても、単なる気休め程度なのでしょうか。また、野菜を食べない生活を続けた場合、体にどのような異変が生じるのでしょうか。野菜不足を解消するコツについて、管理栄養士の岸百合恵さんに聞きました。

不足すると肥満や疲労に…

Q.そもそも、野菜を食べない生活を続けた場合、体にどのような異変が生じるのでしょうか。

岸さん「人間の体は新陳代謝を行いながら、健康な状態を保っています。摂取した栄養素が体内でしっかり利用され、新陳代謝を回すためには、ビタミンやミネラルを十分に摂取する必要があります。

ビタミンやミネラルはそのほとんどが人間の体内で合成できないため、食事から摂取しなければなりませんが、この供給源となるのが野菜です。野菜を食べない生活を続けた場合、ビタミンやミネラル、食物繊維が不足するケースが多いです。その結果、肥満につながりやすくなるほか、『腸内環境の悪化』『肌荒れ』『疲労がたまる』『自律神経を乱す』といった症状が出ます」

Q.日本人は1日にどれくらいの野菜を食べているのでしょうか。また、1日に摂取すべき野菜の量は。

岸さん「厚生労働省の『国民健康・栄養調査』(2019年)によると、野菜の1日平均摂取量は20歳以上の男女で280グラム程度です。若い世代ほど少ない傾向にあり、20~40代では250グラム前後にとどまっています。一方で、厚労省は循環器疾患やがんの予防に効くと考えられているカリウムや食物繊維、抗酸化ビタミンの適量摂取のためには、1日当たり350グラム以上の野菜の摂取を目標に掲げています。

また、厚労省と農林水産省が共同で策定した『食事バランスガイド』では、野菜やキノコ、イモ、海藻を中心とした副菜の1日当たりの適量は、エネルギーの必要量に応じて、5~6皿分(1皿:主食材70グラム程度)としています。これは生野菜は両手に山盛り、加熱調理した野菜は片手に山盛りした量を目安にすると分かりやすいです。

野菜は量に対してカロリーが低く、そしゃくが必要な食品なので、野菜を食べることによって、摂取カロリーを抑えつつ満腹感を得て、さらに必要な栄養素を充足することができます」

Q.栄養バランスを考える上で、どのような野菜を食べるのが望ましいのでしょうか。

岸さん「野菜には『緑黄色野菜』『淡色野菜』という分け方があり、緑黄色野菜は可食部100グラム当たりのカロテン(強い抗酸化作用を持つ色素)の含有量が600マイクログラム以上の野菜のことを指します。厚労省によると、野菜350グラムのうち緑黄色野菜を120グラム以上摂取するとバランスがよいとされています。

なお、サツマイモやジャガイモなどのイモ類はこの350グラムには含まれないので、イモ類以外での摂取を目指しましょう。ただ、イモ類には糖質が多いイメージがありますが、ビタミンCや食物繊維、カリウムなどのミネラルも多く含まれるため、1日に必要な糖質をごはんやパンだけではなく、適量の範囲でイモ類からも摂取すると栄養価の向上につながるのでおすすめです」

Q.カット野菜は「栄養素がない」と言われていますが、本当なのでしょうか。

岸さん「『カット野菜は薬漬けにより、栄養素がなくなっている』などと言われることがありますが誤解です。カット野菜は食べられる形にカットした後、『次亜塩素酸ナトリウム』という液体で洗浄します。この時点で確かに、水溶性ビタミンであるビタミンB群とビタミンC、カリウムはある程度損失します。

しかし、この作業はカット野菜を製造する工場だけに限った話ではなく、大量調理が行われる施設や病院などでも必ず行われている作業です。私が以前、病院に勤務していた際も、野菜や果物を次亜塩素酸ナトリウムで消毒していました。なぜなら、厚労省が、生野菜・果物の次亜塩素酸ナトリウムなどでの殺菌を義務付けているからです。

次亜塩素酸ナトリウムは短時間で高い殺菌効果がある上に『食品にほとんど残留しない』といった安全性が認められているため、赤ちゃんの哺乳瓶を消毒する際にも使用されています。水溶性ビタミンのB群やCの損失率は3~4割程度なので、すべての栄養が損失するわけではありません。また、ポリフェノールや脂溶性ビタミン、ミネラル、食物繊維などの貴重な栄養素はこれらの工程を経てもほとんど損失しないので、カット野菜を食べるメリットはあると思います」

Q.コンビニやファストフード店で販売されているサラダやカット野菜の多くは、レタスやキャベツ、コーン以外の野菜があまり含まれていません。コンビニやファストフード店の商品では、十分な栄養の摂取が難しいのでしょうか。

岸さん「商品にもよりますが、店で売られているサラダやカット野菜は緑黄色野菜が少ない傾向にあるので、それだけでは栄養が偏ります。満遍なく野菜を摂取するには、サラダやカット野菜の他に冷凍野菜やカットわかめを活用するのがおすすめです。

冷凍野菜は技術の向上により、加工時の栄養素の損失が最低限に抑えられています。ブロッコリーやホウレンソウなどの緑黄色野菜の冷凍商品はコンビニでも簡単に手に入り、保存もきくので、うまく使ってほしいです。カットわかめはカップのスープやみそ汁にそのまま入れるだけで、ミネラル類や食物繊維を摂取できます。こちらも冷凍野菜と同様、保存がきくので、便利だと思います。

このほか、コンビニで、ひじきや切り干し大根の煮物、おひたし、ごまあえ、酢の物、きんぴらなどの和食の副菜があれば、ぜひ購入してみましょう。サラダやカット野菜と一緒に食べると栄養価を高めることができます」

野菜ジュースじゃダメ?

Q.野菜の栄養を効率的に摂取するのに最適な時間帯について教えてください。また、野菜を食べるときはできるだけ、生の状態で食べた方がいいのでしょうか。

岸さん「先述のように、体の新陳代謝のためには栄養素が必要です。新陳代謝は常に行われているため、野菜の栄養素は特定の時間帯にまとめて摂取するのではなく、毎食時にバランスよく摂取するのが理想です。

生で食べるメリットは、調理が簡単で、野菜の栄養成分を変えずにそのまま摂取できる点です。一方で、かさが多い割に思ったよりも重量が少ないので、1日の必要量を摂取しにくいのがデメリットです。食べやすくしようと、ドレッシングを多くかけてしまうとカロリーオーバーにつながる可能性があります。

加熱して食べる場合、調理過程でビタミンCやB群の水溶性ビタミン類、カリウムなどが損失しますが、スープやみそ汁にすることで、溶け出した栄養素を丸ごと摂取することができますし、かさも減って食べやすくなります。このように生で食べること、加熱して食べることにはそれぞれ、メリットもデメリットもありますので、好みやライフスタイルも考慮しながら、摂取しやすい形で必要量を摂取できればよいですね」

Q.野菜ジュースで栄養を補うことはできるのでしょうか。

岸さん「野菜ジュースについては、あくまでも補助として考えてください。例えば、『1日分の野菜(350グラム)を使用して作った』と宣伝している野菜ジュースであっても、加工の段階で、カット野菜や冷凍野菜では残っていたビタミンやミネラル、食物繊維の多くが損失しています。また、糖質が含まれているため、『血糖値が上がりやすい』というデメリットもあります。

ただし、全ての栄養素がなくなるわけではないため、野菜をまったく食べない人にとってはメリットになるかもしれません」

オトナンサー編集部

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