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ローラは、なぜ天真爛漫キャラなのに「暗い」のか? 『徹子の部屋』で明かした“家族の話”に違和感

  • 2021.4.30
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ここ最近、特に天真爛漫に見えないローラ(C)サイゾーウーマン

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。

<今回の有名人>
「心のファミリー」ローラ
『徹子の部屋』(4月27日、テレビ朝日系)

芸能人の外見や行動は、その人の印象に影響を与える。例えば、女性芸能人が髪がピンク色であるより、黒髪のほうが清純な印象を与えるし、スターが自分より立場が下の製作スタッフにも丁寧に接していると聞けば、「礼儀正しい」「いい人だ」と解釈されるだろう。

しかし、時々、なんだか外見や行動と印象が一致しないなと思わされるタレントもいるのである。ローラもその一人だ。華やかな見た目で、明るく振る舞っているけれど、なんとなく暗い印象を受ける。

ローラのブレークは2012年。外国人の血を引いたモデルとしてだけでなく、バラエティー番組で披露するおぼつかない日本語や、目上の人にも臆せずタメ口を使うところが、ユーモラスだと人気を集めた。屈託のない明るさ、天真爛漫さで知名度を上げていくが、同年放送の『さんまのホントの恋のかま騒ぎ』(TBS系)に出演した際は、ミッツ・マングローブに「ドアから出てくる瞬間、真顔だったね」と、いつもニコニコしているわけではないことを指摘されていた。

そんなローラだが、14年に実父が国民健康保険の海外療育費の不正受給をしたとして、詐欺容疑で逮捕されている。親と子どもは別人格だが、イメージ商売の芸能人の親が警察のお世話になるのは、マイナスでしかない。子どもの存在が犯罪のブレーキにならないあたり、よっぽどお金に困っていたのか、衝動抑止性が低いのか。詳細は不明だが、子どもの足を引っ張ることに躊躇がないという意味で、「ヤバい家族」の匂いがするのは否定できないだろう。

15年1月31日配信の「産経ニュース」によると、保釈保証金300万と損害賠償金200万の合計500万はローラが立て替えたという。

16年にロサンゼルスに移住したこともあって、それほどテレビで見かけなくなったローラだが、4月27日放送『徹子の部屋』(テレビ朝日系)で久しぶりに顔を見せた。ここで、これまでのローラのイメージを覆すエピソードが披露される。

親の離婚、継母とはコミュニケーション取れず……ローラの壮絶人生

明るいキャラで売っていたローラだが、実生活では相当苦労していたようだ。ローラが生まれてすぐ、両親が離婚。ローラは父親の母国であるバングラデシュに渡り、ジャングルのような田舎で、親戚の手により育てられた。経済的にも苦労したそうだ。

6歳の時に来日するが、父親は中国人女性と再婚。海外移住と親の再婚は、子どもにとって負担だろうが、継母は日本語が話せず、ローラはベンガル語しか話せなかったため、家庭内でも学校でもコミュニケーションがほとんど取れなかったという。その上、継母は双子を出産したそうだから、孤独だったのではないだろうか。

実の母に対しては「(離婚してから)私に会ってくれなかった」というさみしい気持ちがあったそうだが、26歳の時に再会。自身とそっくりな母に、血のつながりを感じたことで、わだかまりは氷解。今では大親友のような関係だという。過酷な環境で育ったことは、イコール不幸ではないが、苦労したことは間違いないだろう。なんとなく陰りがあったとしても、おかしくはない。

ロスでのローラの過ごし方は、アートを創作し、ヨガなどの運動を欠かさず、保護犬を飼い、魚の煮つけや酵素玄米など体にいい料理を手作りして「心のファミリー」に振る舞っていると話していた。

ああ、やっぱり暗い。

「心のファミリー」とは、血縁関係こそないが、それくらい大事な人たちという意味だろう。家族を神聖視する人を、大きく2つのパターンに分けるとすれば、一つは非常に円満な家庭で育った場合が思い浮かぶ。もう一つは、反対に円満な家庭で育たなかったからこそ、家族を必要以上に美化してしまうパターンなのではないか。上述したローラの生い立ちから考えると、彼女の場合は後者だろう。

中森明菜も、家族に対する強い思入れがあった

親しい人を家族呼びするといえば、中森明菜が思い浮かぶ。フリーのディレクター・木村恵子氏の著作『哀しい性』(講談社)によると、明菜が語った彼女の家庭環境は、いいものとは決して言えなかった。家は貧しく、お父さんは女性問題を起こす。お母さんが歌手志望だったことともあって「有名になって、稼いで来い」という家族の願いをかなえるために芸能界入りする。スターになると、家族は明菜に内緒で当時の事務所から借金をし、明菜が自殺未遂をはかっても、その気持ちを理解しようともせず、入院中の彼女にかけた第一声は「事務所とレコード会社に謝れ」だったそうだ。

本来優しく包んでくれるはずの家族が、そうしてはくれない。その悲しみのせいか、明菜は信頼している人、大事な人を家族呼びするようになる。木村氏をお母さんと呼び、元恋人の“マッチ”こと近藤真彦はお兄ちゃん、マッチと破局後に知り合った友達以上恋人未満の付き人男性のこともお兄ちゃんと呼んでいたそうだ。さらに気に入った女性ライターをお姉ちゃんと呼び、仕事を頼むこともあったという。

明菜は『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に出演する際、「ここ(楽屋)は家族しか入れないから。お母さんは入って」と言って、所属事務所の社長ですら入室を許さなかった場所に、木村氏を招き入れたという。いじらしいほど家族に対する強い思い入れがあることがうかがえるが、それは同時に、明菜に家族呼びされたら、明菜の強い思い入れに応える覚悟を必要とするということでもある。

明菜による過度な束縛や、その不安定さに耐えきれず、木村氏をはじめとした“家族”は、彼女から離れていくが、同書を読む限り、明菜は「血がつながっていてもいなくても、人間関係には距離感は必要」ということに気づいていないようだ。

話をローラに戻そう。大人になったローラは、親の離婚や2人の母親がいることに今は感謝していると言い、「どんな形になっても、親が幸せならうれしい」と話していた。離婚が珍しいものではなくなり、離婚したからといって子どもが不幸せとは言い切れないケースもたくさんあるので、ローラの言葉はポジティブなメッセージになり得るだろう。

しかし、やっぱり暗い子ども時代を引きずっているのではないかと思わされることもある。「親が幸せならうれしい」とローラは言ったが、これは経済的、感情的に親に搾取される子どもが良く言うフレーズだと感じるからである。家族観は、人によって違うので何とも言えないが、家族はそれぞれが自分の幸せを追求し、困ったことがあれば助け合うのが基本であって、子どもが親の幸せを願うという「家族との距離感」は、私にとって違和感がある。

天真爛漫でかわいく、ちょっとおバカなキャラとしてブレークしたローラだが、今や社会問題にも言及するなど、消費文明に踊らされることなく、自分の考えに基づいて人生を組み立てられるタレントになった。親孝行というウェットな日本文化に踊らされることなく、今後もますます活躍していただきたいものだ。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

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