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ロバート秋山のNetflix『クリエイターズ・ファイルGOLD』嘘は巧妙なほど面白い

  • 2021.6.17
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●熱烈鑑賞Netflix 72

存在しない仕事の「あるある」感

お客様の要望にNOと言わないホテルマン、和を押し出して世界に挑む演出家、いまなお愛される数々の唄を遺した童謡詩人。個性的、魅力的な人々を追うドキュメンタリー……のテイで、ロバート秋山竜次がさまざまなクリエイターを演じる『クリエイターズ・ファイル』。2015年、フリーペーパー「honto+」の一企画として生まれたこのプロジェクトは、回を重ねるごとに注目を集め、媒体を「月刊ザ・テレビジョン」に移してからはYouTubeでの動画配信もはじまり、より存在感を増している。

そのNetflixオリジナルシリーズが『クリエイターズ・ファイル GOLD』だ。登場するのは8人。これまで秋山が演じてきたなかでも単独で人気をあつめているファッションデザイナーYOKO FUCHIGAMI、天才子役上杉みち、清純派女優藤原采といったメンツが並ぶ。さらに、伝説のホテルマンやハリウッド映画の監督など、初出となるキャラクターも。

とりわけ印象に残ったのはTORIMAKIサービスの白木善次郎。歌姫などを取り囲む、誰だかわからない人たち「取り巻き」を派遣サービスとして確立させたという人物だ。デザイナーや女優といった「ある仕事」ではなく、存在しない仕事の、でもなんとなく誰もが「あーわかる!」となる感じを出してくる、その絶妙さに唸らされた。

八代亜紀を取り巻く、TORIMAKIサービスの白木善次郎(秋山竜次)/Netflixオリジナルシリーズ『クリエイター ズ・ファイル GOLD』独占配信中

豪華ゲストが得をする嘘

『GOLD』シリーズでは、各回にかなり豪華なゲストが本人役で登場している。ホテルマンの回には、そのホテルの常連として横浜流星が。子役・上杉みちの回では安達祐実が共演者とライバル子役の二役で。YOKO FUCHIGAMIの回には対談相手として冨永愛、今は亡き童謡詩人の回には、彼女を描くドラマで夫を演じることとなったというテイでオダギリジョーが。

ファッションデザイナーYOKO FUCHIGAMI(秋山竜次)と対談する冨永愛/Netflixオリジナルシリーズ『クリエイター ズ・ファイル GOLD』独占配信中

「秋山の作り出す無茶な世界観に付き合うの、すごいなあ」と思いながら観ていたが、ここに登場するのは、ゲストにとってもけっこういいことかもしれない。
ある意味、今作は彼らが生きる世界や彼ら自身をおちょくるような面もある。とくにTORIMAKIサービスの回にはきゃりーぱみゅぱみゅ、八代亜紀が出演しているが、作品の中で彼女たちは「お金を払ってでも取り巻きを増やしたい」存在だったりする。それを受け入れ、秋山に付き合う度量の大きさと、秋山のとんでもない発言に笑わずに付き合うプロ根性が一発で伝わってくるのだ。

最新技術でAI石丸ツワノ(秋山竜次)と対面するオダギリジョー/Netflixオリジナルシリーズ『クリエイター ズ・ファイル GOLD』独占配信中

映像の細部にわたる「っぽさ」

『GOLD』で配信されている映像は、ロバート秋山の頭の中で生まれた「それっぽい」キャラが、とうとうここまで「それっぽさ」を極めたか! と感慨に浸ってしまうほどに「っぽい」。キャラクターに合わせて、映像自体も細部にわたるまで「っぽさ」が作り込まれている。

たとえば清純派女優・藤原采の回は、日曜午後あたりに放送されていそうな、航空会社がタイアップについた女優ふたりの旅番組。たっぷりと尺をとった謎のイメージ映像、会話の中に不自然に入り込む航空会社発行のカードの良さを語り合うくだり、テロップのあしらいやフォントの雰囲気……。

舞台演出家・津山紀文の回では、おそらくテレビ局が主催についている舞台作品の特集番組のようなつくりがなされている。「アンバサダー」として中尾彬・池波志乃夫妻が登場する感じ、稽古風景の厳しさ、合間に入る観客の「最高!」みたいなコメント、繰り返しテロップで出る公演日程と「プレイガイド発売中!」の文字……。「あの『バキュームシティ』から6年」とか、言われても知らないけどなんとなく名作なんだろうなと思わせる感。

透明すぎて見えない清純派女優・藤原采(秋山竜次)とふたり旅に出る永野芽郁/Netflixオリジナルシリーズ『クリエイター ズ・ファイル GOLD』独占配信中

いずれも、数々のオリジナルコンテンツを作ってきたNetflixだからこそできること。Netflixと組むことで、秋山は自身が演じるキャラクターだけでなく、そのパッケージ全体の「っぽさ」、丸ごと嘘をつく手段を手に入れたのだ。

百の本当を追求する秋山の嘘

秋山とタッグを組んでコントを作ることもある友近は、先日『お笑い実力刃』(テレビ朝日)でライバルを問われて「ライバルというか、一緒にネタ作りをしていて『ちょっと被った』と思うのはロバートの秋山さん」と答えていた。彼女が扮する芸歴50年の演歌歌手・水谷千重子はファンを増やし、本物のベテラン歌手たちとライブをしたりデュエット曲をリリースしたりしている。さらに今年は明治座で二度目の50周年記念公演まで行った。

友近が一人のキャラを極めて「本当」に近づけているとしたら、秋山は百のキャラでそれぞれ「本当」を追求している。嘘は、限りなく本当に近づいたときにいちばん面白いのだ。

ハリウッド映画監督、ドナルド・C・ダンパー(秋山竜次)/Netflixオリジナルシリーズ『クリエイター ズ・ファイル GOLD』独占配信中

■釣木文恵のプロフィール
ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆。

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