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〈TOMO KOIZUMI〉デザイナー・小泉智貴のマイパートナーは“デザインのいいお香”|長く一緒に過ごすもの vol.4

  • 2021.4.15

センスのいい6人に長年愛用しているアイテムについて尋ねると、それぞれの思いがこもった話が返ってきた。料理、創作活動、お出かけ…。日常に欠かせない大切な相棒について聞きました。今回は〈TOMO KOIZUMI〉デザイナーの小泉智貴さんのストーリーを紹介。

デザインのいいお香

小泉智貴(〈TOMO KOIZUMI〉デザイナー)

オーガンジーのフリルが重なるラッフルドレスで 世界中を魅了し続けるファッションデザイナーの小泉智貴さん。人気ミュージシャンの衣装を手がけ、2021年春夏のショーでは エミリオ・プッチとのコラボも発表し……と多忙な毎日を送る中 「ちょうどいい気分転換になる」と言うのは小さな日用品。

キャンディのようにカラフルな色彩が並ぶアトリエを訪ねると、テーブルの上にモダンなお香とお香立てが置かれていた。

「さあ仕事を始めよう、という時にお香を焚くのが好きなんです。お香立てに線香をセットして火をつけて……というひとつながりの流れ自体が気分転換になる。自分自身のモードを切り替える小さなスイッチのようなものですね」

そんな小泉さんが最近気に入っているのは、グラフィックデザイナーの友人が手がけたインテリアブランド〈STUDIO THE BLUE BOY〉の「NATURAL INCENSE」。穏やかで心地よく、少しだけ刺激もあるその香りに使われているのは、インドのサンダルウッドとフィジーのサンダルウッド、パチョリ、シナモン、ラベンダー、イランイランにクローブなどなど。

「形は日本のオーソドックスな線香に近いけれど、中身は洋風のフレグランス。見た目も香りもシュッとしてシンプルで、おしゃれすぎず強すぎず甘すぎず、すべてが〝ちょうどいい〟んです」

調和がとれている、ちょうどいい状態を美しいと思う。小泉さんはきっぱりとそう話す。

「ファッションで言えば、アイキャッチーだけれど派手さやノイズで人目を引くのではなく、ちゃんとかわいらしさや味わいがあるもの。パッと見は過剰でも着てみたいと思わせる品があって、着た人を素敵に見せるもの。そういうバランスが自分のスタンダードなんだと思います。制作をする環境も同じで、調和のとれた部屋が居心地いい。お香も、身の周りをちょうどいい状態に整えるためのものなのかもしれませんね」

以前から香りにまつわるものが好きだった。身にまとう香水から始まって、キャンドルやルームフレグランスを楽しむ日もあるし、伝統的な日本のお香を焚くこともある。来客時はその日の気分にあわせた香りを玄関にさりげなく漂わせ、リフレッシュしたい時や眠る前は、燃焼時間の短いスティック状のお香を選ぶ。時には香水みたいに相性のいい2つの香りを同時に使ってみたりもする。

「お寺や神社に行くのが好きなので、お参りがてら線香を買うことも多いですね。親戚が葬儀社を営んでいて、母もそこで仕事をしていたので、小さい時から線香の香りが身近にあったからなのかな。今でもこの香りを嗅ぐと、気持ちがスーッと落ち着きます」

お香やフレグランスというと、鎮静や高揚など効能・効果で選ぶ人も少なくないけれど、小泉さんはそこをあまり気にかけない。

「詳しく知ればまた楽しいんでしょうけれど、キホンは直感。自分が素直にいいなって感じられるものがいちばんだと思っています」

GINZA2021年1月号掲載

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