1. トップ
  2. グルメ
  3. ビストロが恋しい大人の皆さんへ。食堂カフェ「pedibus jambus」

ビストロが恋しい大人の皆さんへ。食堂カフェ「pedibus jambus」

  • 2021.5.14
  • 1130 views

ビストロの雰囲気が好きな人は多い。ほどよくゆるくも大衆的すぎない、あのセンスのいい空間での美食時間は最高だ。だが、それがワインなしでも味わえるとしたら、もっと誰でも気軽に楽しめるのではないだろうか。居心地の良さと同時に、どこか非日常な雰囲気にも浸りながら、美味しい食事がしたい…。中目黒の「pedibus jambus」なら、そんな想いに応えてくれる。今のようなアルコールが飲めないときでも、お腹も心も満たしてくれる、大人のための食堂フレンチカフェだ。

祐天寺駅から学芸大学方面へ続く、駅前ののどかな一本道。その傍らに店を構える「pedibus jambus(ペディビュス ジャンビュス)」は、朝から夕方まで、フランスの家庭料理が気ままに楽しめる食堂カフェだ。

色とりどりの椅子が並んだ軒先は一見、アンティークショップのようにも思えるが、入口の扉を開けると真正面から飛び込んでくるのは温かみのある大きなカウンターキッチン。そこからフロアを見渡すように、デザインも色もさまざまなダイニングテーブルが並び、まわりにはグラスや皿がギッシリと収まった食器棚も。モダンなカフェやバーが立ち並ぶ中目黒において、このキャッチーさはやや異色にも思える。

カフェ以上、レストラン未満。とりあえず、お腹が空いたら行ける場所

店を切り盛りするのは、18歳からフランス料理の道に進んだという店主の佐伯奈緒美さん。20代の頃にはヨーロッパへ食べ歩きの旅に出かけ、イギリスを拠点にフランス、ベルギー、スペインなど、さまざまな国の料理に触れてきたという。「食事には、その国の郷土や文化が表れていることを身をもって知りました。それがとても楽しかった」(佐伯さん)

当初はフランス料理以外も学んでみたくて旅に出たというが、旅を経て得たのは、やはり自分はフランス料理が好きだという確信と、かしこまった店ではなく、日本で馴染みがあった“食堂”のような店をやりたいという気持ちだったという。

彼女にとって食堂とはどんな存在なのかと聞いてみると、間髪入れずに「お腹が減ったときに気負いなく駆け込める場所!」という答えが返ってきた。レストランほど堅苦しくなく、カフェほどカジュアルすぎない。好きな時間に、誰でも、気兼ねなく、きちんと美味しい食事ができる店。

「『中途半端な時間だけど食事できるかな』『適当な服装で出てきちゃったけど大丈夫かな』『わたしみたいなおばあちゃんでも入ってもかまわないかしら』『予約なしで小さい子連れなのだけど……』。そんな何気ない心配事すら一切なしに、『とりあえずお腹がすいたら、pedibus jambusに行こう!』と、家の食卓のように立ち寄ってもらえたら嬉しいです」

それぞれの料理が、その人にとっての看板メニュー

メニューはフレンチをベースにしながらも、昔ながらの定食屋のようにセットやプレートなど一品完結型。スープとパン、サンドイッチ、キッシュと野菜の盛り合わせ、煮込み料理など、あえて異なるジャンルのものをそろえるのも、その日の気分で唐揚げや焼き魚などを選ぶのと同じく、どんな人が来てもそれぞれが好きなものを楽しめるようにという心配りからだ。

本日とスープとグリルチーズパン。スープは季節の野菜が主役。この日はパプリカの冷たいスープ。Harumari Inc.

「もちろん、毎回決まったものをオーダーされるお客様もたくさんいらっしゃいますよ。それぞれのメニューにコアなファンがいてくださって、『塩豚の煮込み』が好きな方はいつもそればかりですし、毎回スープという方も」。まさに、街の定食屋と同じような光景が繰り広げられている。

佐伯さん自慢の「自家製レモネード」には季節の果物がたっぷり! “食べるレモネード”。Harumari Inc.

ランチ・カフェタイムの制限がなく、予約も取らないのはあくまで食堂だから。さらにオープン時間は平日は10:00と早め。それは、佐伯さん自身がまだ子育てで忙しかった頃、保育園へこどもを見送った帰りに、一般的なランチタイムが始まるまでの1、2時間の間で寄れる店があればいいのにと感じていた経験があってのことだという。
特にこのところは、世間の行動時間が朝型にシフトしていることもあり、午前中にしっかりエネルギーチャージしたいという人も多いはずだ。

pedibus jambusでは、腹ごしらえが済んだらサクッと帰るも、ちょっとお茶を飲んでのんびりしていくも自由だ。朝ごはんにスープとパンで温まっていく人がいると思えば、ワインを引っ掛けていく客からデザートまでしっかり堪能する客、夕方にふらりと顔を出して、ひとりコーヒーを飲んでいく年配の常連も。まさに大人が気ままに楽しめる、フレンチ食堂カフェなのだ。

「ゆるさ」が、居心地の良さと非日常を同居させるカギ

「メニューにはあまり細かい説明書きをしていないので、パッと見ただけではどんな料理なのか少しわかりづらいかもしれないけれど、出てきたときの驚きや発見も楽しんでほしい」と、佐伯さん。また、飾るだけでなく実際に使ってもらいたいからと、気に入ったものを少しずつ集めているというアンティークの器で提供している。なかなか海外旅行にも行けないご時世。かつて旅行で立ち寄ったヨーロッパの食堂を思い出したり、逆に、もしプロヴァンスへ旅に行ったらこんな感じなのかなと想像を膨らませたりしながら食事を楽しめば、より心弾むものになるだろう。

一流を目指す料理人仲間には、このラフな設備やスタイルでよく料理ができるねと言われることもあるというが、もてなす側がある程度ゆるい気持ちを持たなければ、お客さんだって気楽に過ごせないからと、佐伯さんはフランクな姿勢を貫く。

「うちでは、お水は自分でいれてもらいますし、足りないときには椅子もお客さんに動かしてもらう(笑)。楽しみながらやってます」

居心地よい場所でありながらも、ここで食事を楽しむことで小さな非日常が味わえる大人のフレンチ食堂カフェ。お腹が減ったら、迷わずpedibus jambusに駆け込もう。気ままな大人たちを満足させてくれる、美味しい料理とデザートが待っている。

取材・文 : RIN

元記事で読む
の記事をもっとみる