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美味しい、は相手を選ばない。今こそ「Universal Bakes and Cafe」へ

  • 2021.5.13

さまざまな文化や価値観が次々とアップデートされる現代。その流れは食の分野でも起きている。これまで健康食として捉えられがちだったヴィーガンは、文化や民族を超えてみんなで同じ「美味しい幸せ」を共有できるユニバーサルな食へ。それを毎日でも通えるベーカリーカフェというかたちで楽しませてくれるのが、「Universal Bakes and Cafe」だ。

誰も我慢させない。ヴィーガンはみんなで「美味しい幸せ」が共有できる

下北沢を中心に都市開発が進む代沢エリア一帯。世田谷代田駅周辺は「下北線路街」や「BONUS TRACK」を中心に賑わっている。そんな最新施設にほど近い路地裏の住宅密集地にありながら、朝から夕方まで客が絶えないベーカリーカフェが「Universal Bakes and Cafe(ユニバーサル ベイクス アンド カフェ)」だ。

ここは100%植物性由来の食材で作る「ヴィーガン」の店。店内に足を踏み入れると、スタッフの気持ちのいい挨拶の声と共に、カウンターにずらりと並んだパンが目に飛び込んでくる。奥の工房で続々とパンが焼きあがってはまた並べられ、店いっぱいに広がる小麦が焼ける香ばしい香りに、幸せな気分で包まれる。

シンプルな食事パンはもちろん、季節野菜をたっぷりとのせた惣菜パンや、有機栽培小豆の粒あんや自家製クリームを使った菓子パン、さらにはバゲット、カンパーニュなどのハード系のパンまで、店頭に並ぶのはヴィーガンとはとうてい思えないほど目にも美味しそうなパン。ヴィーガンと聞くと、つい素朴で味気なさそうなものを想像してしまいがちだが、そんなイメージを見事に裏切られる。美しい層になったクロワッサンやクッキー生地がのったメロンパンまでが、100%植物性の食材で作られているというから驚きだ。

ユニバーサルベイクスを手がけるのは、池尻大橋のヴィーガンカフェ「Alaska zwei(アラスカ ツヴァイ)」。オーナーの大皿彩子さんによれば、自身も含めて実はスタッフにもヴィーガンの人はいないのだという。
「お肉も美味しくいただきますし、バターや卵が大好きなスタッフもいます。わたしたちの目的は、ヴィーガンの人のためのベーカリーを作ることではなくて、肉が好きな人も、いろいろな文化や宗教、アレルギーを持っている人も、みんなが一緒に同じ『美味しい、心地いい』が共有できて幸せになれる食の場を作ることです」

大豆ミートや植物性ミルクなど、植物性由来の食材が日本でも少しずつ身近になってきたが、まだまだ「ヴィーガン=健康食」というイメージが根強い。健康や環境への意識が高い一部の人だけが取り入れるものだと思っている人も多いだろう。大皿さん自身も、数年前までは「自分には関係ない」と思っていたというが、ベルリンのヴィーガンレストランで若い男性たちがお酒を交わしながら食事を楽しむ光景を目にし、心を奪われたのだそう。

「彼らは誰もヴィーガンではありませんでした。ただ仲間の中に特定の肉を食べられない人がいるから、みんなが同じように美味しくてハッピーに食事が楽しめるヴィーガンレストランに来たというんです」

ヴィーガンなら、たとえ宗教や民族が違ったり、乳や卵にアレルギーを持っていたりしていても、誰ひとりとして何かを我慢したり悲しい思いをしたりすることなく、同じ「美味しい」が楽しめる。そんな一面に惹かれ、より身近で日常的に叶えられる場を作りたいと行き着いたのが、ベーカリーカフェというスタイルだ。レストランだと数ヶ月に1回、スイーツ店でも週に1回かもしれないが、ベーカリーカフェであれば毎日でも通える。ここは、すべての人と日常の「美味しい幸せ」が共有できる「Universal=みんなのための」ベーカリー。まさに多様化社会を体現する、スーパーフラットな存在だ。

目指すのは、シンプルに「美味しいパン」と「心地いいカフェ」

だからこそユニバーサルベイクスでは「身体に優しいヴィーガンのパン」ではなく、素直に「美味しいパン」を目指す。極端に塩分を控えたり、薄味にしたりはしない。「本格的な美味しいパンが食べたい!」という気持ちを心から満たすものでなければ、本当の意味での「美味しい幸せの共有」にはつながらないからだ。甘いものはちゃんと甘くて、生地も具材もしっかりと食べごたえと満足感があるパン。それが何より大切だという。

「スタッフがヴィーガンじゃないからこそ、誰が食べてもまた食べたいと思えるものを作れているのだと思います。みんなシンプルに美味しいものが好きですし、自分たちが心から美味しいと思うパンを自信を持って提供しています」

ベーカリーとして当たり前のことをしているだけだと大皿さんはいう。小麦粉、水、酵母。パンのベースとなるこれらの材料に、さまざまな食材を組み合わせて美味しいパンに仕上げる。それがただ100%植物性食材なだけであって、バターや牛乳の代わりになる食材を無理に探して似た味を作ろうとしているわけではない。いい素材を探して選んで、パンを作る。それに尽きるのだ。

「100%植物性由来は美味しい」が、ユニバーサルな未来への第一歩

パンのほか、野菜たっぷりのヴィーガンスープや豆乳を使ったドリンクなども揃える。Harumari Inc.

実際に食べてみると、その味は驚くほどリッチで力強い。大豆バターや自家製のクリーム、ソースなどが、パリッ・ふわっとした食感も芳醇な香りも、贅沢な甘み、パンチある食べごたえまでも存分に楽しませてくれる。ヴィーガンでなくても「美味しいからまた食べたい」、心からそう思えるほど美味しい。

事実、店を訪れる客の過ごし方を見ても、街のベーカリーカフェとして愛されていることがよくわかる。財布だけを手にしてのんびりと朝ごはんを食べに来る近所の住民から、家族全員分のパンを買って急いで帰っていくお父さん、パンマニアやカフェ好きまで、まさにユニバーサルに利用されているのだ。

人気の「あおさの塩パン」は午前中で売り切れることもしばしば。早い時間がおすすめ。Harumari Inc.

「100%植物性由来の食材で作ると、野菜やフルーツの美味しさ、小麦粉の香りなど、より素材本来の味が感じられます。そんな素材の持ち味を再認識してもらい、お肉やバターを当たり前のように食べられることのありがたさも感じてもらえれば嬉しいですね」

小さな1軒のカフェから少しずつでも「ヴィーガンは美味しくない」という概念を覆すことができれば、また別の場所で手に取って誰かに伝えるきっかけになる。そんな小さなスイッチの積み重ねが、多民族・多文化の人がみんなで同じ美味しい食事を囲み、自然の恵みの豊かさを味わう「Universal」な未来につながるだろう。

パン好き、カフェ好き、さまざまな食の好みを持つ友人はもちろん、ヴィーガンに興味のない人、またはヴィーガンの人……。どんな人とも「美味しい幸せ」を共有できるまさに「今」なお店は外せない。

取材・文:RIN

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