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ブシュロンの新作、驚きの「ホログラフィック」とは?

  • 2021.7.31
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7月初旬、パリではオートクチュールのコレクション発表と同時に、ハイジュエリーの発表が行われる。ブシュロンも、ヴァンドーム広場本店のサロンで、新作ハイジュエリーを発表。2011年以来、ブシュロンのクリエイティブディレクターを務めるクレール・ショワンヌに話を聞いた。

7月に発表されたブシュロンのハイジュエリー「ホログラフィック」から。

「ホログラフィック」――ギリシャ語で「全てを表現すること」を意味する「HOLO S」を語源に持つホログラムをテーマに、光と色の効果を追求したきらめくジュエリーのコレクション。クレール・ショワンヌは、「このコレクションによって、新しい光の定義を試みました。光の本質である色を捉えること。それぞれのピースはプリズムのように、光を構成するすべての色を表しながら、その複雑さを取り込みます」と語る。

インスピレーションは、自然の中の虹やオーロラ、また、アーティスト、オラファー・エリアソンと建築家ルイス・バラガンの作品から。

「2人のアーティストの光と色の扱い方、色へのアプローチ、その結果である作品から受ける感動。コレクションを通して私が受けた感動を、同じようにみなさんに伝えたいと考えました」

コレクションの第1章は、ホログラム効果を持つオパールを使ったジュエリー。多様な色を秘めたオパールに、ダイヤモンドや色の美しい貴石の輝きを合わせ、色と光の効果を追求した7作品からなる。

71.69カラットのオパールを抱く魚のネックレスはブローチにもなる。プリカジュール技術で仕上げられ、透明感のある乳白色のヒレ、ダイヤモンドが散りばめられて。ネックレス「オパレサンス」¥100,320,000(予定価格)/ブシュロン

中央にセットされた大粒のオパールが持つさまざまな色彩を反映したストーンが周囲にあしらわれ、まるで一つの石が指全体を覆うようなトロンプルイユ効果のリング「イリュージョン」。左:10.38カラットのダークオパールにレッドスピネル、ピンクサファイア、レッドガーネットなどを散りばめて。¥50,820,000、右:50.95カラットのホワイトオパールにダイヤモンド、サファイア、ツァボライトなどをあしらって。¥30,492,000(ともに予定価格)/ともにブシュロン

コレクションの第2章は、ホログラフィックコーティングの新技術で実現した革新的なジュエリー19点。ロッククリスタルやホワイトセラミックに、高温で溶かしたメタルをスプレーすることで、色彩の陰影が際限なく変化する効果を生み出した。

アイコンジュエリー「ジャックドゥブシュロン」は、ゴールドにセットしたパヴェをホログラフィックを施したロッククリスタルで覆い、ダイヤモンドの輝きが拡散する。ブローチ「フェソー」¥13,068,000(予定価格)/ブシュロン

何層ものクリスタルロックとダイヤモンドが並ぶブレスレット「プリズム」。カットされたクリスタルロックが多彩な光を放ち、見る角度や当たる光によって、さまざまに表情を変えていく。¥31,944,000(予定価格)/ブシュロン

2018年には本物の花びらを指輪にした「フルール・エターナル」、昨年は移りゆく空を切り取った「グットドゥシエル」のネックレスと、クレール・ショワンヌは革新的なアイデアと技術によりハイジュエリーの概念を超え、驚きに満ちたクリエイションを提案してきた。

「ブシュロンでは、すべては夢から始まります。それは、あるアイデアをジュエリーを通して表現すること。ですから、この夢は制限されてはならないのです」

ハイジュエリーの世界には、貴石、貴金属、ジュエラーの卓越した技術がある。だが、彼女が描く夢やアイデアの中には、ハイジュエリーのテクニックでは実現できないものもある。それでも諦めず、ジュエリー以外の分野のノウハウを探し、協力を得て夢の実現を目指す。

「今回の夢は、自然の中で見ることのできるホログラフィックの効果を再現することでした。でもそれは、ジュエラーにとって未知の技術。でも、航空宇宙産業で使用されるフランスの企業サン・ゴバン社の技術と出合ったことで、この夢が実現できました」

クリエイションスタジオにはイノベーションチームがあり、まだデッサンもない早い段階で、アイデアを実現するためのリサーチを開始するのだそう。彼らはさまざまな可能性を求めて他の分野の扉を叩く。ホログラフィックコレクションのためのリサーチは、2年半以上前から始まっていたという。

「最初は苦しいです。夢を描いているけれど、それをどう実現できるかが全くわからない。でも簡単なことではないだけに、コレクションが出来上がった時の喜びも大きいのです」

コレクションでは、思い描いていた以上の効果とバリエーションが表現できたという。ごく薄いコーティングを10回ほども繰り返すというホログラフィック加工では、溶かす金属の配合、コーティングの厚さや吹き付けの順番などで、さまざまな色合いが生まれる上、ベースになるロッククリスタルやセラミックのフォルムによっても効果が変わるだけに、何度もテストが繰り返された。

「最も複雑だったピースは、『クロマティック』の花のブローチ。私にとって、本物の花びらのリアリズムをセラミックで再現することが重要でした。ゴールドの5~6倍の硬さを持つセラミックを削って花びらにする難しさ。その上にホログラフィック加工を施すのですが、複雑な花びらの形に現れる効果を予想するのは困難でした。ですから、中央のストーンは、花びらの色の効果に合わせて最後に選んでいます」

自然をたたえたハイジュエリー「フルールエターナル」を再解釈した「クロマティック」。シャクヤクの花びらを一枚一枚スキャンし、ホワイトセラミックで忠実に再現。ホログラフィック加工が放つ色合いに合わせて、中央にはクッションカットのグリーントルマリンを。¥21,780,000/ブシュロン

「また、『ホログラフィック』ネックレスは、ホワイトゴールドとダイヤモンドも使用していますが、大部分が薄くカットしたロッククリスタルでできています。身体に沿うしなやかさが必要ですが、連結する部分を隠してくれる要素が何もない。テーマであるホログラフィックのアイデアを非常によく表現していると同時に、ハイジュエリーの高度なテクニックを駆使したマスターピースとして、とても気に入っています」

ロッククリスタルの薄片にホログラフィックを施し、ダイヤモンドをあしらったネックレスは、ハイジュエリーのアトリエのノウハウを駆使した逸品。中央にあしらったのは、20.21カラットのイエローサファイア。¥71,280,000(予定価格)/ブシュロン

2011年にブシュロンのクリエイティブディレクターに就任したクレール・ショワンヌは、翌年に発表した最初のコレクションですでに、ジュエラーらしからぬ素材を使って異彩を放った。

「創業者の制作したリエール(ツタ)をモチーフとしたジュエリーへのオマージュでした。ダイヤモンドの原石をヴァンドーム広場の石畳に見立て、そこからツタが生えているデザインで、メゾンのルネッサンスを象徴したのです」

今年1月に発表されたハイジュエリーコレクション「アール・デコ」に見られるように、彼女は、メゾンの歴史的なヘリテージコレクションにもインスピレーションを求めている。

「クエスチョンマークネックレスの技術は、創業者であるフレデリック・ブシュロンが発明したもの。ロッククリスタルを最初にダイヤモンドと一緒に使ったのも彼でした。彼の行った革新が、時代を経て定番になった。彼はハイジュエリーの世界を進化させるエスプリを持っていました。ですから私にとって、革新とメゾンに受け継がれるヘリテージは相反するものではないのです」

ブシュロンのクリエイティブディレクター、クレール・ショワンヌ。

通常、ハイジュエリーの世界では、希少なストーンをベースにそのデザインが生まれることが多いですが、クレール・ショワンヌは、ハイジュエリーの世界の常識を打ち破る新しい美しさを追求しているように見える。

「美しく希少なストーンやメタルは、すでに出来上がったものであると考えます。ですので、長きにわたって残っていくピースを提案する時、既得のものに留まってはいけない、どうしたらそれ以上のものを提案できるかを考えます」と彼女は言う。

「私にとって、希少なストーンよりも貴いと思えるのは、感動です。感動を、まるでカプセルに入れるように、ジュエリーの中に取り込むこと。儚い一瞬や自然の生む美しさが与えてくれる感動を永遠に手元に置くこと。その感動を人々に伝えることです」。

今年、ブシュロンは創業163年目を迎える。

「その中で、私がともに歩んできたのはたったの10年ですが、これからもクリエイションの自由を守っていきます。新しいテクニックや素材、新しいジュエリーの身につけ方も含め、自由に挑戦できることが、ブシュロンのDNAです」

インタビューの最後に、彼女はそっと、うれしいニュースを教えてくれた。

「このホログラフィックのテクニックを、ジュエリーのアイコンピースに応用することに成功しました。ハイジュエリーを超えて、もうすぐ、もっと多くの人に感動を届けることができると思います」

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