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【臨床心理士が解説】パートナー間での暴力とその対処法とは?

  • 2021.5.14
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コロナ禍によってパートナーと関わる時間が増えたことにより、DV被害の増加が問題になっています。これを機に、DVについて考えてみませんか?

【目次】

DV(ドメスティック・バイオレンス)とは?

殴るだけがDVじゃない

DVが与える影響

影響は子供たちにも?

DV加害者の予備軍になっていない?

DVにまつわる誤解とは

DV被害や加害、どこに相談する?

誰かにヘルプを出していい!

DV(ドメスティック・バイオレンス)とは?

Women's Health

皆さんはDV(ドメスティック・バイオレンス)という言葉を知っていますか? DVとは「配偶者や事実婚など親密な関係にある、またはそういった関係があった者からふるわれる暴力」のことです。婚前のカップル間に起こる暴力は【デートDV】と呼ばれ、最近では大学生や高校生などの若年層からそういった訴えを聞く機会が増えています。平成30年の内閣府の調査によると、結婚したことのある女性の約7人に1人がパートナーからくり返し暴力を振るわれる、暴言を吐かれるなどのDV被害の経験をしているそうです。決して人ごとではなく、私たちの身近に起こりうることだと言えるでしょう。またコロナ禍によって外出を制限され、自宅にいる機会が増えていることに伴い、DV相談の件数も増えていると言われています。

殴るだけがDVじゃない

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暴力と聞くと、『殴る・蹴る』といった身体的なものを想像する人が多いと思いますが、実はそれだけではありません。『こんなことも!?』と思われるようなものも実はDVに該当します。ここでは、DVの種類として【身体的暴力】【心理的・精神的暴力】【経済的暴力】【性的暴力】をご紹介します。これらの暴力の多くは家庭やカップル間という閉鎖された空間の中で行われるために、外から見えづらい、他人に知られづらくなっており、長期的に繰り返して行われることによって、被害者は心身ともに深刻なダメージを受けてしまうのです。

【身体的暴力】

平手打ちする/脚で蹴る/髪の毛を引っ張る/もので殴るまたは殴ろうとする/ものを投げるあるいは投げようとする/腕をつねる、無理矢理引っ張る など

【心理的・精神的暴力】

大声で怒鳴る/何度話しかけても無視する/人前でバカにする/人格を否定するような発言・行動をする/「誰のおかげで生活できているんだ」というような発言をする/ペットに危害を加えようとする/「別れたら死ぬ」と脅す/実家や友人との付き合いを制限・監視・禁止する/ケータイの中身や郵便物などを勝手にチェックする/どこで何をしているのかを絶えずチェックする/どんな状況でも連絡や返信を強要する など

【経済的暴力】

生活費を渡さない/働くことを邪魔したり仕事をやめさせようとしたりする/借金をさせてお金を取り上げる/パートナーの収入や貯金を勝手に使う など

【性的暴力】

避妊に協力しない/見たくないのにポルノビデオや雑誌を見せようとする/嫌がっているのに性行為などを強要する/中絶の強要をする など

DVが与える影響

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DVを受け続けることによって、様々な心身の健康障害を引き起こすことが明らかになっています。身体的なものだと、直接的な暴力によるケガだけでなく、頭痛や背部痛などの慢性的な痛み、食欲不振やそれに伴う体重減少、高血圧や免疫の低下などが挙げられます。身体面だけではなく、心へのダメージもとても大きいです。DV被害者に見られる精神疾患として、PTSD(心的外傷後ストレス障害)やうつ症状が最も多いと言われています。その他にも自分に自信をなくしてしまっている、過度に自責的になる、人が信用できない、アルコールや薬物の乱用をするといったケースもあります。

影響は子供たちにも?

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DVは加害者と被害者だけの問題ではありません。子どもがいる家庭では、両親のDVを見せられる(面前DV)ことは子供にとって恐怖体験になり、心理的虐待に当てはまります。また、DVを受けた被害者が子どもを虐待する、DVによって子育てまでエネルギーが回らなくなりネグレクトになるといったケースもあります。そうした体験をしてきた子どもたちが、パートナーと関係を築く中でDVの加害者あるいは被害者になったり、わが子に同じように虐待をしてしまうという負の連鎖を生み出してしまう可能性もあります。DVは当事者間だけでなく、次の世代にも大きな爪痕を残してしまうのです。

DV加害者の予備軍になっていない?

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上記に挙げた行動や言動を行ったことがある、あるいは現在も行っている場合は、DVに該当する可能性があります。特に、身体的暴力以外の暴力は、自覚なくやっていることが多いので注意して。DV加害者になっている人の特徴として、『パートナーが言うことを聞かないから』『自分だって怒鳴りたくて怒鳴っているわけじゃない』といった、むしろ被害者意識をもっていることもあります。もしそういったことで苦しんでいるのであれば、そのままにせずに、早めに相談することが必要です。現在日本でも【DV加害者更生プログラム】を行う団体が増えており、構成プログラムやカウンセリングを通して、暴力を振るってしまう背景を振り返ったり、暴力的ではない健康的なコミュニケーションを学んでいきます。もしDV加害の意識 があり、そんな自分を変えなければと思っていたら、そういった団体に相談してみてはどうでしょうか。

DVにまつわる誤解とは

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Q1. 被害者にも原因があるのでは?

A. どんな理由があれ、暴力を奮って良いという理由にはなりません。夫婦・カップルなど親しい関係であっても、暴力は立派な犯罪です。日常生活において、相手との間に何か問題が起こった時に、暴力や暴言をふるうことで解決しませんよね? カップル間においてもそれは同じことです。

Q2. 暴力が嫌なら逃げればいいのでは?

A. 被害者は継続的に暴力を受け続けることにより、学習性無力感という心理状況が働きます。これは、ストレスから逃れるのが難しい状況に長いこと居続けるとその状況から逃げる努力すら行わなくなるという現象のこと。DVの加害者の特徴としては、よくわからない理由で暴力を振るったり、態度に一貫性がなかったりするところがあります。被害者は、なぜ暴力をふるわれるのかが分からないという環境を何度も味わうことによって、『自分が悪いからいけない』『何をやっても無駄』という意識が心の中に作られてしまい、本来ならば危険な状況にあるのにも関わらず、逃げ出すこともしなくなるのです。また、逃げるとなると経済的な理由や、お子さんがいること、失うものが多いなどのリスクも伴うので、そういったことが足かせになっているというケースも多いです。

Q3.どんな人が加害者になる?

A. 加害者になる人のタイプとして、特にこれといったものはありません。年齢・学歴・職種・収入なども関係ないと言われています。中にはアルコール依存や薬物依存、精神障害などが関連して暴力的になる人もいますし、意外と多いのが『人当たりがいい』『社会的信用が高い』など他者には好印象なのに、実は陰で暴力的な言動や行動を繰り返しているというパターン。加害者の価値観には『男性はこう、女性はこうあるべき』と言った古いジェンダーバイアスがあったり、自分の両親もDVの関係にあり、それが自分のパートナーとの関係を築く上でモデルになっているという世代間連鎖の問題もあります。

DV被害や加害、どこに相談する?

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いざDVについて相談したいと思っても、どこに相談すれば良いのか迷ってしまうかもしれません。そんな時に使って欲しい相談先をご紹介します。

1. DV相談ナビ #8008(はれれば)

https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/dv_navi/index.html

全国共通の電話番号 #8008にかけると、最寄りの相談期間の窓口に電話が自動転送されます。気になる方は匿名の相談も大丈夫です。

2. DV相談+(プラス)

https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/dv_navi/index.html

コロナ禍をきっかけに2020年から始まったサービスで、電話に加えて、SNSのチャット、メールでの相談もできます。電話とメールなら24時間相談可能、10か国語程度の外国語による相談への対応、場合によってはWeb面談も行うなど、困ったときにすぐ相談できるのが安心ですね。

3. 配偶者暴力相談センター

https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/soudankikan/01.html

各都道府県に設置されている、DVにまつわる相談ができる施設です。個人情報などの秘密は守られますし、法律関連の相談や、自立するための支援など多岐にわたって相談ができる施設となっています。

誰かにヘルプを出していい!

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もし「私、DVの被害を受けているかも」と感じていたら、まずは身近にある相談窓口に相談することを強くすすめます。DV被害を受けた人にありがちなのが、「相談するほどのことではない」「自分にも悪いところがあったのかも」「自分が努力すれば何とかなる」といった考えから、相談せずに一人で抱えてしまうこと。しかし、どんな理由があっても暴力を振るうのは犯罪であり、「パートナーと一緒にいるのがなんかつらいかも……」と感じているのであれば、それは関係を見直さなければいけないサインです。勇気を出して相談して見てくださいね。

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