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【Beautyインタビュー】BiSHにいるためにはもっと頑張らなきゃ【モモコグミカンパニー】

  • 2021.4.4
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モモコグミカンパニーさん

自分の汚い部分も認めることが大切

──普段から歌詞を手がけることも多く、日常的に気持ちをノートに書き留めるなど、改めてモモコさんは“言葉”を大切にしているなと感じました。

モモコグミカンパニーさん※以下、モモコ:
みんなそれぞれ自分なりの表現の仕方があると思うけど、わたしは言葉が1番最初に出てくる。音楽を聞くとき、洋楽もすべて歌詞を理解してから聞きたいタイプです。

──「覚醒という言葉が嫌い」のエピソードでは、何気なく普段使っている言葉の意味を改めて考えさせられました。

モモコ:
わたし、息しか出ていなかったんですよ、昔。多分、歌えてないこともわからないぐらい歌えていなかった。それが、最近、人並みに声を出せるようになったことで、メンバーの中で一番この言葉を使われているなと。“モモコが覚醒した”の一言で済まされることが多くて、でもわたし的には違うと思ったんです。そこまでに様々な努力があったし、そんな短い言葉で済ませないで欲しいと。少し言い方はきつかったかもしれないですけど、エッセイ集『きみが夢にでてきたよ』では言いたいけどずっと言えなかったことを書いてみました。

──女性も男性も化粧や着飾ることが当たり前な今の時代、“素の自分を変えようとして取り繕うことは悪いことだろうか”とメッセージを投げかける「素の自分を好きになれない人へ」のエピソードは共感する方も多いと思います。

モモコ:
自分らしさとはありのままの自分ではないと思い書いたエピソードです。わたしももちろんVOCEを買ったことがあるし、メイクも大好き。BiSHに入った頃からずっと自分の見た目が好きではなくて、どうにかしないと人前には立てなかったんです。激しいカラーで髪を染めたり、ずっと主張をしていたんですよ。いきなり赤髪で事務所に行ったときは、ものすごく怒られました(笑)。ヘアスタイルで目立つことしかできず、それ以外の自信が何もなかったんですよね。でも、取り繕うことはなんだか悪いこと、みたいな雰囲気があるのが不思議で。無理して頑張っているね、みたいな。わたしは髪を染めることも心の表れだし、素の自分もいろいろ盛った自分も、全部が全部、美しいと思う。もちろん、人から見たらこの時期の髪、変じゃない? みたいなこともあるし。わたし自身もあの髪を今見ると変だなと思うときもあるけれど、それでもその自分は美しかったんじゃないかと思いたい。素の自分でいられなくても、そのときの自分はそれだと思うし、諦めずになりたい自分になるために努力している人はどんな方向でもかっこよくて美しいと思います。

──そのメッセージで気持ちが軽くなる人は多いのではないでしょうか。ちなみに、モモコさんが思う“美しさ”とは何ですか?

モモコ:
なんでしょうね、美しさ。本当に難しいですけど、内面を美しくすれば、それが表面に出て見た目になると思いますね。普段どんなことを考えるか、この空を見てどう思うか、などそういうことがすべて美しさに繋がると思うのかな。本当に難しい質問だ……。わたし、まず美しくないしな。頑張らなきゃいけないんです。でもBiSHのメンバーを見ていると、みんなそれぞれ、顔も違うし、美しさの基準も違います。自分の内面と向き合いこの本を書いたときもそうですけど、汚い部分も認めることが大切なのだと。今までわたしも自分の痛々しいイメージに目を伏せて、無かったこととして平然と過ごしていたけど、あがいてみたらすごく汚くて、でも向き合ったら本当に精神的にとてもラクになれたので。すべての自分を認めることが大事なのかな。

モモコグミカンパニーさん

純喫茶で、ただぼーっとしたり、本を読んだり

── エッセイ集のプロジェクトが完成して、次に何か始めたことは?

モモコ:
わたしはよく、やりたいことリストを更新するんですね。自転車を買いたい、から小説を書きたい、まで大小いろいろ。わたしはいま、年齢的にも大人になるタイミングで、書くことにもっと向き合いたいし、歌も上手くなりたいと色々ありますね。とくに、今は自分で記事を書きたいと思っています。純喫茶が好きで、自分でアポ入れから取材もして、マスターたちから話を聞く連載をやりたいです。まだBiSHとして活動を始めたばかりの頃、大学生と両立していたときに通っていたカフェがあって、毎日辛いなと思っていた時期で、家に帰るよりも先に純喫茶に立ち寄り、自分の人生や今を見つめなおす時間として活用していましたね。かっこいい話みたいになってしまうけど、純喫茶は人生の一時停止ボタンだと思っていて。そういう空白の時間は仕事もしていないし、誰と会うわけでもなく、ただぼーっと過ごしたり、本読んでいるだけ。それは生産性のない時間かもしれない、けど絶対に必要な時間なんだと思います

──「愛すべき無駄時間」にもありましたが、人生は生産性だけではないということですね。

モモコ:
わたしにとってはものすごく大きいですね。そこで考えたことで、エッセイも出せた。人と関わるのも好きですけど、人と話すのと同じぐらい、ひとりで考え事したりする時間も好きです。「愛すべき無駄時間」に書きましたが、サビの振り付けがまったく思いつかず、みんな結果を急いで早く帰りたい、みたいなマインドだった。けど、今思うとみんなで徹夜をして“あーだこーだ”と話していた時間が大切だったんだなと思いました。

──大人になればなるほど結果に早くたどり着く道を知ってしまうので、生き急ぎがちですよね。

モモコ:
そう思います。BiSHのメンバーの中でも、すごいことをしている子がたくさんいるから、一直線にメンバーを並べて“用意ドン”の競走と考えると、自分は今、何番目だろう、何位だろうなどと考えて苦しくなります。そうすると、素直に相手のことを褒められないし、すごいねと言えなくなる。わたしはメンバーとしてそういうことをやりたくなくて。相手のために、人のことをきちんと褒められるようにも、自分は自分のペースがあり歩き方がある。自分の道をまっすぐに捉えることが大切だと思いますね。

モモコグミカンパニーさん

泣ける気持ちを持っていること。素直に泣ける場所があること

──モモコさんはパーソナルな時間を大切にされている印象です。かなりの読書家だと思いますが、最近、面白かった本はありますか?

モモコ:
最近読んだエッセイだと、ふかわりょうさんの『世の中と足並みがそろわない』。綿矢りささんの作品も好きで『私をくいとめて』が今読んでいる途中ですね。村上春樹さんも大好きで、すべての作品を読んでいます。わたし、毎日少しずつ習慣的に読むのが好きで。何でもない毎日も、本を読み進めること少しずつ進んでいる感覚になる。続きを読むために毎朝起きようと思えるんですよね。読み終わるととても悲しい気持ちになりますけど……。ジャンルとしてはなぜかミステリーだけは読まないですね。自分の悩みや、主人公と自分を重ね合わせることができる、日常とリンクしているストーリーが好きです。

──ちなみに、普段はどんな音楽を聴くことが多いのでしょうか?

モモコ:
今年は鬼束ちひろさんをよく聞いています。『流星群』が最近のベストヒット。歌詞に「泣く場所が在るのなら 星など見えなくていい」とあるのですが、それがとても心に響いて救われたんです。自分が日の目を浴びていないなと思ったとき、ひとり家で泣きそうになったとき、今、こうやって泣けるような気持ちを持っているほうが貴重なこと、光って1等賞になるよりも素直に泣ける場所があるほうが良いよなと思うことができました。

芸能人になりたいわけではない。生きていることが一番楽しい

──モモコさんは大学との両立を成し遂げ、BiSHとしての地位も築いた。コンサートチケットは即完売など、今はアーティストのなかでも成功者と捉えられることが多いと思いますが、今でもそういった想いを持つことがあるのですか?

モモコ:
いや、まったく成功者ではないと思います。BiSHに入る前も今もマインドは変わらなくて。自分は人の何倍も頑張らなくてはいけない、と常に考えていますね。

──それは大きいステージを経験しても、ベストセラーを達成しても?

モモコ:
きっと、どんな経験をしても大丈夫だとあんまり思えないんです。調子に乗ったことも無いですし、調子にも乗れてない。BiSHは安心できる家、といった感じに見られているかもしれないけれど、自分はまったく安心できないですね。周りにストイックな子が多くいるので刺激をもらうし、BiSHにいるためにはもっと頑張らなきゃと思う。まだそういうマインドなんです。でも、“わたしなんて”や“みんなが言うBiSHは、わたしじゃないんです”みたいなことを昔、言い過ぎたことがあって。プロデューサーの渡辺(淳之介)さんに“ふざけんな”と怒られました。そして、“お前はもうBiSHだと思っていいんじゃない?”と。それから、あまり卑下することは“モモコグミカンパニー”に失礼なのかなと思い直し、“自分はBiSHなんだ”と少しは思えるようになりましたね。わたしは芸能人になりたいわけではなく、生きることが普通に一番楽しいので、そのうえでBiSHでいるためには、もっと頑張らなきゃいけないなと。そういったマインドは別に一般の人と変わらないと思います。でも、いつの間にか後輩もできて、昔のままではいられないですね。

──自身が望む、望まないに関係なく、後輩ができたり、役職がついたり、立ち位置は変わっていくものだから、たしかにいつまでも“新人”ではいられないですよね。

モモコ:
先輩風は多分吹かせられてないんですけど(笑)。そういう役割はチッチ(セントチヒロ・チッチ)に任せて。でも、頼られる人には少しはなりたいなと思うので……頑張ります。

──モモコさんの姿に背中を押されている人はたくさんいると思います。モモコさんが書く小説もいつか読みたいし、ぜひエッセイは書き続けて欲しいです。

モモコ:
ありがとうございます。まさかVOCEが本の取材がくるとは思わなかったのでびっくりしました。勝手にメイクの話だと思っていたので(笑)。メイクも大好きで、普段ライブなどはセルフメイクなので、汗だくでも落ちないメイクはマジでBiSHに聞いて! といった感じです。今度は美容トークもぜひお願いします。

モモコグミカンパニーさん

モモコグミカンパニー
profile
楽器を持たないパンクバンド、BiSHのメンバー。結成時からもっとも多くの楽曲で歌詞を手がける。読書や言葉を愛する彼女が書く作詞は圧倒的な支持を集め、作詞家としての評価も高い。2018年3月に初の著書『目を合わせるということ』を上梓し、2021年3月現在第16刷と異例のベストセラー。2020年12月には2作目となるエッセイ本『きみが夢にでてきたよ』を上梓。BiSHとしては、2020年12月24日に332日ぶりとなる有観客ワンマン”REBOOT BiSH”を代々木第一体育館にて開催。2021年5月より12組のゲストを迎えるBiSH初となる対バンツアー「BiSH’S 5G are MAKiNG LOVE TOUR」を開催し、5月26日には映像作品「REBOOT BiSH」を発売する。

フーディー ¥27000(ネーム)/ネーム 03・6416・4860、シャツ ¥126000(モンス)、スニーカー ¥90000(ボース × モンス)/アイデア バイ ソスウ 03・3478・3480、スカート ¥35000(フミエタナカ)/ドール 03・4361・8240

撮影/池満弘大(TRON) スタイリング/服部昌孝 ヘアメイク/KEN(RIM) 取材・文/池城仁来

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