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本でしか癒せない痛みがある。ビブリオセラピーとは?

  • 2021.6.5
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『惜日のアリス』『ファルセットの時間』で話題の著者、坂上秋成さんの最新作『紫ノ宮沙霧のビブリオセラピー 夢音堂書店と秘密の本棚』(新潮社)が5月28日に発売された。

表紙を担当したのは、『クズの本懐』『推しの子』などで可愛い女の子イラストに定評のある横槍メンゴさんだ。

洋館のような不思議な雰囲気のある書店「夢音堂書店」に足を踏み入れると、目に飛び込んでくるのは壁一面の本と、書店には不釣り合いのドレスを身に纏った美しい女店主、紫ノ宮沙霧。彼女はそれぞれのお客様にあった「その人だけの本」を差し出すことができる。

日常の繰り返しに飽き飽きしていた少年、文章を書くことができない小説家、先輩との恋に夢中な少女など、彼らは皆、表には見えない心の痛みを抱えていた。そんな彼らと、店主が差し出す本が出会う時、本でしか癒せない奇跡が起こる。

本書の目次は以下の通り。章立ても「一冊目」「二冊目」と表記されている。

一冊目 長岡蒼矢のどうしようもない退屈とささやかな嘘
二冊目 藤堂桜子はおびえない
三冊目 敷島早矢瀬と告白までの距離

「一冊目」の主人公、長岡蒼矢は高校1年生。両親や友だちとの関係も良好で、好きな女の子とは本の話で盛り上がる。

「俺の日常は相当に上手く回っている。人にやっかまれてもおかしくないくらいの順調っぷりだ。だからこそ余計に、この退屈、この虚しさの理由がわからない」

ある日、気分転換に近所のマンションの屋上にのぼった蒼矢は、山の丘陵に奇妙な建物を見つけた。黒塗りの大きな洋館で、異様な存在感がある。退屈しのぎに行ってみると、「夢音堂(むおんどう)書店」と書かれた看板が目に入る。不審に思いながらも、足を踏み入れた蒼矢は......。

謎めいた描写に続きが気になり、ページを繰る手が止まらない。

坂上さんは刊行にあたり、下記のようにコメントしている。

本を愛するすべての人に届けたい。
その思いで書き上げた一冊です。
私たちが生きる世界は時におそろしく、時につらい現実を運んできますが、その先に広がっているやさしさもある。
それをつかまえたいと思いながら、本書を執筆していました。
すべての章におどろきを詰め込んだつもりです。
あなたの心に刺さる本になっていれば、本当にうれしい。

「新感覚読書療法(ビブリオセラピー)」小説と銘打った本作。読了後はきっと、穏やかな気持ちになれるだろう。

坂上秋成(さかがみ・しゅうせい)さんプロフィール
1984(昭和59)年生まれ。早稲田大学法学部卒業。著書に『惜日のアリス』『夜を聴く者』『モノクロの君に恋をする』『ファルセットの時間』『ONE PIECE novel LAW』などがある。

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