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ヨーグルトだけで腸活? それ、間違っています!

  • 2021.5.13
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腸活といえば、「ヨーグルト」というイメージが根強いですよね。手軽に買えるヨーグルトは朝食やランチのちょい足しにも人気ですが、私が腸内環境評論家として出演している某テレビ番組のディレクターさんは、「ヨーグルトは嫌いだけど、妻から『身体にいいから食べなさい』と言われて、我慢しながら食べている」とのこと。私が「我慢してまで食べなくていいですよ」とお伝えすると、とてもホッとしておられました。

腸活には、善玉菌よりもダイバーシティ・フード

発酵食品であるヨーグルトの場合は、確かに、選ばれし優秀な乳酸菌やビフィズス菌が素晴らしいパフォーマンスを発揮してくれるかもしれません。が!外から取り入れる発酵食品に含まれる有用菌は、腸内環境の主役である常在細菌を育てるゲスト的な役割です。彼らは、腸内を通過している間に、腸内の常在細菌を助けるなどして機能性を発揮しますが、結局は排泄されてしまうのですね。

腸内環境の主役は、定住している多様な常在細菌。この個性あふれる常在細菌が活躍できる場を作ることこそが、腸活の極意。人間の社会と同じで、ダイバーシティが求められているのです。

多様な常在細菌は、それぞれ好きな食べ物も異なります。つまり、腸内のダイバーシティを保つには、ひとつのものに頼らずにいろいろな食品を食べることが必要。特に食物繊維は、彼らの格好のエサになります。野菜、海藻、豆、ナッツ、キノコ、雑穀類、芋類など、多種の食物繊維を含む食べ物をもりもり食べること。

腸活の第一歩はヨーグルトを食べることではなく、ダイバーシティです。

アメリカでは「デイリーフリー(乳製品なし)」は普通

カリフォルニア州バークレーの地域密着型スーパー「Andronico's」にて。

日本に牛乳を飲む習慣を与えたのは戦後のアメリカ兵ですが、もはや本国アメリカでは、環境や健康を意識する人たちは「デイリーフリー(乳製品なし)」にシフトしています。

安さを売りにした大型スーパーでも、たくさんの種類の代替ミルクが並んでいますし、オーガニック、ナチュラル志向のローカルスーパーでは、棚のほとんどの面積は、代替ミルクで占拠されています。乳製品は、申し訳程度にオーガニックのグラスフェッド(牧草牛)由来のミルクやヨーグルトがある程度です。

「一体何が起きてるの?」という質問の答えは、残念ながら「乳製品が人にも環境にも不健康」だから。つまり、人間を含む地球全体の健康を実現したいプラネタリー・ヘルス的視点では、なかなかおすすめしづらい食品の代表なのです。

牛と環境破壊の関係

牛のゲップやオナラから温暖化の原因になるメタンガスが排出されることは有名ですが、環境に与える影響はそれだけではありません。牛を育てる土地の確保や、大食漢である牛の飼料を育てる農地の確保のために森林が伐採されるなどして、ジャングルの砂漠化、温暖化ガスの排泄、生態系の破壊による生物多様性の減少、それによりもたらされる気候変動など、地球環境の危機に繋がっています。

オックスフォード大学の研究報告によると、プラントベースミルクに比べて、牛乳がもたらす温暖化ガスの影響は、約3倍。必要な土地の面積は、約10倍、消費する水資源も最大です。※ Science,:vol.360,Issue6392,June,2018

プラントベースミルクは、いずれも牛乳に比べると環境負荷は小さいので、ベターな選択です。

牛乳のカゼインは腸に炎症を起こす?

さらに乳製品自体が、腸の炎症を起こす原因にもなりかねません。

日本で一般的に飲まれているホルスタイン牛乳が含むA1カゼインというタンパク質は、消化がしにくく、未消化のまま腸に届くと腸に炎症を起こす可能性があります。さらに、それがアミノ酸にまで分解されれば問題はないのですが、その手前のペプチドの状態で消化が止まってしまった場合、カソモルフィンという物質を生み出し、それがモルヒネと同じ構造を持つため、依存や過敏性、興奮などを引き起こすという研究もあります。※ Biological treatment for autism and PDD,2006,Dr.William Show, Great Plains Lab.

それに本来のエサである牧草ではなく穀物飼料で育てられた牛は、炎症を起こす脂肪分を多く含んでいます。

ただし、ブラウンスイス種やジャージー種の乳牛であれば、含まれるカゼインの種類がホルスタイン種のA1カゼインとは違い、消化しやすいA2カゼインとなるので、安全性が高まります。さらに牧草を食べて育っていれば、脂肪分の質もベターですね。

とはいえ、日本ではこれらの乳牛は全体の1割未満。みんなが消費するほどの量は生産できませんし、環境への負荷も増えてしまいます。そんなわけで、世界的に代替ミルクへの注目度が高まっているのです!

次回は、プラントベースの乳製品の選び方についてお届けします。

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