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既婚者の元彼から連絡がくるとき

  • 2021.4.1

結婚した元彼から連絡が来た。交際していたのは20年も昔の話。そこまで月日が経っているのに、未だに戸惑いと懐かしさと少しの切なさも入り混じった感情が込み上げる。数年に一度誘われて会っていた元彼。当時付き合っていた彼から約6年ぶりに突然電話がきた――。

電話が得意でない私は、メールやLINEはするが要件がなければ通話はしない。平日の夜22時、珍しく着信音が鳴った。誰だろう……携帯を手に取ると、ひどく懐かしい彼の名前が表示されている。一瞬電話に出るかどうかためらうも、少し慎重な様子で「はい」と出てしまった。夜間だし、きっと酔って何かの勢いで電話してきたのだろうとは思ったが、電話の声は意外にも普通だった。

彼はひとつ年上で当時私が21~23歳くらいのときに付き合っていた。私は人よりお付き合いした男性の数は多いと思う。今まで彼氏何人いた? と聞かれたら即答できない。指折り数えて振り返らないと思い出せない。

そんな私の男性遍歴の中でも絶対に忘れない人がふたりいる。むしろ、そのふたりが強烈過ぎて、そのほかの関わった元彼たち群がだいぶかすむ。そして、そのふたりの中のひとりが彼で、いわゆる社内恋愛である。

彼が新入社員として4月に配属してきた日のことは今でも覚えている(私が短大卒で彼が大卒)。固い挨拶をして何だか緊張している人だなと思った。しかしそのイメージも入社数日で崩れる。大学時代にアメフトをやっていた彼はカッコ良かったし、明るく元気で素敵だった。会話をする前からどうやら私の事を気に入っているという噂を聞いた瞬間、私も急に意識しだし、皆で後楽園に行ったり、BBQに行ったりしながら徐々に徐々に距離を縮めていった。

そして忘れもしない、8月3日の神宮花火大会、偶然かどうかは今でも謎だがふたりきりで帰ることになり、駅のホームで告白されて付き合うことになった。実は当時私には彼氏がいたのだけど、それを知っていて告白をしてきてくれた。

■彼からのプロポーズを断った理由

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彼と付き合った2年半余りはとても楽しいものだった。かなりモテるタイプの人だったけれど、約束通り浮気の心配は皆無だったし誠実だった。彼といるといつも笑顔でいられた。朝お茶して、日中仕事で会って、夜はデートもしくは電話、そして週末も一緒。はぁ、今では考えられないラブラブっぷり! 恋は盲目とはこのことだ。

しかし、いつか結婚してもいいなと思っていた彼なのに、ふたりの間に歯車が狂いだしたきっかけは、多分私にあるのかもしれない。彼は早くから結婚を考えていてくれたし、転勤したらついてき来てほしいとまで言ってくれたのに、当時の私の答えは「今はまだ無理だよ」だった。

手に職なり、自立した何かを持っていない自分が嫌だったのでまだ早いと思ったのだ。結婚したら家庭に入ってほしい彼と、結婚しても外に出ていたい私とではそもそも考え方が違ったのかもしれない。

安定を求める彼と変化を求める私。そうしながらも彼との付き合いは続いていたのだが、私が外の世界を見れば見るほど、彼は私に不安を感じているようだった。

別に彼のことを嫌いになったとか冷めたとかでもないのに、徐々に追い詰められたような気になり、私の方から距離を置こうと言った。結局その後、別れたのだけど、彼は同じタイミングで傷心した女の子とすぐに意気投合し、私と別れて1カ月半後に付き合い始め、そのまま地方に転勤が決まり、1年後には結婚してしまった。

キツかったのはその女性も同じ社内だったこと、「もし全員が敵になっても俺は絶対に理央を守るからね」と言っていた彼が、真っ先にあらぬ噂をたてたり周りを巻き込みながら攻撃をしてきたりして、人は豹変するんだなぁと思ったこと。それでも私は表面的には冷静に淡々と仕事をこなした。

内心ボロボロだったけれど、今まで仕事をがんばってきたのに彼のせいで辞めるなんて意味がわからないし、プライドもあった。

■6年ぶりに、元彼から「会いたい」連絡

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実は別れておよそ8年後にも、突然彼から電話が来た。31歳くらいの頃だ。出張でこちらに来ているから会おうと彼は言う。もう一生会わないだろうと思っていたのに、3日間連続で会った。

本当にただ会って飲みに行っただけで、手さえもつながなかったのだけれど、懐かしさと嬉しさと複雑な気分だった。後からメールが来て「昔から正直で真っすぐで不器用な理央が変わっていなくて良かった。今でも大好きだから」とあった。

不倫をするつもりはないけれど、心をどう保てばいいのか少し混乱した。昔はふたりで会うのが普通だったのに、今あくまで想像だけどお付き合いするとしたら、浮気、不倫とネガティブな言葉で括られてしまうのかぁ。

それから最後に会ったのは4〜5年後。私が35〜36歳になっていたかな。そのときもただ飲んで終わった。そしてごくごくたまに連絡していたが、それも途切れ、42歳になった今、また突然連絡が来たのだ。

電話を切って気づく。部屋がシンとなったとき、久しぶりにテンションを上げて電話していた自分がいたなと。あの声と話し方は昔と変わっていない。冗談を言いながら相変わらず私を笑わせてくれるところとか、懐かしさや切なさ、そして20年経った今でもあの駅に、あの街に行くと私を思い出し、多少お酒の力は借りたけど会いたくて連絡したという彼の気持ちと。

うれしいのか、それ以上進むのはやめておいた方がいいのかと。

■今の私が彼と会うといい結果にはならない? 理性と感情がせめぎ合う

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もしかすると、私が既婚者で幸せ真っ盛りだったら、余裕を持って会っていたかもしれない。しかし一瞬でも、彼と奥さんが上手くいっていないのでは? と勝手な期待をしてしまった。そう考えると、やはり会うタイミングではないのかもしれない。やめとけ、会った後に寂しくなるだけだからと、理性は言う。いま私がフォーカスすべきこと、優先順位も決まっているのでそこに集中しろと。

つい、彼のFacebookを覗き見すると、最近小学生に上がった子どもの微笑ましい姿が写っている。会いたいとは言ってもただ懐かしく、多少の感傷と昔の思い出を共有したいだけ、それ以上でも以下でもないはずだ。

しかし、今のこのタイミングで会わないともっともっと歳をとって容姿も衰えてしまうし、いつ会えるかわからないし、思い出話をするだけだし考えすぎだ、と自分を言い聞かせようとする感情もある。もし、感情が先行するならば、人はそうやって不倫に走るのだろうかと考えてみる(私は不倫未経験)。

自分からは連絡しないので彼次第なのだが、すでにこうやって悶々とさせられている時点で、やはり彼は私にとって今も影響力の大きい男性。他の相手だったら私はいちいち深読みもしないし、サラッ誘いに応じてしまいそうなので。

あなたは昔お付き合いした特別な彼人から連絡がきたら冷静でいられますか?

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