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至福の一杯を目指して歩く! イギリスのパブ・ウォーク。

  • 2021.6.9

写真・文/坂本みゆき(在イギリスライター)

今年は思いのほか「冬」が長くて5月半ばを過ぎても肌寒く、朝晩には暖房をいれることも珍しくなかったが、6月に入ってようやく太陽が燦々と輝く日々がやってきた。

そうなると貴重な晴れ日を少しでも楽しもうと一気にアウトドアモードになるのがイギリス人。普通の日でも外の芝生に座ってランチをしてプチピクニック気分を楽しんだり、ただただ公園や自宅の庭で寝そべって、思う存分お日さまを浴びたり。(この国で、日焼けはどれだけ余暇を楽しんだかを示すバロメーターでもある。)

ロンドンから車や電車で小一時間も行けば、景観に恵まれた自然スポットも多い。気軽に行けるので、お休みの日に半日かけてトライするウォーキングのコースも豊富だ。なかでもパブ・ウォークは定番的な人気を誇る。

今回のスタート&ゴール地点のパブ「タイガー・イン」。5月のロックダウン緩和第3弾で、飲食業はようやく室内での営業が可能になったが、古いパブで店内が狭いためか屋外だけでの営業だった。

パブ・ウォークとはウォーキングのコースの最初と最後や、中間にパブに立ち寄ることを組み込んだもの。田舎歩きばかりではなく、ロンドンなどを散歩しながらパブを訪れる都会のパブ・ウォークもある。パブを「目の前にぶらさげた人参」さながらに、それを励みに歩くわけである。専門のガイドブックが数多く出版されているし、ネットサーチすればコースを紹介するサイトもたくさん見つかる。最近はアプリもある。それぞれのコースは難易度や総距離、所要時間の目安、さらには愛犬同伴OKかどうかなどにも触れているので、自分のシチュエーションや体力や体調と合わせて選ぶことができる。

今回私が参考にしたのは、ナショナルトラストのサイトに掲載されていたタイガー・インというパブからスタートして、映画などで有名なセブンシスターズの真っ白な岩壁周辺を歩くというコース(Birling Gap walk from the Tiger Inn)。

まずは自宅から車でタイガー・イン前へ。出発地点に立って、真っ先に目に飛び込んできたのは(今回のパブ・ウォークとは無関係だけれども)前にある住居の壁にあったブループラグ。この家は探偵を退職したシャーロック・ホームズが1903年からの14年間暮らした場所だそう。

シャーロック・ホームズが隠居後に過ごした家。緑のスペースを望んでいて、のんびりとしたリタイア生活をしていたことが彷彿とされる。

探偵だったばかりなく、養蜂家でもあったらしい。

さて、それではウォーキングスタート。斜面を登って丘の上へ。羊が放牧されている壮大な草原を歩いて行く。

ひたすら歩いていくと、バターカップの花で黄色に染まった丘の先に海が見えてくる。

さらに歩いて行くと真っ白な岸壁が。息を呑む美しさ。その絶景をじっくりと味わいながらも、ひたすら歩く。

色々な映画に登場して、イギリス好きにはおなじみのセブンシスターズの眺め。The Whoの映画『Quadrophenia(四重人格)』のラストシーンは特に有名で、ファンの巡礼地でもある。

羊たちの放牧地に入るときは、スタイルと呼ばれるこんな踏み台で仕切りの鉄線を乗り越える。

「この草原には羊がいますよ!」のサイン。

最後は丘を降りてゴール。海岸沿いに寄り道したこともあって、所要時間は3時間ほどだった。

スタート地点のパブ前に無事帰還。

その後はお約束の一杯。このエリアで作られている地ビールのエールで乾杯!

泡はごくわずかで室温で飲むのはイギリスのエールのお約束。日本式の冷え冷えビールがお好みならばラガーを注文すること。

春夏だけでなく、秋は紅葉を楽しむパブウォークもある。雄大な自然の眺めは美しく素晴らしいけれども、パブに立ち寄るお楽しみが気持ちをさらに高揚させてくれているのは間違いない。

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