1. トップ
  2. 恋愛
  3. 受け取らず、捨てる人も…紙の「レシート」は今後も必要?その起源や将来は?

受け取らず、捨てる人も…紙の「レシート」は今後も必要?その起源や将来は?

  • 2021.7.2
  • 458 views
レシートは本当に必要?
レシートは本当に必要?

普段、スーパーやコンビニなどで商品の代金を支払うと店員から、紙の「レシート」を渡されます。しかし、「レシートはいりません」と受け取りを拒否したり、受け取ってもレジ横に置かれている「レシート入れ」に捨てたりする人も多いのが実情ではないでしょうか。そうした実情を見ると、日本全体で膨大な量の紙を使って、レシートが発行されていることが無駄なのではないかと思ってしまいます。今後も、レシートは必要なのでしょうか。経営コンサルタントの大庭真一郎さんに聞きました。

誕生は明治時代後半

Q.日本で、料金の支払い後、レシートを渡すようになった由来を教えてください。

大庭さん「現金の出入金を行ったり、購入履歴を印字したレシートを発行したりする機械を、多くの人は『レジ』と呼んでいますが、正式には『レジスター』、あるいは『キャッシュレジスター』と呼びます。このレジスターは、アメリカのレジスターを製造販売するナショナル・キャッシュ・レジスター社が1892年、レシート発行機能が備わったレジスターを開発したのが始まりです。

開発から5年後の1897年、横浜の貿易会社である牛島商会がアメリカからレジスターを輸入したのが、日本で使われた初めてのレジスターとなりました。つまり、明治時代の後半には、日本でレジスターが使われていたのです。その後、国内でレジスターが広く普及し、商品を購入した客にレシートを渡す商習慣が定着したと考えられます」

Q.店側がレシートを客に必ず渡すことは、法律などで決められているのでしょうか。

大庭さん「レシートに似たものに領収書があります。これは『誰が、誰に対して、いつ、いくらの金額を支払ったのか』が記録された書類ですが、民法では『代金の支払い(民法上は“弁済”)をした者は代金の受領をした者に対して、領収書(民法上は“受取証書”)の発行を請求できる』という規定があり、店側は客から求められた場合、領収書を発行する義務が生じます。

一方、レシートは『誰が支払ったのか』に関する情報が記載されていないため、厳密には領収書には当たらないのですが、代金の支払いと受け取りがあったことを証明できる書類ではあります。客が領収書の代わりにレシートの提供を求めた場合は、先述した民法の規定にのっとり、店側に渡す義務が生じるという解釈が通説です。

また、客がレシートの提供を求めなかった場合ですが、法律でレシートの発行を義務付けるわけではないため、レシートを渡す必然性はなく、渡さなくても違法でもありません。ただ、購入後の商品の払い戻しなど、万一の場合のトラブルを避けるため、また、長年の商習慣として、できるだけ渡すようにしている店が多いと思います」

Q.レシートを渡されても、すぐに捨てる人も多いです。今後もレシートは必要なのでしょうか。必要ないのでしょうか。

大庭さん「今後もレシートは必要だと思います。レシートは『いつ、何の購入に対して、誰に対して、いくらの金額を支払ったのか』が記録された書類です。確定申告を行うとき、支出を経費として計上するためには、原則、前述した4つの内容を証明する書類をそろえた上で、一定期間、保存することが求められています。

スーパーやコンビニでの飲食物購入など私的な消費の支払いに対しては、レシートを発行する必然性はありませんが、経費として計上する支出を証明するための書類としては、レシートは必要です。また、家計簿を付けている人は私的な消費の支払いであっても、レシートは必要でしょう。今すぐにレシートをなくすというのは現実的ではありません」

Q.とはいえ、レシートの発行で膨大な量の紙を消費していると思います。日本全体では、レシートの発行にどれくらいの紙を消費しているのでしょうか。

大庭さん「レシートの発行で大量の紙資源が消費されているのは事実です。OA機器の販売などを行う東芝テック(東京都品川区)の試算によると、全国で1年間に消費されるレシート用紙の重量は約5.4万トンで、A4サイズのコピー用紙に換算した場合、約135億枚分になるということです。長さを基準にした試算も行われています。それによると、全国で1年間に販売されているレシートロールの数は約2.4億ロールで、これは地球378周分(赤道回りの直径)の長さになるということです」

Q.キャッシュレス化が進んでいるのに、なぜ、レシートは紙で渡す手段しかないのでしょうか。ペーパーレスにはならないのでしょうか。

大庭さん「技術的にはレシートの電子化(電子レシート)が実現されています。買い物をするたびに紙のレシートを発行するのではなく、レシートの情報を電子化したものをスマホの画面上に発行し、記録をするシステムです。

このシステムを導入することで『環境にやさしい』『消費者の家計簿管理が簡単になる』『店側のレシート発行コストが削減される』というメリットがある半面、『消費者の個人情報や購買情報が第三者に漏れるリスクが高まる』『電子レシート対応のレジスターを導入するなど多大なコストがかかる』『会員証の発行や客の個人情報登録などの手間が発生する』というデメリットも存在します。そうしたデメリットが、レシートのペーパーレス化を妨げる要因となっています」

Q.今後、レシートは既存の形から変化すると思われますか。お考えをお聞かせください。

大庭さん「リサーチ事業を行うモニタス(東京都港区)が運営するアンケートサイト『Qzoo(キューズー)』が2020年4月に全国の10〜60代の男女1880人を対象に行った調査で、7割の人が紙のレシートを必ず受け取るという結果が出ました。すなわち、国民の間で『紙のレシートは不要だ』という考え方が定着している状況にはなく、また、前述したような電子レシートを導入するデメリットもあるため、短期的にレシートの形が紙から電子に変化することはないと考えます。

ただし、環境保護の観点から、ペーパーレス化の推進は国の重要政策の一つであり、今後、国が電子レシートを普及させるための補助金事業を行う可能性があります。実際、2018年に経済産業省が東京都町田市で電子レシートの実証実験を行っており、利用した消費者の8割が電子レシートを支持しました。私は近い将来、電子レシートを普及させるための補助金事業が行われるのではないかと考えています。そのことをきっかけに、レシートの電子化の動きが加速するのではないでしょうか」

オトナンサー編集部

元記事で読む
の記事をもっとみる