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納豆の日 宇宙で生きられる、食べたら酒蔵見学できない…“納豆菌最強”説は本当?

  • 2021.7.12
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納豆菌は最強?
納豆菌は最強?

きょう7月10日は「7(なっ)」「10(とう)」の語呂合わせで「納豆の日」です。体にいいとされ、毎日食べている人も多い納豆ですが、「朝、納豆を食べた人は酒蔵の見学ができない」「しょうゆ工場で働く人は納豆を食べない」「納豆菌は宇宙でも生きられる」など、納豆菌の強さを物語るエピソードを聞くことがあります。

はたして、納豆菌は“最強”なのでしょうか。国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)食品研究部門で食品加工・素材研究領域長を務める木村啓太郎さんに聞きました。

「真空でも死なない」は事実だが…

Q.まず、納豆菌によって納豆ができる仕組みの概要を教えてください。

木村さん「納豆の材料は大豆、水、納豆菌の3つです。よく洗った大豆を一晩、水に漬け、吸水させた後、その大豆を蒸し、そこに納豆菌の胞子を振りかけます。通気を確保して、40度程度に保った発酵室の中に入れておくと納豆菌の胞子が発芽し、煮豆に含まれる糖やアミノ酸を栄養源として増殖します。

この増殖の過程で、納豆菌が菌体外にプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)を分泌。プロテアーゼの働きによって大豆タンパク質が分解され、大豆の消化性が良くなるのです。また、納豆の粘り成分や香気成分、ビタミンK等も納豆菌の発酵作用によって作られます。1昼夜かけて発酵した納豆は約1日低温熟成した後、出荷されます」

Q.「朝、納豆を食べた人は酒蔵の見学ができない」と言われます。なぜでしょうか。

木村さん「お酒造りを行う蔵など、こうじを扱う発酵過程がある場所では、納豆菌は警戒されています。納豆菌が混入したこうじは古くから、“ヌルリこうじ(スベリこうじ)”と言われ、酒米の表面がヌルっとした感じになり、酒造りがうまくいかないからです。仕込み期間中の納豆食が禁止されている酒蔵もあります」

Q.「しょうゆ工場で働く人は納豆を食べない」ということも聞いたことがあります。納豆としょうゆは大豆が原料という点が共通していますが、納豆菌がしょうゆ工場に入ると、納豆ができてしまう可能性もあるのでしょうか。

木村さん「お酒同様、しょうゆもこうじを扱う発酵を経て造られますので、納豆菌は警戒されています。ただし、納豆菌が混入したからといって、しょうゆが納豆になることはありません」

Q.「納豆菌は宇宙でも生きられる」と聞いたことがあります。真空でも生きられるのはなぜでしょうか。

木村さん「真空でも『生きられる』というよりは『死なない』と言った方が正確です。納豆菌の胞子は休眠状態の細胞で、タンパク質を主成分とする厚い外皮(コート)に包まれているので、乾燥に耐えられます。また、『宇宙でも生きられる』は少々大げさです。胞子であっても、強い紫外線や放射線の照射により死滅します。アメリカのアポロ計画の際、納豆菌の仲間を宇宙空間にさらす実験が行われ、確かに数年間生きていたようですが『紫外線を遮れば』という条件付きでした。

なお、環境耐性が強い胞子を作る微生物は納豆菌以外にもたくさんあります。誤解のないように言いますと、納豆菌だけが特別に強いわけではありません」

Q.酒蔵やしょうゆ工場で警戒され、真空でも死なないということで、納豆菌は“最強”かお聞きしたかったのですが、納豆菌よりも繁殖力や生命力が強い菌もあるということでしょうか。

木村さん「『強いか弱いか』といった比較には判断基準とその指標が必要です。それらが定義されていませんので『最強かどうか』といった質問には回答いたしかねます。ただ、先ほど述べたように納豆菌だけが特別に強いわけではなく、例えば、納豆菌が生育できないような高温環境下では、好熱性細菌が“最強”となるでしょう」

Q.納豆菌からできた納豆は体によいとされますが、においや粘りが苦手な人も多いです。においや粘りをあまり気にせず食べる方法があれば、教えてください。

木村さん「そのまま食べるのではなく、他の食材と混ぜる、揚げ物に調理するなどの方法が考えられます。いろいろなレシピが提案されているようですのでネット検索してみてください。最近、粘りの弱い納豆やにおいを抑えた納豆が注目され、においや粘りが苦手な人や外国人(輸出)を狙った商品も開発されています。また、粘りの弱い納豆は加工しやすいので、納豆をベースにした新しい食材や調味料の開発が期待されています」

オトナンサー編集部

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