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コロナで二極化「仕事がヒマになった人」「忙しくなった人」を分けたもの

  • 2021.5.22
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コロナ禍で業績が二極化したのは、企業だけでない。営業力強化支援に詳しい高橋浩一さんは、個人も、忙しい人と暇な人で二極化したと指摘する。暇になった人たちは、将来への不安を抱える中で、どうしたら自分の強みを見つけて食いっぱぐれない力をつけることができるのだろうか――。

※本稿は、高橋浩一『なぜか声がかかる人の習慣』(日本経済新聞出版)の一部を再編集したものです。

ベンチで寝ている男
※写真はイメージです
コロナで分かれた3つのタイプ

コロナ禍の影響で、暇になって時間ができた人もいれば、反対にものすごく忙しくなったという人もいるのではないでしょうか。

次の3つのタイプに分けて考えてみます。あなたはどれに当てはまりますか。

①仕事が減り、暇になって時間ができた
②仕事に振り回され、忙しくなった
③面白い企画やプロジェクトで忙しくなった

①の人たちの間では、在宅勤務が始まった頃、一時、Zoom飲みなどが流行りました。これまでの「リアル飲み会」がなくなったことで、新しいコミュニケーションの形として注目もされました。

その一方で、世の中全体では、本格的な不況に向けた雇用調整の動きに対する不安もあります。仕事がなくなって時間ができたとはいえ、職場における居場所や、働き口がなくなってしまうのではという心配も、①の人たちは抱えているのではないかと思います。

次に②の人たちです。コロナ禍によって、会社や上司の方針、あるいはお客様の要望に振り回され、自分で主導権を持てずに業務が膨れ上がっている状態の人です。

私は、人材育成や企業研修の業界に身を置いていますが、コロナの影響を受けて「売上が前年比で数十パーセント減って、必死に営業をしている」という声を各所で聞くようになりました。

こういった状況下で、②の人たちは、自分で仕事をコントロールすることができないため、心身を壊すリスクを伴っています。特にリモートワークでは、誰がどのぐらい働いているかの状況が上司からも見えづらくなります。自分の身は、自分で守らねばなりません。

コロナ禍の変化を「享受」した人たち

私が注目したいのは、コロナ禍にあって「面白い企画やプロジェクトで忙しくなった」という③の人たちです。彼らや彼女たちはSNSで口々に「オフィスや現場への移動がなくなって、無駄な時間が減った。そのぶん、どんどん面白い企画にエネルギーを割くことができている」とコメントしています。

リモートワークの普及は、業務が効率化されるインパクトをもたらしました。

③の人たちは、オンライン会議やチャットでやりとりしながら、複数のプロジェクトを回して、かなり高い生産性を実現しています。

タイプを超えて交わらない

さて、3つのタイプの人たちについて考えてみました。

興味深いのは、「お互いが交わりにくい」ということです。仕事が減り、暇になって時間ができた①の人たちは、同様に時間が余っている人と交流します。

また、仕事に振り回され、忙しい②の人たちは、ハードな業務サイクルに呑み込まれて交流どころではありません。

面白い企画やプロジェクトで忙しい③の人たちは、同種の仲間と、さらにエキサイティングな取り組みに没頭しています。

リアルでの接触が減って、オンラインでのコミュニティ活動や、2021年のClubhouse登場など、SNS上の動きが話題になることが増えました。それによって、声が「かかる人」「かからない人」の様子が、奇しくも見える化されたのです。

世の中は自己責任の方向へ

コロナ禍でかなりダメージを受けた業界では、休廃業の増加や早期退職者の募集に関するニュースが報道されました。

このような中、国内大手企業を中心に、副業を解禁する動きが広がりました。企業は、人件費の負担を抱えきれなくなっています。

また、「タニタや電通が正社員契約を業務委託契約に切り替える」「みずほフィナンシャルグループが週休3日や4日で働ける制度をスタートする」といった事例も話題を集めました。こういった動きは、今後も進んでいくでしょう。

いわゆる「フルタイムの正社員」は徐々に減っていき、もしかしたら多数派ではなくなる日がくるのかもしれません。

コロナ禍の前からこうした流れの始まりは見られており、2019年にトヨタ自動車の豊田章男社長の「終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」という発言が話題に上っていました。終身雇用の崩壊は、リアリティを増してきています。

企業の観点から見ると、日本の法律では、会社が正社員を解雇することは非常に困難です。しかし、個人事業主との契約であれば、当然ながら、正社員とは扱いが異なります。また、副業や週休3日(4日)を認めることは、同時に給与の総額を抑えることにもつながります。

働く側としては、副業や個人事業主契約という形で「自由」を得る代わりに、自分や大切な家族の生活を「自己責任」で守らなければなりません。

これら一連のトレンドは、「給料をこれまでのようなペースで上げていくのは難しい。収入を増やしたければ、自分でなんとかしてほしい」という会社からのメッセージです。

給与が上がっていくどころか、「ただ真面目に出勤していれば居場所が守られる」ということさえ、もはや期待できません。

公共の場所でパニック発作
※写真はイメージです
「今すぐ副業・独立」だけが選択肢ではない

会社に勤務して中堅レベルを超えたビジネスパーソンから、よくこんな声を聞きます。

●目の前の仕事はそれなりにこなせている
●「個の時代」という言葉を聞くようになったが、すぐ会社を辞めて独立したいわけではない。組織にいるほうが肌に合うかもしれない
●自由を謳歌しているインフルエンサーの言葉は、どこかで、「自分とは違う感」がある
●現状のままで組織に居続けるのは不安。視野が狭まりそうな気がしている
●個人として世界を広げなければという漠然とした危機感はある
●得意分野がはっきりしていて、いろいろなところから声がかかる人がうらやましい
●今までやってきたことに誇りはあるが、いざ組織を離れたときに、自分がどこでどんなふうに勝負できるかが見えていない
●副業解禁などで、機会は広がったように思うが、具体的にどう動いたらいいかよくわからない

高橋浩一『なぜか声がかかる人の習慣』(日本経済新聞出版)
高橋浩一『なぜか声がかかる人の習慣』(日本経済新聞出版)

特に最近は、「副業」「複業」「フリーランス」といったキーワードも目にとまるようになりました。一方で、「今すぐに副業を始めよう」「個人事業主になる準備をしよう」という方はどのぐらいいるのでしょうか。

今の会社や仕事が好きだという方もいるでしょうし、本業に集中することがキャリアアップにつながる方も多いはずです。「目の前の仕事」への優先順位をいきなり下げることが、必ず人生をハッピーにするわけではありません。仕事は、成果をあげ、お客様や社内の人など周囲からどう評価されるかによって報酬や待遇が決まります。「あの人は仕事で手を抜き始めたな」と周囲からみなされてしまっては、元も子もありません。

新聞やウェブでは、「個の時代」がさかんに言われています。

だからといって、全員がインディペンデントな生き方を今すぐに始めるのは簡単ではありません。

私は、いきなり思いきった意思決定をするよりも、「試しにちょっとやってみよう」ぐらいの小さなアクションを見つけることが、時代の波を乗りこなすためのコツだと考えています。

自分を「テストマーケティング」する

人から声がかかる状態になっていないのに、いきなり副業や独立をするのはいばらの道です。まずは、本業で成果をあげることが前提です。「個の時代」というメッセージに煽られたまま、武器を持たずに組織を飛び出してしまうと、取り返しのつかないことになる場合もあります。

私があなたにお勧めしたいのは、「もし仮に、会社の肩書やブランドを外したとき、自分がどのぐらい世の中で通用するのか」を、組織にいるうちに試してみることです。

例えば、ビジネスの世界では、本格的に新商品を出す前に「テストマーケティング」を行うことがあります。テスト段階で、お客様の反応を見てみることで、このまま売れそうかどうかを判断するのです。

個人についても、こういった考え方は有効です。後戻りのできない意思決定を衝動的にしてしまうのではなく、まずは試しに自分がどのぐらい通用するか、チャレンジしてみましょう。

最近では、働き方も多様になり、フルタイム正社員以外の手段で、いろいろな仕事を体験することもできます。仕事の体験までいかずとも、自分の経験や知見をもとにSNSなどで情報発信してみてもよいでしょう。もし、あなたの経験や知見が人から必要とされるレベルであれば、一定の反応があるはずです。

「小さな試み」で自分の強みを知る

自分を「テストマーケティング」することは、以前に比べると、格段にやりやすくなっています。

一方、一つの会社で長く勤めてきた方にとっては、外の世界がわからなくなっているのではという不安もあるでしょう。

企業である程度の勤務経験があれば、会社の中での評価や立ち回りについては、自分なりの意見や価値観が形成されています。こういう人が、いきなり会社の看板なしに外に飛び出ると、「自分がどのぐらい人の役に立てるのかわからない」「自分は何が好きで何が得意かわからない」という悩みが出てきます。

そんなとき、書店やインターネットでいろいろと探してみると、あまりの情報量に戸惑います。どの情報が正しく、自分にとって参考になるのか、手探り状態でいつまでも探し続けるのは大変な苦労が伴います。

そこで試しに、あなたの経験をコンテンツにして売ってみたり、知人の会社を手伝ってみるなど、自分なりにできることをちょっとやってみると、いろいろな気づきがあります。

例えば、そこそこの給料をもらっている人が、自分の知見を有料noteの記事にして販売してみると、300円の記事でも売るのが難しいことを知り悶絶するかもしれません。

また、友人が新しく立ち上げた会社で、週末に数時間仕事をしてみると、スピード感の違いに愕然とすることもあるでしょう。

自分なりに動いてみると、他の人から何らかの形で「フィードバック」をもらえる可能性があります。もし、あなたの行動によって誰かの心がプラスの方向に動いたら、強みの使い方を知るチャンスです。

強みに行動のフォーカスを合わせると、それほどの苦労をせずとも、成果が出るようになります。

自分のお役立ちがどう人の心を動かすのか、感覚でわかることによって、あなたの立ち位置や活動の方向がクリアになるのです。

高橋 浩一(たかはし・こういち)
TORiX株式会社 代表取締役
東京大学経済学部卒業。外資系戦略コンサルティング会社を経て25歳で起業、企業研修のアルー株式会社へ創業参画(取締役副社長)。1日100件のテレアポ新規開拓や数十人の営業組織をゼロから作るなど、同社上場に向けた足がかりを作る。2011年にTORiX株式会社を設立し、代表に就任(現職)。上場企業を中心に50業種3万人以上の営業強化を支援。行動変容を促す構造的アプローチに基づき、年間200本の研修、800件のコンサルティングを実施。8年間、自らがプレゼンしたコンペの勝率は100%を誇る。主な著書に『無敗営業「3つの質問」と「4つの力」』『無敗営業 チーム戦略』(ともに日経BP)、『なぜか声がかかる人の習慣』(日本経済新聞出版)など。

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