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カレーとクリームソーダで巡る旅。高円寺「旅する喫茶」で知る日本各地の味

  • 2021.3.29
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カレーとクリームソーダ。そんな喫茶店の王道メニューを通じて、日本各地の魅力を伝えようとする「旅する喫茶」。東京・高円寺を拠点に、全国へ出かけていくユニットだ。道中で出逢った地域ならではの食材や人のつながりを東京に持ち帰っては、おいしい料理にして発信していく。まだ知らない“おいしい”日本の味に会える場所として、注目のスポットだ。

2021年3月、高円寺駅前のシンボルともいえる老舗洋菓子店の裏手に、「旅する喫茶」がオープンした。「喫茶」という大衆的なスタイルを謳いながら、どこかプライベート感のあるクラシカルな入り口。思い切って扉を開けると、一瞬にしてスパイシーな香りとジャジーな音楽に包まれる。

カラフルなものであふれる雑多な街の様子から一転、そこにあるのは、ダークブラウンとやわらかな白を貴重にした温もりあるシックな「喫茶室」だ。バーを思わせる重厚なカウンターと、高低差をつけることでプライベート空間が確保されたテーブル席。それぞれがゆっくりと自分の時間を過ごせるように、近くの客と視線があわないよう配慮されたデザインとなっている。

カウンター越しの厨房に立つのは店を切り盛りする、カレー職人の玉置さんとクリームソーダ職人のtsunekawaさん。

「僕たちは、これまで全国各地のポップアップイベントでカレーとクリームソーダを提供してきました。この店では、そんな旅で作ってきたものや出逢った人たちの食材を使ったメニューを通して地方の魅力を発信できたらと思っています」と、玉置さん。

もともとはお互いの趣味だったというカレーとクリームソーダ。「相性いいんじゃない?」というシンプルな理由からユニットを組み、そこにふたりが好きだった“旅”をプラスして日本全国を巡り始めたのが、「旅する喫茶」の始まりだ。メニューには、旅先の食材を使うことがルール。いわば、神出鬼没の移動式喫茶店だ。

2019年4月から約1年半の間で、北海道から沖縄まで13都道府県を巡り、22カ所で「喫茶店」を開いてきた。実際に旅に出てみると、まだまだ知らなかった地域の食材や伝統・文化にたくさん触れたという。玉置さん自身が香川県出身ということもあり、「もっと地方を盛り上げたい」という気持ちは徐々に高まり、「本格的に腰を据えて活動するためにも、拠点となる場所が必要だなと思うようになって。いつかは実店舗の喫茶店を持ちたいと、漠然と思い描いていたふたりの夢を、馴染みある高円寺の街でかたちにしました」

実店舗のメニューには、これまでの旅で出逢った食材やふたりとゆかりあるものを取り入れる。たとえばコーヒーは、兵庫の「ゆげ焙煎所」や香川の「プシプシーナ珈琲」の豆を。紅茶は、新潟・佐渡島の和紅茶などを使用。現地に行かなければ味わえない美味しさが東京にいながらにして味わえるのは、カフェ好きにとっても実に魅力的だ。
夜には、高知・馬路(うまじ)村の特産柚子ドリンク「ごっくん馬路村」を使ったカクテルや、沖縄のケラマ島の美しい海をイメージしたものなど、多数のアルコールもラインナップする。

ふたりの代名詞である自慢のカレーやクリームソーダは、定番のものを備えつつ、旅にちなんだバラエティ豊かなメニューをこれからどんどん提供する予定だという。
各地のイベントでは必ず、現地の農家や産直市場で食材を仕入れ、到着してからレシピを考えてきたと話す玉置さん。

「食材にあわせて出汁のとり方やスパイスの配合を変えたり、クリームソーダのシロップを仕込んだりしてきました。最近では、奈良で伝統の大和野菜の宇陀金(うだきん)ごぼうを使ったキーマカレーを、博多であまおうのクリームソーダを作りましたね。今後もここを拠点に月に一度は旅に出てポップアップの喫茶店をやる予定です。そこで出逢った人とのつながりを活かして、地域の食材やさまざまな魅力を東京の皆さんにも伝えたい」

かつての喫茶店といえば、じゃがいも・にんじん・たまねぎのカレーに、緑のクリームソーダがお決まりだったが、ここではカレーの具材もクリームソーダの味も無限大だ。はじめて味わうだろう新しい食材や美味しさとの出逢いを存分に満喫しよう。

また、今後の各地への旅の途中には、その地の観光スポットや訪れた飲食店、触れた文化などをSNSを通じて発信していく予定なのだとか。他県からイベントに足を運んでくれる人たちに各地を満喫してもらいたいという。東京から旅に出かけるときのヒントにもなりそうだ。

「喫茶店って、ちょっと特別な時間を過ごせる場所だと思うんです。気取らないけど落ち着いた雰囲気があって、家ともカジュアルなカフェとも違うゆっくりとした時が流れる場所。高円寺は賑やかで楽しい街だけど、そういう時間を過ごせる場所が少ない。カレー、クリームソーダ、コーヒー、お酒などを通してまだ知らない各地の美味しさを味わいながら、のんびり自分の時間を楽しんでもらえると嬉しいです」

カレーとクリームソーダ。そんな馴染みのメニューで巡る、全国各地の魅力。旅する喫茶には、のんびりと過ごせる自分の時間と、まだ知らなかった日本の美味が待っている。単に近くの店で食事をして過ごすよりも、2倍も3倍も、充実したひとときが過ごせるはずだ。
拠点をつくることにここ一年集中してきたふたり。コロナ禍も相まって止めざるをえなかったふたりの旅は、徐々に再開予定だ。高円寺の小さな喫茶室でまだ見ぬ「おいしい日本」に出逢うのを楽しみにしよう。

取材・文 : RIN

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