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店員のあいさつ、「こんにちは」ではなく「いらっしゃいませ」の理由は?

  • 2021.4.14
「いらっしゃいませ」の理由は?
「いらっしゃいませ」の理由は?

コンビニや百貨店、飲食店などほとんどの接客業では、客への最初のあいさつとして、「いらっしゃいませ」と声を掛けることが一般的です。客の側としても特に何も考えず、聞き流している人も多いのではないでしょうか。例外的に「こんにちは」と客にあいさつする「スターバックス」のような店もありますが、少数派のようです。なぜ、日本では、客に「いらっしゃいませ」とあいさつすることが一般的なのでしょうか。経営コンサルタントの大庭真一郎さんに聞きました。

江戸の見せ物小屋の名残?

Q.お店に客が入ったとき、店員が「いらっしゃいませ」とあいさつするようになったのは、いつごろからでしょうか。

大庭さん「『いらっしゃいませ』というのは『こちらに来てください』という意味合いの言葉で、江戸時代の見せ物小屋が道行く人たちに向かって、小屋に立ち寄ってもらうために『いらっしゃいませ(まし)』と声掛けをしていたことが江戸時代の書物に書かれています。現在、客に対して店員が『いらっしゃいませ』と声掛けをするのは、江戸時代の見せ物小屋で行われた慣習の名残と思われます。

ただ、『いらっしゃいませ』が江戸時代から言われ始めたのか、あるいはそれ以前から使われていたのか、はっきりとしたことは不明です」

Q.なぜ、日本では客に「いらっしゃいませ」とあいさつするのが一般的なのでしょうか。

大庭さん「店員が発する『いらっしゃいませ』には2つの意味があります。1つ目は来店してくれた客へのあいさつです。来店してくれたことを『歓迎しています』という気持ちを表すとともに、店員からあいさつをすることで店員と客との間の緊張感を和らげ、客が安心して買い物ができる雰囲気をつくり出します。

2つ目は、入店したことに店員が気付いていると客に知らせるためです。客が商品を買おうとするとき、あるいはサービスを利用しようとするとき、店員に対して説明を求めたくなることがありますが、『いらっしゃいませ』と声掛けをすることで、客は何も言われないよりも店員に聞きやすくなります。

このように、『いらっしゃいませ』の声掛けは客に購入してもらえる確率を高めることを目的として行われています」

Q.入店し商品を見ていると、別々の店員から次々と「いらっしゃいませ」とあいさつされることがあります。入店後も繰り返し言われることに違和感があるのですが、何か意味があるのでしょうか。

大庭さん「『いらっしゃいませ』の声掛けの意味は先述した通りですが、複数の店員からの声掛けも、そのいずれにも関係しています。最大の目的は、購入するかどうかを迷っている客が店員に声を掛けづらい雰囲気を掛けやすい雰囲気にすることです。

客が商品を買うか買わないか、サービスを利用するかしないかを迷っているとき、『詳しい説明を受けられたら購入しようと思っていたのに、店員に声を掛けづらかったため購入をやめた』という販売機会の損失を防ぐためです。

店員の方から、『いらっしゃいませ』と声掛けを行うことで、客に対して『説明が必要なときはいつでも応対いたします』というメッセージを発しているのです。そのことに加えて、複数の店員があいさつの言葉を口にすることで、客の安心感を一層高めています」

Q.客の顔を見てあいさつするわけでもなく、棒読みで気持ちもこもっていない「いらっしゃいませ」を店員から聞くこともあります。こうした“やらされているいらっしゃいませ”は必要でしょうか。

大庭さん「店に店員がおり、いつでも話を聞くことができるのだということを客に知らせるという意味で、棒読みであったとしても『いらっしゃいませ』という声掛けは必要です。

“やらされている感”を感じさせる声掛けは、日用品の購入など、客があらかじめ購入する商品を決めて来店した場合はさほど影響を与えません。しかし、購入や選択の過程で、商品やサービスの品質や価格、その他の価値などを比較検討する段階の客の場合は“感じの悪さ”を与えてしまい、購入される確率を低くしてしまいます。

後者の場合は、客の目を見ながら自然な笑顔で声掛けを行い、『説明が必要なときはいつでも応対いたします』というメッセージを伝えることが効果的です」

Q.スターバックスの店舗では「こんにちは」など日常生活のあいさつで客を迎えます。多くの日本の店舗でも、こうした風潮に変わった方がよいでしょうか。あるいは「いらっしゃいませ」とあいさつするままでよいでしょうか。

大庭さん「一概にどちらがよいとは言えませんが、『こんにちは』などの日常生活のあいさつで客を迎えることを、接客面で差をつける要因として捉えることはできます。店員とのコミュニケーション目的で来店する客を増やしたいという方針がある場合、型にはまった『いらっしゃいませ』よりも『こんにちは』などの日常生活でも使われている言葉の方が効果的です。

また、繁華街や観光地などで街歩きをして気になった店に入店し、気に入った商品を購入しようと考えている客に対しても『いらっしゃいませ』という言葉より、『こんにちは』など日常生活でも使われている言葉の方が効果的です。

『いらっしゃいませ』と声掛けをすることで『店が商品を買わせようとしている』と客に感じさせてしまい、ゆっくり商品を見て回りたい気持ちを失わせてしまう可能性もあるからです」

オトナンサー編集部

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