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23歳、起業家のリアル。「自らの人生を切り拓く人を育てたい」TimeLeap代表取締役・仁禮彩香インタビュー

  • 2021.5.19
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中2で起業し、高1で母校を買収した慶應生、仁禮彩香さん。23歳にして、小中高生に向けた起業家教育を行う会社〈TimeLeap〉を経営している。この経歴にまちがいはないが、華々しい肩書きゆえに伝わりづらくなってしまう本質があるという。こんな時代だからこそ、自らの人生をわくわくしながら切り拓く力を育ててほしい。仁禮さんが目指すのは、そんな新しい価値観を提供する教育事業。若くしてさまざまな挑戦をする仁禮さんに、話を聞いた。

──中学生のときに起業をしたことで、好奇の目で見られたり、“あの子は違う”という空気が生まれたりはしませんでしたか?

学校ではあまりなかったです。起業したことを自分からは言ってなかったけど、新聞に載ってバレてしまったんです。でも、もともとみんなは私が変わっていると思ってたみたいで、ネガティブな反応はなく、“仁禮ならやりかねないか”という感じで受け止めてくれました。それより、知らない人たちからのバッシングをたくさん受けましたね。SNSで生意気だとか否定的なことを言われたり、容姿についても中傷されたりしたので、すごく傷つきました。

──SNSで辛い思いをしたときは、どうやって立ち向かったんですか?

はじめは過剰に気にしてしまって、うまく対処できませんでした。“そういうことを言う人たちが悪いんだ”と敵対心を持ってしまい、対立構造がより深まってしまうんですよね。でも、争いに本質的な価値はないんです。いちばん大事なのは、いま集中するべきことはなにかを考えること。それ以外の言葉は感情的に受け止めず、相手を“悪”だと思わない方が自分のためになると考えるようになりました。

──感情と理性を分けて考える。仁禮さんが幼稚園の頃から通っていた〈湘南インターナショナル〉での教えですよね。

そうですね。湘南インターナショナルスクールでは、感情的になったときは相手といったん離れて感情を整理する時間が設けられていました。“シンキングチェア”という椅子があり、座ったらほかのことは考えずに、自分の状態を認識する。準備できたら、話し合いをしようと持ちかける。相手がまだであれば離れてまた待つ、ということを繰り返します。怒りの対象はその友だちではなく、その子がした行動である。ちゃんと整理していくと、なにが嫌だったのかをだんだん事象として消化できるようになっていきます。

──もともと教育に関心の高いご両親だったのですか?

私が生まれる前に、母は幼稚園の先生をしていました。そこでは子どもたちよりも、親への対応に時間がかかっていたそうで。自分が子育てをするときに、もっと子どもを尊重する幼稚園に通わせたいと考え、湘南インターナショナルスクールを見つけたそうです。英語を習わせたいというよりも、創始者である岩沢ゲイティ先生のスタンスに期待して入れたと言っていました。

──そのあと公立の小学校に進学し、環境の違いに驚いたとか。

小学校では、みんなが同じことを同じタイミングで一斉にやらなくちゃいけなくてびっくりしました。そのほとんどが先生に指示されたことだったので、自分たちで話し合ったり、考えを共有する時間が全然ありませんでした。入学してすぐに違和感を覚え、岩沢ゲイティ先生に直談判して湘南インターナショナルに小学校を作ってもらい、転校することにしました。

──それから教育に興味を持ちはじめ、中学高校はあえてまた日本式の学校に通われたのですよね。どう折り合いをつけていましたか?

友だちと話すのは楽しかったです。とはいえ、授業中に社会問題に対しての考えを共有するような時間はなかったし、休み時間なら話せるかというと、それもできなくて。やりたいけどできないことへのバランスを取るため、中学2年のときに起業しました。学校ですべてを解決しないことにした、という感じでしたね。

──「TimeLeap」という社名には、そういった仁禮さん自身の経験や悩み、葛藤への思いが込められているのでしょうか?

そうですね。生きていくうえで、人は何度も苦しい出来事にあったり、失敗したりすることがあると思うんです。いまの社会では、何年経っても失敗を掘り返して叩くことがあるじゃないですか。それがすごく嫌だなと思っていて。なにが起きても人は生き続けていくので、希望が必要だと思うんです。そのときそのときで問題を解決して、長期的に見て成長していけばいい。過去の事実は変えられなくても、そのあとに努力したり、新しい目標を見つけたりしていくなかで、過去の意味を書き換えていけるというのは、どんな人に対しても希望になるのではないかと思って名付けました。

──TimeLeapは、マインドセットについて学ぶ「Leaper School」プログラムから始まりました。これが教育の基礎になると考えているのでしょうか?

基礎というよりは、いまの日本の教育機関で圧倒的に足りていない部分なので。まずはそこを補うためのプログラムを作りました。自分に対して仮説を立て、こういうことが得意かもと思ったら、それを軸でなにかやってみる。苦手な部分がわかったら、さらにそこを補う方法を考える。自己仮説を立て続けることで楽しく生きられるようになると思っています。インプットの勉強だけをしていてもできないことなので。

──新しい価値観を提供するときに、苦労することはなんですか?

伝え方ですね。コンテンツと発信する内容がブレてしまわないようバランスを取ることがすごく難しいと感じています。たとえば、「自分を知ることが大事」と言っても、参加したいと思ってもらうためには、わかりやすさや付加価値が必要になります。そこで、「起業家教育」という言葉を使ったのですが、私たちの目的は「起業家」を輩出することではありません。“起業家的な体験”を通して、自らの人生を切り拓く力を身につけることにあります。ですが、言葉はどうしても強調されがちで、内容よりも「起業家」という言葉にいろいろな期待を抱いた人が集まってきます。そうすると、本質が届きにくくなってしまうことがあって。

──わかりやすいし、まちがってはいないけど、言葉がひとり歩きして本来の意図が伝わりづらくなってしまうことってありますよね。

そうなんですよね。もっとできることがあるんじゃないかと、ずっと試行錯誤しています。次のプログラムの内容の模索ももちろんですが、それでいておもしろそうと思ってもらえるようなコミュニケーションの落とし所を、まさに探しているところです。

──仁禮さん自身が課題にしていることはありますか?

もっと人として成長することです。実は高校生のときに、いったん仕事を辞めようと思ったことがありました。でも、辞められない事情ができてしまい、もうひとつ会社を作ることになったんですね。教育分野に貢献し続けるという軸はもちろんありましたが、大変な状況だったのでモチベーションとして憧れの人達に会えるようになりたい!などの外発的な動機を作りました。原動力としてはよかったのですが、そこで本質を見失いガタがきてしまいました…。自分を取り繕ってしまったり、結局自分が本当に楽しいことはなにか、向き合うべきことはなにかを見失ってしまったりすることがあると気が付いたんです。そうすると、いくらいい仕事をしていても、人として魅力的ではなくなってしまう。事業をどうするかももちろん大事だけど、いまは自分の内面を磨く時期だと感じています。

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