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恋愛、仕事、職場…「嫉妬」はなぜ起こり、どう付き合ったらいいのか

  • 2021.6.1
「嫉妬」に振り回されないためには?
「嫉妬」に振り回されないためには?

恋愛や友情、仕事、職場など、人生のさまざまなシーンで起こり得る「嫉妬」の感情。

相手や相手を取り巻く状況などに嫉妬心を抱きやすい人、また、自分がそうしたタイプだと自覚している人もいると思いますが、ネット上では「自分より先に出世した後輩に正直、嫉妬してしまった」「恋愛が絡むときだけ、なぜか嫉妬深くなってしまう」「嫉妬の感情をコントロールできなくて疲れてしまう」「嫉妬するのをやめたい」という声がある一方で、「嫉妬心は向上心でもある気がする」「嫉妬がきっかけで成長できることもあると思う」など、嫉妬の感情を上手に利用しようとする人もいるようです。

「嫉妬」の感情に振り回されず、うまく付き合っていくためにはどうすればよいのでしょうか。心理カウンセラーの小日向るり子さんに聞きました。

「人は人」「自分は自分」と唱える

Q.そもそも、嫉妬とは心理学的にどのような感情・状態のことですか。

小日向さん「嫉妬の心理学的な意味は、愛する人が自分以外の人に好意を向けた際、その相手(愛する人が好意を向けた人)に対して抱く恨みや憎しみの感情を指します。しかし、現在、一般的に使われる嫉妬の意味には、『愛する人』といった第三者が介在しなくても、自分が持っていないものを持っている人をうらやましく思ったり、憎らしく思ったりする、ねたみや嫉(そね)みの感情も含むようになっています」

Q.嫉妬しやすい(嫉妬深い)性質はどのように形成されるのでしょうか。

小日向さん「嫉妬行動は動物にも見られるので、嫉妬しやすい/しづらいといった性格傾向が全て教育によって形成されるものではありません。しかし、例えば、勝敗にこだわる教育を受け、それに応えようと頑張ってきたタイプは、他人をライバル視することが身に付いているために嫉妬しやすくなりますし、愛情に乏しかったり、きょうだい間で格差をつけた教育を受け続けたりすると独占欲が強くなり、それが嫉妬深い性格形成につながることも多いです。

また、教育だけでなく、愛する人を他人に奪われて、ひどく傷ついた経験を持ってしまうと、次の恋愛の際に『もう離したくない』といった感情が強くなり、嫉妬感情が強くなることもあります」

Q.嫉妬しやすい人とそうでない人の違いは何だと思われますか。

小日向さん「『あの人っていいなあ』と思う羨望(せんぼう)も嫉妬に含めると、嫉妬感情自体は誰もが持ち得る感情だと思います。では、何が嫉妬しやすい人とそうでない人を分けるのかというと『自分に対する自信』の高低です。

自分に対する自信とは『自分は価値のある存在である』という認識のことで、これを心理学では『自尊感情』といいます。この自尊心が根底にあれば、たとえ嫉妬を抱いたとしても『でも、自分も頑張れば、あの人のようになれる!』とか、恋愛でも『あの人に傾いても、また、自分に戻ってくる』など、嫉妬感情をポジティブに変換し、肥大化する前に収めることができます。

自尊心の有無については男女差も年齢差もないと考えますが、年齢でいえば、自意識過剰になる思春期はどうしても他人と自分を比較しやすくなるために、嫉妬を抱きやすい年代であるといえるでしょう」

Q.嫉妬しやすいこと、嫉妬深いことのメリットとデメリットとは。

小日向さん「嫉妬感情そのものは先述したように、ある人物を憎んだり、嫌ったりする感情とセットになることが多いです。こうした感情を心地よいものとして受け入れる人はいませんので、基本的には、嫉妬にはデメリットしかありません。

しかし、昇華できれば、メリットになります。昇華とは、精神医学者のフロイトが提唱した人間の防衛機制心理の一つで『現実原則を受け入れた上でそれを発散する』という心理のことです。例えば、芸人さんが失恋した経験を笑いのネタにして、人を楽しませることにつなげたり、自身のコンプレックスを漫画に描いて発信し、娯楽や収入につなげたりするのが昇華です。昇華することができれば、嫉妬経験もメリットになります」

Q.嫉妬をしやすい人の中には「嫉妬の感情をエネルギーにして頑張れた」「相手に嫉妬したからこそ成長できた」と嫉妬がプラスに働く人がいる一方で、「嫉妬の気持ちに苦しめられている」「嫉妬心が強すぎて疲れる」とネガティブに作用する人もいるようです。違いは何だと思われますか。

小日向さん「これもやはり、自尊感情をきちんと持てているかの違いです。ただ、自尊感情が保たれている人であっても、ある恋愛において、とてもひどい奪われ方をしたなど強烈な“傷つき体験”をしてしまうと、一時的に自尊心が低くなることもあります。従って、自分には自尊感情があるから、どんな状態でもポジティブに受け止められるはずとは思わない方がよいです」

嫉妬とうまく付き合うには?

Q.嫉妬をしやすい人、嫉妬深い人はその性質を改善した方がよいのでしょうか。それとも、その必要はないのでしょうか。

小日向さん「先述したように、嫉妬深い性格は教育や過去の環境による要素も大きく、幼少期~思春期にわたって刷り込まれた価値観や観念は成人してから改善しようとしても、難しい場合が多いのが現実です。また、嫉妬の対象は突き詰めれば、自分がなりたい姿であることも少なくないので、嫉妬感情は努力への原動力になり得ることを考えると、改善すべきものと捉える必要はないと思います。それよりも、昇華させるためにはどうしたらよいかなどの対処法を模索した方が、よほど効率的です」

Q.恋愛や友情などの人間関係やビジネスシーンなどで、嫉妬の感情をコントロールしたり、上手に生かしたりしたいと考える人もいます。自分の中の嫉妬心とうまく付き合っていくためのコツやアドバイスをお願いします。

小日向さん「嫉妬感情を生かしたい場合はやはり、昇華が大切です。『さて、この嫉妬感情をどう調理してやろうか』というくらいの心意気で向き合ってみてください。また、『嫉妬が強すぎて、苦しい』『昇華より、まず手放したい』と思っている人は、自分と他人との境界線をしっかり引くことを意識してみてください。

例えば、愛する人が腹痛で苦しんでいるときに薬を買ったり、病院に付き添ったりすることはできますが、痛みそのものを代わりに引き受けることはできないですよね。つまり、どんな関係であっても『自分がその人になることは不可能だ』と悟ることです。自分を犠牲にして、相手に尽くしてしまうタイプの人は特に、この境界線を確立しなければ、嫉妬の苦しみからの解放は困難です。

この思考を軸として維持できるようになると、嫉妬がつらいときに『人は人、自分は自分』と唱えただけで、以前より楽に嫉妬感情を手放すことができるようになります」

オトナンサー編集部

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