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初心者のための「おかやま弁」基礎講座。岡山県の魅力に迫る!vol.3

  • 2021.5.27
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女子高生が「ワシ」と言った。夕方の地下鉄銀座線での出来事だった。マスクしている会話だから聞き間違い?いや確かに一人称は「ワシ」。そう、素知らぬ顔をして岡山はあなたのそばに、すぐ隣にいるのです。全9回の連載で、岡山の魅力をお届け。

初心者のための
「おかやま弁」基礎講座

特別講師: 青山 融(岡山弁協会会長)

「中国方言グループ」に属する中国5県(鳥取・島根・岡山・広島・山口)の言葉はよく似ています。そのうち、東から押し寄せる関西弁を船坂峠でがっちり食い止めているのがこの地方東端の岡山弁。関西の影響を強く受けていますが、それは単語やフレーズ、訛り方に関してで、実はアクセントは東京式です。映画の方言指導をする際には、東京の俳優さんに「コツは、関西風味の言葉を東京式アクセントで発音することなんです」といつも助言していました。

連母音の長音化と助詞の融合(1参照)は岡山弁の最たる特徴です。発音を省略化するのは、要は無駄なエネルギーを消費したくないわけです。昔から省エネ派というか、横着というか、ケチというか…合理性を重んじる県民性を表していると言えるでしょう。

もうひとつの特徴が、程度のはなはだしさを表す副詞が耳につくこと。でーれー、ぼっけー、もんげー、ばり、ぶちなど、「すごく、すごい」を表す言葉が数多く聞こえてきます。これは、岡山人の唯我独尊ぶりを物語る要素。岡山は気候温暖で天変地異も少ないため、隣近所と力を合わせて天災に立ち向かうという気風が育ちませんでした。みんなが一国一城の主みたいな気分なので、ご近所さんと会話をしても熱心に耳を傾けてくれないのです。話す方としては、なんとか注目させようと話を盛るわけで、たった1センチの積雪でも「今朝はでーれーぼっけー雪でのー」などとついつい強調してしまうのでしょう。

「じゃ」の語尾や濁音で発する「がぎぐげご」など、きつい・きたない・きもちわるいの3K言語だと言われることもありますが、私はそこが面白いと思うのです。「インドカレー (帰っておきなさい)」「ホットカレー(ほうっておきなさい)」など空耳フレーズも数々。かつての都からのほどよい距離のおかげで、津軽弁や薩摩弁ほど難解ではなく、けっこう通じてしまうところも魅力かもしれません。

LESSON 1. マスターのコツは“長音化”

連母音(ai, oi, ae, oe, ui)は長音化しよう
【正しい使用例】
なげー(長い)/けーる(帰る)/でーれー(どえらい)
助詞(は、を、へ)は直前の語の末尾の母音と融合して長音化しよう
【正しい使用例】
よさかーきゅーきる(与作は木を切る)/はなーどけーいったん(花はどこへ行ったの?)

LESSON 2. “じゃ・がー”を乗りこなせ!

断定の助動詞「〜だ」は「〜じゃ」に変換
【正しい使用例】
そーじゃ(そうだ)/そーじゃった(そうだった)/そーじゃろう(そうだろう)
「〜ではないか」や「〜じゃん」は「〜がー」に変換
【正しい使用例】
かっこえーがー (かっこいいじゃん)/きょーばんも肉じゃがじゃがー (今夜も肉じゃがではないか)

GINZA2020年11月号掲載

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