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小学受験に反対の夫、賛成の妻 子どもの教育、夫婦で折り合うには?

  • 2021.3.29
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子どもの教育、理想は?
子どもの教育、理想は?

子どもの教育方針について、夫婦間で考え方が異なることはよくあります。「子どものため」という目的は共有できていても、どのような習い事をさせるのか、いつから学び始めるかなど、考え方が異なれば夫婦間で対立が生じることもあります。

子どもの教育方針については母親の方が教育熱心であることが多いようですが、「教育熱心な母親と、そうではない父親」の2つの家庭の事例から、子どもの教育の在り方について考えたいと思います。

「教育熱心は成長の妨げ」

4歳の息子を持つAさん(38歳、女性)は夫から、「極端に教育熱心な母親」と見られていることが心外です。

「あまりにも教育熱心になるのは、子どもの成長の妨げになると思うので控えようと思っています。息子には自由にすこやかに成長してほしいです。ただ、息子はよその男の子に比べて、かなりわんぱくで、よく、お友達を泣かせてしまうこともあるので何とかしたいと思っていました。

息子の度を越えたわんぱくはどれだけ口で注意しても直らず、サッカーと水泳の習い事に通わせることを思い付きました。体を動かしてエネルギーを発散すれば、少しはわんぱくが収まるかもしれないし、人からものを教わることが落ち着きにつながるかもしれないと考えました」(Aさん)

Aさんはその考えを夫に話し、同意を得ようとしました。しかし、夫は全く乗り気ではありませんでした。

「『子どもはみんなわんぱくなもの。息子は元気があってむしろいいくらい』と夫は言います。私も息子のわんぱくが平均的であったなら、ここまで思い悩まなかったかもしれません。外で息子といるのは主に私で、息子がお友達を泣かせてしまう現場に夫は居合わせたことがないので『夫には危機感が足りない』のだと思いました」

Aさんと夫の話し合いは平行線でしたが、夫の性格をよく知るAさんには秘策があり、それを切り出しました。

「『習い事の費用は全部私が持つ』と持ち掛けたのです。夫は出費を何かと嫌がる倹約家なので、私個人の財布からお金を出すと言えば、心を動かせるのではないかと考えたのです。夫は『う~ん』とうなり、しばらく考えていましたが、やがて、『そんなにしたいなら』と渋々ながら認めてくれました」

こうして、Aさんの息子の習い事が始まりました。

「夫は休日、息子からせがまれて一緒にサッカーをして遊ぶようになり、そこは楽しんでくれているようです。息子のわんぱくは相変わらずですが、以前よりはこちらの注意に耳を傾けてくれるようになった気がします」

父親視点からすると…

「教育熱心な母親とそうではない父親」の事例を今度は、父親視点から見てみましょう。

Bさん(33歳、男性)には3歳の娘がいます。娘の受験を遠い未来の出来事と考えていたBさんでしたが、娘が幼稚園に入って間もなく、Bさんの妻が「小学校受験をさせたいので、年中に上がったら、受験対策用の幼児教室に通わせる」と言い始め、Bさんは戸惑いました。

「何となく、『娘の受験勉強は中学生でスタートかな』とのんびり構えていたので、妻の宣言には面食らいました。しかし、今まで、妻と子どもの進路について話し合ったことがなかったので、妻から驚かされる展開になってしまったのも仕方ないと思いました」(Bさん)

ただ、「思い返せば兆候はあった」とBさんは話します。

「娘が言葉を話すようになる前から、妻は自宅で娘に英語、数字、平仮名などに触れさせていて、『教育熱心だな』と思って見ていました。ただ、それは遊びの延長のような感じだったので、『娘にとって損はないだろう』とポジティブに見ていたのです。しかし、本格的な勉強となると、話は違います。そんなに早くから勉強させなくてもいいだろというのが僕の考えです」

Bさんは妻に自分の考えを伝えましたが、妻はどうしても小学校受験をさせたいようでした。

「妻は公立の小・中学校に通っていたのですが、『そのせいで悔しい思いをしてきた』そうなのです。私立に通う親戚にマウントを取られたり、通っていた中学校であまりひどくはないものの、いじめに遭ったりしたようです。娘にはそんな思いをさせたくないので、小学校から私立に行かせたいというのです。

妻の個人的な体験はそうだったかもしれませんが、公立であろうが私立であろうがどちらでも嫌な思いをするリスクはあると思います。そう言うと『どちらも変わらないなら私立にさせてほしい』と懇願してきました。妻が私立を希望する理由も多少は理解できますし、幼稚園選びのときも妻に一任していたので、『では、私立を目指して小学校受験の準備をしよう』と返事をしました」

小学校受験が決定すると、妻は大っぴらに自らの教育熱心さを発揮し始めました。

親のエゴでないか確認を

一方、Bさんは腹を決めたつもりでも、心の準備が完全には整っていなかったようで、娘が勉強をしているリビングでテレビをつけようとして妻から責められました。

「テレビをつけようとしたことだけでなく、全体的に僕ののんびりした態度がよくなかったみたいで『小学校受験は家族ぐるみなんだから、しっかりしてもらわないと』と言われ、何度か怒られました。

妻はたまにのめり込み過ぎになることがあり、娘に対してそうなっている妻を見るたびに『小学校受験をOKするんじゃなかったかな…』という気持ちになります。娘は妻の言うことを聞いてよくやっていますが、妻の厳しさが行き過ぎだと感じたときは、妻とけんかする覚悟で仲裁に入ります」

しかし、受験の準備が始まってから、Bさんの意識は少しずつ変化していきました。

「『受験は高校からでいい』という考えは変わっていませんが、妻に『家族ぐるみで』とたしなめられてからは向き合い方を変えるようにしました。妻だけ一生懸命で、僕がそれにずっと否定的だと、娘が戸惑ってしまうだろうと思ったからです。

それに、小学校受験は娘にとって初めての大きな挑戦なので、無事合格して、成功体験を勝ち取ってほしいと思うようにもなりました。父親として、娘をすごく応援していて、妻と娘の調整役や勉強を見ること、息抜きに娘と思いっきり遊ぶことなど、できる限りのサポートをするように努めています」

このように、夫婦間で子どもの受験に対する考え方が違っていても、子どもの受験を応援する姿勢を共有できるケースもあるようです。

近年では“極端に教育熱心な母親”に対する否定的な見方が広まっているので、Aさんのように「そうならないように」と心掛ける母親も増えています。親が子どもに与える教育は“愛情の一環”ですが、それが親のエゴに陥っていないかは常に確認しておきたいところです。

フリーライター 武藤弘樹

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