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自閉症の我が子を「暴君」にしないために。すべての親に贈る「希望の書」

  • 2021.8.4

愛媛県在住の画家・石村嘉成(よしなり)さん。フランスの美術展(新エコールドパリ浮世・絵展)で版画作品が優秀賞に輝き、現在も各地で多数の個展を開いている。アートの才能を開花させた嘉成さんだが、実は重度の自閉症だという。彼の自立の背景には亡き母の献身的な「療育」があった。

シングルファーザーとなった嘉成さんの父親、和徳さんが綴った著書、『自閉症の画家が世界に羽ばたくまで』(扶桑社)が8月4日に発売された。

本書は、生後2歳で自閉症と診断され、暴れる、泣きわめく、発語がないなど、手の付けられない嘉成さんをどうやれば社会に送り出せるかと苦悩した両親による必死の子育ての記録である。

母の有希子さんは、小学校では普通学級の授業に毎日付き添うなど、すべてを息子の療育に捧げた。しかし、嘉成さんが11歳のとき、がん闘病の末に40歳の若さで他界してしまう。

遺された和徳さんは、シングルファーザーとして息子の療育に励む。中学・高校ともに普通学級に通わせた。なんと、高校3年間は無遅刻無欠席で、父子ともに自転車で登下校をしていたという。

高校3年生の時に絵画の授業で版画に目覚めた嘉成さん。大好きな動物や生きものたちの姿を次々と作品に仕上げていった。母親が遺してくれた動物のビデオや絵本が今もなお創作のモチベーションになっているという。

自閉症を乗り越え、芸術家として羽ばたいている今は一見、順風満帆にも思われるが、暴れる息子を前に「我が子を暴君にしない。親が子どもの奴隷にならない」という、壮絶な覚悟の「療育」が今でも続いている。

本書には、有希子さんが遺した胸を打つ日記も多数掲載されている。夫婦の25年にわたる苦闘の記録は子育てに悩む人や近い境遇の親たちに様々なヒントを与えるだろう。

本書の目次は以下の通り。

1章 自閉症の宣告 「療育」での意識改革
2章 母の献身、付き添い授業 そして死別......
3章 父が背負った「療育」 変わった息子
4章 父と子でがんばる喜び 人生を変えた版画
5章 アートで自立の道 母の想いは永遠に

決死の覚悟で子育てにあたり、息子を自立させた石村さん夫妻。嘉成さんの画家としての活躍の裏には、大きな苦闘や愛情があることがわかる。涙なくしては読めない、温かく美しい子育ての記録。

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