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『タイタニック』のプロデューサーが明かす、前代未聞の制作舞台裏。

  • 2021.5.14

豪華客船沈没の悲劇を描いた『タイタニック』(1997)は、興味深いエピソードに事欠かない。例えば、レオナルド・ディカプリオはあの「世界は俺のものだ!」と叫ぶシーンを演じるハメになった。これは監督の思いつきだったわけだが、ジェームズ・キャメロンは実際にタイタニック号のセットで、身も凍る冷たい水を使って沈没するシーンを再現もしている。そのため、湯船を用意してキャスト陣がカメラに映っていない時にすぐ体を温められるようにした。そんな過酷な現場だったので、FOXの元CEO(最高責任者)ピーター・チャーニンが『ハリウッド・レポーター』のインタビューで、同作の撮影を「地獄だった」と振り返ったことに驚きはない。

Photo_ 20thCentFox/Everett Collection/amanaimages
TITANIC - Kate Winslet, Leonardo DiCaprio, 1997.Photo: 20thCentFox/Everett Collection/amanaimages

数々の作品を手がけてきたプロデューサー達への質問はこうだ。「野心的なプロデューサーが見るべき映画は何か?」

『スキャンダル』(2019)のシャーリーズ・セロンは、駄作を見ることだと答えた。これに『ハリエット』(2019)のアイルランド人プロデューサー、エマ・ティリンジャー・コスコフとデブラ・マーティン・チェイスはともに同意した。『ワイルド・スピード』シリーズで知られるジャスティン・リンが、ドキュメンタリー『二郎は鮨の夢を見る』(2011)を推薦した一方で、チャーニンは「私ならタイタニックです」と答えたのだ。

「途方もないほどあり得ないことばかりの作品だからです。同時に映画史上のどの作品にも劣らない、大きなインパクトもありました。だからこの映画は、どれだけのことが達成可能なのかを見せてくれます。ですが、地獄だった。想像もできないレベルの地獄でした」

そして「私がゴーサインを出した時、映画史上の最高額に達していました」とチャーニンは付け加えた。「当初の予算をさらに超えてしまっていた。1億500万ドルの超過だった。でも、魂も抜けるほどの経験だったから、いい教訓にもなりました」「この映画の全てが異常でした。宣伝が異常で、台本も異常。毎日が異常の連続だった」

Photo_ 20thCentFox/Everett Collection/amanaimages
TITANIC - Kate Winslet, Leonardo Di Caprio, director James Cameron, 1997Photo: 20thCentFox/Everett Collection/amanaimages

では、撮影の続行や制作費の増額は簡単な決断だったのだろうか。シャーリーズ・セロンが「ちょっとパニックになりましたか?」と疑問を口にすると、チャーニンはこう語った。「パニックにはなりませんでした。自分がクビになるかもしれないと思ったが、その心の準備はできていました。選択肢は3つです。全てやめてしまうこと──すでに1億4000万ドル投入していたから、それはダメなアイディア。監督を変更する──これもダメだと思いました。あとは、いい作品になるようにやってみる。唯一の望みは、いい作品にすることだってはっきりしました」

チャーニンの賭けは明らかに結果を出した。だからこそキャメロン監督は、「ローズとジャックが扉に乗れたはずか否か」のくだらない議論に永遠に巻き込まれることだろう。しかし、この映画が見せてくれるのは、作品をいいものにすることはいつも簡単でないということだ。

Text: Laura Bradley

From Vanity Fair.com

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