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夢がない?大人になってなりたいもの1位は「会社員」、わが子が言ったらどうする?

  • 2021.3.31
子どもの夢はいろいろあるけど…
子どもの夢はいろいろあるけど…

第一生命保険が小中高生を対象に調査した「第一生命『大人になったらなりたいもの』アンケート」(2020年12月、インターネット調査)で、小中高の男子、中高の女子でいずれも「会社員」が1位になりました。会社員は小学生の女子でも4位に入っています。「在宅勤務で働く親の姿を間近に見て尊敬しているのでは?」との分析もありますが、「サッカー選手」「プロ野球選手」などこれまでトップの常連だった職業と比べると、失礼ながら「夢がない」感じもします。

もし、わが子が「会社員になるのが夢」と言ったら、親はどう対応したらよいのでしょうか。主に小学生のアンケート結果分析と対応について、子育てアドバイザーの佐藤めぐみさんに聞きました。

「会社でどんなことをやりたいの?」

Q.今回の結果をどう思われますか。

佐藤さん「会社員というのは実際には職業ではなく、雇用形態を表すものですが、この1年でリモートワークが増え、子どもたちがその姿を『会社員』という職業として認識したのかもしれません。アンケートの選択肢の中に『会社員』の代わりに、会社の中でどんな仕事をしたいかという『業種』や『職種』を入れていたら、また違う結果になったのではと思いました」

Q.なぜ、こういう結果になったのでしょうか。

佐藤さん「子どもは年齢が小さいほど、より身近なものから影響を受けやすいものです。2020年はほぼ1年、ずっとコロナ禍で生活スタイルが様変わりし、あらゆる面で、子どもたちにとっての『身近なもの』が大きく変わった年でした。それまで、お父さん、お母さんが会社で働いていても、その現場を見ることはほとんどなかった子もリモートで働く姿を実際に見るなどして、影響を受けたのは大きいと思います。

一方で、会社員が1位にはなったものの、実際には、子どもたちにとって『会社員』はまだまだ未知の世界といえます。おそらく、大人が定義する『会社員』と子どもが今回選んだ『会社員』はイコールではないでしょう。会社員が1位というと『夢がない』という大人もいるようですが、会社に雇われているとか、そういう複雑な理解ではなく、『おうちで机に向かって仕事をしているのが会社のお仕事』など子どもの視界の中に入る中での理解だと思います。

もしかしたら、いつもはほとんど家にいられないお父さんがいつもよりも家にいるからとか、ご飯を一緒に食べられるとか、そういうおまけの部分に『あ、会社員っていいな』と思ったのかもしれません」

Q.わが子が「会社員になるのが夢」と言ったら、どう対応すべきでしょうか。

佐藤さん「先ほども述べたように、会社員というのは会社に雇用されている状態を指すので、そこには具体的に何をやりたいのかは含まれていません。そのため、お子さんが『会社員になるのが夢』と言ったら、そこを掘り下げてあげるのが適切だと思います。

大人の世界を見れば、多くの人が会社員です。総務省の労働力調査で示された就業者数の割合を見ても、約9割が会社員を中心とする雇用者、それが日本の現況です。また、回答の2位以下を見ても、例えば、鉄道の運転士、ゲーム制作やITエンジニア、さらにはYouTuberも会社に所属していれば会社員です。そのため、『会社員になるのが夢』とお子さんが言ったら、『そこでどんなことをやりたいの?』とお子さんの興味や強みを言葉で引き出してあげるのがいいと思います」

Q.逆に「プロ野球選手」「サッカー選手」「YouTuber」「プロゲーマー」など、実際になれる人が少ないと思われる職業の場合、親はどう対応すべきでしょうか。

佐藤さん「これらの職業は成功していることで露出が増えるため、子どもたちにはその夢を実現できなかった人は見えず、成功者ばかりが目に留まりがちです。中には『好きな野球をやってお金がもらえる』『ゲームをやるのが仕事なんてうらやましい』などと思っている子もいるでしょう。

そんな子どもの様子を見て、『もっと現実を知ってほしい』と思う親御さんもいるかもしれません。でもわざわざ、『そういう世界は一握りの人だけが成功するんだよ』とがっかりさせるようなことは言わずに、小さいうちはそのまま受け止めてあげるのがいいと私は考えています。小さい頃の夢というのは、大きくなるにつれ変わってくるものです。小学校、中学校を経て、高校生になって、その夢がどうなっているか、その変化を見ていてあげてください。

スポーツ選手もメディア関連の仕事も相当な努力をしないことには結果に結びつかないので、もし本当になりたいのなら、成長のどこかで『自分はそこまでの努力ができるか』を自らに問うことになります。こういうことは人から言葉で言われるよりも、自分で経験したり、考えて結論を出したりした方が納得感があるので、親は基本的には口を出さずに見守ってあげるのが望ましいでしょう」

Q.男子の夢が世相を反映しがちなのに対し、女子の夢は堅実といわれます。

佐藤さん「男の子の夢が世相を反映しているというよりも、今の世相が男の子の興味にマッチしているのだと思います。今回のランキングを見ても、昔のランキングにはなかった職業はIT関連のものだけです。それ以外の職業、つまり、スポーツ選手や警察官、医師などは今も昔も変わらず人気です。男の子の方が女の子以上にIT系に興味があり、ITはここ最近のトレンドである。これが男の子の選んだ職業の方が今の時代の流れを反映しているように見える理由ではないでしょうか。

一般的に男女を見ると、女性の方がトレンドのものを追うことが多いように思いますので、また別の流れが来て、それがたまたま女性にフィットしたら、女の子のランキングも変わってくるように思います」

Q.子どもの「夢」に対して、親はどう向き合うべきでしょうか。

佐藤さん「子どもの夢はその子の心の中の思いを具体化したものなので、親にとって、お子さんについての貴重な情報でもあります。その子が何に興味があって、どんなことに取り組みたいと思っているのか、お子さんの世界観を垣間見ることができるものなので、大切にしていってほしいと思います。

私の子どもは幼稚園の頃から小学校半ばくらいまでずっと、『動物園の園長さんになりたい』という夢を持っていました。その夢をもっと知るために動物園の年間パスポートを購入し、四季折々の動物園に行ったのを覚えています。あるとき、『動物園はやらない』と言い出し、聞いてみると、絶滅危惧種の保護の方をやりたいということでした。このように、子どもの夢というのは日々の経験や新たな知識で変化をしていくものです。

子どもの夢は子どものものなので、親はそれをコントロールすることなく、でも、子ども任せにするのでもなく、いい距離でサポートしていきたいものです。大人の方が社会経験が長く、情報も豊富なので、その職業についての情報(○○の資格が必要、△△高校に進んだ方が有利、など)を提供してあげるのは、親がやっていきたい関わりといえるでしょう」

オトナンサー編集部

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