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あなたの恋愛がうまくいかない理由【ひとみしょうの余談ですみません】

  • 2021.6.19

恋愛がうまくいかないと嘆いている人の多くが、じつは彼にすがるように恋しています。あるいは、恋愛というものにすがるように恋をしています。だからうまくいかないのです。

今回はこのことについて、一緒に見ていきたいと思います。

「すがる」と「頼りにする」

彼にすがっているのか、彼のことを頼りにしているのか。この違いを明確に示すことのできる人はほぼいないでしょう。「すがる」と「頼りにする」って、その線引きがとてもあいまいですから。

たとえば、年上の彼と一緒だと経済的にも精神的にも安定感があるので、だから付き合っているという女性は、彼にすがっているのでしょうか?それとも彼のことを頼りにしているのでしょうか?という問題。

答えるのがむずかしいですよね。せいぜい、すがってもいるし、頼りにもしている。けど、すがっている要素の方が強いかな?くらいの答えしか生まれてこないのではないでしょうか。

「すがる」とは

キルケゴールという哲学者は、「すがる」を「別の人間になりたいと思う気持ちのこと」と言います。

たとえば、彼にすがるように恋している人とは、彼によって(彼と一緒にいることによって)、「この」自分ではない「別の」自分になりたいと思っている、ということです。

ひとりでいたら、なにかがたえず不安で、ちょっと暗めの自分になってしまって、ネガティブなことばかり考えてしまう。そういう「この」自分を、彼と恋愛することによって変えたい。将来を悲観することなく今を今として元気に明るく生きる自分になりたい。彼と一緒ならきっとそういう自分に生まれ変われそう……。こう思いつつ彼と付き合うことをキルケゴール的に言えば、彼にすがるように恋する、となります。

無条件で愛された記憶

わたしたちは、たいてい、誰かにすがるように恋しますよね。

「もう今のこのわたしで十分です。生まれ変わりたいとかこの自分じゃない他の自分になりたいなんて思わないですから」と言い切れる人って、どれくらいいるのでしょうか?

多くの人は、親にすら無条件に認めてもらったことがないから、つねに他者の顔色をうかがい、自分がやるべきことをそこから推測し、ダメ出しされないように気を張って暮らしてきたはずです。そういう人が「もうこのわたしで十分です」なんて言えるはずがないでしょう。

その「言えなさ」を、ある種の女子は恋愛に持ち込みます。恋愛という自由空間(この、目先の利益を追う、管理の厳しい世の中における、最後の自由空間)においては、無条件でわたしのことを抱きしめてくれる人に出会いたい。そういう人と恋したい。こう思います。

そして実際にそういう彼が現れると、彼に無条件で愛されることを望み、願います。

がしかし、うまくいかない人はうまくいきません。男女の考え方のちがいもあり、うまくいかないときは、さっぱりうまくいきません。

だから、彼女は彼にすがるようになります。なにをすれば無条件で抱いてくれるの?と思うようになります。

後のことは、誰もがご存知でしょう。

彼が無条件で抱いてくれれば結婚まで辿り着くし、そうでなければお別れする。その間の中途半端な地帯にいるときがもっとも精神的にしんどい……。

あなたの恋愛がうまくいかない理由

すがるように恋している人とは、自分に絶望している人だとキルケゴールは言います。

彼氏のふるまいに絶望しているのではなく、あなたはあなた自身の人生に絶望しているのです。「この」自分を生きるしかない、そのことに絶望しているのです。

反対から言えば、自分に絶望しなくなれば、必然的に、恋愛がうまくいくようになります。

では、自分に絶望しないようになろうと思えば、どうすればいいのでしょうか?

拙著『自分を愛する方法』に、その答えを複数書きましたが、そのひとつをここでご紹介するなら、自分の「弱さ」を隠そうとしないことです。

恥ずかしい自分や、ダサい自分、邪悪な自分、エロすぎる自分などを、ちゃんと彼と「共有」することです。

そうするだけで、ずいぶんと「すがり度合い」が弱くなり、いい関係になれます。

※参考 ひとみしょう『自分を愛する方法』玄文社(2020)

(ひとみしょう/作家・キルケゴール協会会員)

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