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ブルーがもたらす“心地よい違和感”。秀逸デザインが嬉しいカフェ「nephew」

  • 2021.6.23

今や東京随一のカフェ激戦区となった代々木八幡エリア。名店・人気店が軒を連ね、立ち寄りたくなるところばかりで悩ましいが、2021年4月にまた新たなカフェがオープンした。早速大きな注目を集めているのが、クリエイティブスタジオ「& Supply」が、池尻大橋のストリートバー「LOBBY」の姉妹店として手がけた、カフェ&ストリートバー「nephew(ネフュー)」だ。

nephewが店を構えるのは、まさにこのエリアの醍醐味ともいえるような細く入り組んだ路地裏。南仏風やナチュラルテイストの店が多い代々木八幡の街において、一面グレーの壁に、店のキーカラーだというブルーの丸角の窓が印象的だ。シドニーやメルボルン、北欧から受けたインスピレーションを取り入れたというデザインの秀逸さは、さすがデザイン会社が手がけているだけある。

「カフェ&ストリートバー」を謳うnephewは、昼と夜でふたつの顔を持つ。朝から昼まではハンドメイドの焼き菓子とこだわりのビバレッジが楽しめるカフェ。夜になると、オリジナルのクラフトカクテルがカジュアルに味わえる“ストリートバー”に姿を変える。

ストリートバーとは、大衆的な居酒屋とオーセンティックバーとのちょうど中間的な存在を表したオリジナルの造語なのだとか。「誰でも入りやすい空間で、いつもより楽しくて美味しい食体験に出会える場」が、nephewのコンセプトだ。& Supplyはグラフィックデザインを中心に手がける会社だが、空間プロデュースに力を入れたいと自社でバーの運営に乗り出し、池尻大橋に「LOBBY」をオープン。姉妹店のnephewにカフェを備えたのは、より幅広い客層に馴染む店を目指したからだという。

フレンチ、和食、パン、スイーツなど、あらゆる分野のフーディーたちを虜にするこの街には、遠方から訪れる人が多くいる一方で、駅周辺には住宅や小さなアトリエ、個人店が立ち並び、食・ファッション・カルチャーに精通した人たちが生活や活動の拠点にしている。そんな、代々木八幡の街で暮らす大人たちが、朝も昼も日常的に立ち寄れて、でもしっかりといい時間と美味しいものに出逢える場を作ろうというのだ。

デザイン会社だからこその計算し尽くされたカラーリングと設計

日本の飲食店において、店内に寒色系を積極的に取り入れているところは多くない。行きすぎると温かみが消え、シャープさが際立って居心地を悪くしてしまうのだろう。だがnephewがすごいのは、そんなブルーの使い方とバランスだ。キーカラーであるブルーがさまざまなグラデーションで要所要所に使われ、どの席にいても目に入る。それは新鮮でありながら絶妙に居心地のよい非日常感へと昇華している。この“居心地のよい違和感”こそが、nephewが目を惹くほかのカフェとの最大の差だ。

まだオープンから2ヶ月だが、そのデザインコンシャスな空間とカジュアルな居心地に惹かれて訪れる、街の人の姿はすでに多い。
アイコニックなブルータイルのカウンターに腰掛け、オープンキッチンを前に朝からレモンケーキを美味しそうに頬張っていたのは、近隣に住む年配客。聞けばほぼ毎日のように訪れ、カウンター越しにスタッフとの会話を楽しんでいくのだそう。

ほかにも、顔なじみと思しき客が順に顔をのぞかせる。それぞれ数十分ほどの短い時間ではあるが、ライトブルーで囲まれた明るい雰囲気の中で、声軽やかにスタッフとコミュニケーションを交わし、でも干渉されすぎないほどよい距離感を、心地よさそうに楽しんでいる。

一方で窓際には、半個室のような小さなテーブル席でひとりじっくりと本を読みながら過ごす人の姿も。店内を見渡してみると、カウンター以外のほとんどの席がこうした他の客の目に触れにくいプライベート空間のようにデザインされていることに気がつく。カフェやバーとしてはなかなか珍しいスタイルだろう。ここにも& Supplyらしさが光る。2階にはゆったりと大きなソファー席もあり、カウンターのタイルとは対照的な質感のサイザル麻が、くつろぎの空間を作り出している。

すべては、誰もが心置きなくいい時間が過ごせるようにというお店からのメッセージだ。特徴的な
デザインと鮮やかなブルーに惹かれて入ってみたら、使い勝手も居心地もよくて、美味しいものがあるなんて、最高じゃないか。
ひとりでもふたりでも、コーヒーだけでも、小腹が空いても……。さまざまなニーズを満たしてくれるnephewだからこそ、人が集まってくるのだ。

日替わりだから、毎日立ち寄りたくなる自家製スイーツ

またカフェのもうひとつの主役として、街の美味しいもの好きたちの間で早くも評判になっているのが、マネージャーのKeimi(ケイミ)さんが作るオリジナル焼き菓子。「ラムレーズンブラウニー」「レモンケーキ」「チョコバナナマフィン」など、どれも彼女自身が好きだというレシピで作る、大きめサイズの焼き菓子が店頭に並ぶ。

ラインナップはあえて固定せず、Keimiさんのその日の気分で食べてもらいたいと思ったものを日替わりで提供するのがnephewのスタイルだそう。
「近隣の方が毎日来ても違うものが並んでいるようにしたい。お昼にかけて焼き上がるものもありますし、『今日は何があるかな?』とここに寄ることが楽しみになる存在になれたら嬉しいです」(Keimiさん)
遠方から噂を聞きつけて来るスイーツ好きも多く、連日売り切れ必至だ。

一番人気は、シナモンやナツメグなどのスパイスがきいたキャロットケーキ。焼き菓子好きも多く訪れる。Harumari Inc.

ビバレッジは、地球環境に配慮した農法で生産された豆を扱うアメリカ・ワイオミング発のコーヒーブランド「Overview Coffee(オーバービュー コーヒー)」のエスプレッソドリンクを中心にそろえ、スパイスを効かせた自家製コーラなども。これから夏にかけて、焼き菓子とこだわりのビバレッジをピックアップして、街歩きや代々木公園へお出かけするのもおすすめだ。

空間の心地よさやブルーがくれるドキドキは足を運んでみればわかる。足繁く通う街の人たちがうらやましくなるだろう。nephewが加わり、代々木八幡の街も、この街のカフェ事情も、ますます魅力的で充実したものになりそうだ。

取材・文:RIN

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