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新作『海街diary』が公開。時間と家族を端正に描き続ける是枝監督のこだわりとは?

  • 2015.6.16
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Photo: Kazuya Morishima

『そして父になる』に続き、新作『海街diary』がカンヌ国際映画祭で話題を集めた是枝裕和監督。吉田秋生の人気漫画をもとに、鎌倉の古い日本家屋に住まう四姉妹が清々しく描かれる新作は、是枝がこだわり続けてきた時間をテーマに新たな広がりを見せる。

「もともと吉田秋生さんの過ぎゆく時間への諦めのような感覚が好きで。『海街diary』も第1巻が出たときに読んで、映画化したいと思ったんです。時間が流れ去ってゆかないで、そこにとどまり、過去を書き換えてゆけるという、非常に前向きな世界観がこれまでの吉田漫画とひと味違っていて面白くて。でも考えてみれば、僕も『ワンダフルライフ』や『空気人形』で、記憶や空虚を書き換える物語を撮ってきていたんですよね。海外の映画祭に行くと、いつも“是枝は小津(安二郎)の孫だ”みたいなことを言われるのが嫌だったんですが、今作は綾瀬さん演じる長女をはじめ、こうありたいという想いで、シャンと背筋を伸ばして生きている人間が出てくるところなど、小津的な要素があるのは認めます。それでも畳の縁に対して人が直角に座ったりすると、決まりすぎて小津っぽいからと、あえて斜めに座らせたり。小津映画の中では『父ありき』『大人の見る繪本 生れてはみたけれど』といった、父の期待に応えられなかった息子、息子の想いに応えられられない父親というモチーフは好きですが、もっとドロドロして、背中丸めたり、斜に構えたりしている成瀬巳喜男監督の映画の登場人物のほうがより好きだし、生活感を撮るなら、それとはまったく関係のないところを目指している小津作品よりも成瀬作品のほうがずっと勉強になる。『稲妻』に出てくるダメな男たちや、『めし』の上原謙とかもすごくいいでしょ」是枝裕和/映画監督

1962 年、東京都生まれ。テレビマンユニオンにて『しかし……』等のドキュメンタリー作品で頭角を現し、1995 年に『幻の光』で映画監督デビュー。『ワンダフルライフ』を経て、04年『誰も知らない』で柳楽優弥にカンヌ映画祭史上最年少の最優秀主演男優賞を贈り、13年『そして父になる』では同映画祭審査員賞に輝くなど、日本を代表する映画監督に。

「実は、オリジナル脚本より原作ものを映画化するほうがプレッシャーは強い。原作への愛をちゃんと形にしなければと思うから。良い魚を仕入れたはいいが、料理の腕を振るわなければ素材が生かせないように。だから原作を追いかけるってことはめったにないけれど、インド系女性作家ジュンパ・ラヒリの小説『停電の夜に』は映画化してみたい。喋ると実現しなくなるから本当は言いたくないんだけれども(笑)。夫婦って残酷だなって震撼させられる物語で、ろうそくの灯されたキッチンという1シチュエーションで役者と勝負する映画になるから、監督としてはチャレンジし甲斐のある原作なんです」是枝裕和/映画監督

1962 年、東京都生まれ。テレビマンユニオンにて『しかし……』等のドキュメンタリー作品で頭角を現し、1995 年に『幻の光』で映画監督デビュー。『ワンダフルライフ』を経て、04年『誰も知らない』で柳楽優弥にカンヌ映画祭史上最年少の最優秀主演男優賞を贈り、13年『そして父になる』では同映画祭審査員賞に輝くなど、日本を代表する映画監督に。

参照元:VOGUE JAPAN

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