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急騰から大暴落! 米 ゲームストップ株で何が起きた?

  • 2021.3.19

2021年1月中旬以降、アメリカのゲームストップ株が大きく値上がりし、その後大暴落したことが報じられました。大きな利益をあげた投資家がいる一方、損失をこうむった投資家もいます。株式投資では値動きの先行きを読むことで、利益を得ることができますが、読み間違えれば損をしてしまいます。

今回のゲームストップ株が急騰から大暴落をした原因は何だったのでしょうか。そして、なにが影響したのでしょうか。日本でも今後起こりうることなのかどうかも気になるところです。
今回は、アメリカのゲームストップ株で何が起きたのか、詳しく見ていきます。

ゲームストップ株騒動の概要

まず「ゲームストップ」とはアメリカの企業名です。主にビデオゲームの新品・中古ソフトを販売する店舗を運営していて、2020年はコロナ禍の影響もあったためか、業績は落ち込んでいました。
2020年は、9月までは10ドルに届かない株価で推移しており、同年4月3日には2.57ドルまで下げていました。
9月以降は10ドルを上回るようになりましたが、それでも12月31日の終値は18.84ドルで幕を閉じました。

それが、2021年1月13日には、前日の終値19.95ドルから38.65ドルまで一気にあがります。約2倍もの値上がりでしたから、利益を確定した投資家もいたかもしれません。その後、株価の値上がりはさらに大きくなっていきました。
1月27日には380.00ドル、1月28には一時483.00ドルまで急騰したのです。

過去52週(約1年)の最安値は2020年4月3日の2.57ドルですから、そこから9カ月でなんと約188倍も値上がりしたということです。
日本円で100万円の投資をしていたら、1億880万円になる計算。大変な値上がりだったことがわかります。

しかし、483.00ドルの高値を付けた1月28日、株価はその日のうちに大暴落し、終値は193.60ドルだったというのですからさらに驚きです。
その後も株価はどんどん下がり、2月2日には74.22ドル、2月19日は38.50ドルまで暴落しました。
2月25日には一時184.68ドルまで値上がりしましたが、今後いくらの株価で落ち着くのか注目されています。

ゲームストップ株騒動の影響、損失

これだけ株価が急騰しその後大暴落をすれば、その影響も決して小さくありません。
今回の値上がりの原因には、多くの個人投資家が買ったことが挙げられます。今後も値上がりする、と見込んで株を買った個人投資家が、高値で売れば利益を得ます。

株式の売買で利益を出すには、安く買って高く売ることです。
たとえば、株価が3ドルの時に100株買うとしたら、300ドルです。
株価が350ドルに値上がりした時に売れば、3万5000ドルになりますから、大きな利益を出すことができます。
株を買ってその後売る、という流れは、株式売買の基本的な方法です。

しかし、株式売買には、先に売ってその後買い戻す、という方法もあります。
先に売る、と言っても、「持っていない株は売れないのでは?」と思ってしまいますが、これは「空売り」という確立された投資手法です。

空売りは、信用取引のひとつ。
空売りをする投資家は、証券会社に担保資産(現金・株)を差し入れ、証券会社から株式を借りて売ります(借りている間は金利手数料が発生します)。その後買い戻しますが、株価が売った時より買った時のほうが安くなっていれば、差額が利益になります。
高く売って安く買う、という取引が成立するので利益が出るのです。空売りは株価の下落局面で効果的とされています。

逆に、空売りをした後予想に反して株価が上がった場合には損失が出ます。仮にレバレッジ(担保資産以上のお金で投資)をかけて空売りした場合は、その損失は株価の上昇分より大きくなりますから、損失が想定以上に大きくなる可能性があります。

空売りの場合は先に売り、買い戻すわけですから、株価が値上がりして、差し入れ担保の資産額以上に損失が膨らんだら、追加で担保を差し入れなければなりません。これを「追証(おいしょう)」と言います。追証ができなければ、その損失は実現せざるを得ないので、大損害が出てしまうというわけです。

今回のゲームストップ株の場合も、機関投資家が株価下落を見込んで空売りをしたところ、逆に株価が急騰して追証ができなかったまたは追証を諦めたため、機関投資家は大きな損失を出すことになりました。
逆に、値上がりを見込んで株式を買った個人投資家は大きな利益を出すことができました。

では、どうして個人投資家はゲームストップ株を買ったのでしょうか。

急騰・急落が起こった原因は「SNS」

個人投資家はゲームストップ株を買った理由は、SNS(ネット交流サイト)での呼びかけがあったからです。
SNS「レディット」に、個人投資家のコミュニティ「ウォールストリート・ベッツ」があります。
そのサイトに、「買い支えよう」、「金持ちファンドとSNSメンバーの闘いだ」など、ゲームストップ株などの購入を呼び掛ける投稿が相次ぎました。

空売りをした機関投資家(=金持ちファンド)は、値下がりすると予想して空売りをしたものの株価は急騰。損をするとは分かっていても、一定の株価で買い戻す損切をせざるを得ない状態になります。
買い戻すタイミングを逃せばさらに値上がりし、損失が大きく膨らむ可能性があるからです。
そうして機関投資家が買い戻せば、買いが増えるためさらに株価があがる状況に拍車がかかることになりました。

機関投資家は、大きな資金力を武器に利益を生んでいます。市場への影響力も大きいものです。その陰で、個人投資家は資金や運用スキルに不足し、大きな利益を生み出しにくい、といった不満があったのかもしれません。
お金持ちは、お金持ちゆえにさらに儲かり、貧乏人はさらに貧乏になる。そんなアメリカ社会の分断と不満が背景にあったのではないかと考えています。

しかし、株価の急騰は長くは続きませんでした。
個人投資家が株式の売買をしたのは、ネット証券の「ロビンフッド」などでしたが、1月28日に相場の乱高下のため、ゲームストップ株など急騰する銘柄の取引を停止したからです。
この取引制限のため個人投資家はゲームストップ株を買えなくなり、その結果同日には株価が44%も急落、193.60ドルで終わったことは先ほど書いたとおりです。

個人投資家の売買が制限された一方で、機関投資家は自由に売買ができました。
そのため、個人投資家だけが規制されたとの批判が起こったのは当然でしょう。株価の乱高下が落ち着いても、個人投資家の不満の火種はくすぶったままになりそうです。

ゲームストップ株が急騰したのは、個人投資家の間で「株を買おう」という呼びかけがSNSで巻き起こったからです。
そのような行為は、「相場操縦」にあたるのでしょうか。

ゲームストップ株騒動は「相場操縦」に該当するのか

相場は、多くの投資家の売買によって形成されるものです。上がると思って買ったら値下がり、ということは投資家には珍しいことではありませんが、損をさせようと思って誰かが人為的に操作しているわけではありません。
健全な相場は、フェアであることが非常に大切なのです。

一方、相場操縦とは、相場を人為的に操って利益を得ようとする行為です。
わざと値上がりさせたり、逆に値下がりさせたりすることで利益を得ることは、フェアでありません。
相場操縦には、次のようなものがあります。

見せ玉

売買が活発に行われている株式は、値動きが大きくなると見込まれるため、他の投資家が取引に積極的になります。
そのような状況に見せかけるため、大量の注文を出しては、約定しそうになると取り消すことを見せ玉といって相場操縦として禁止されています。

仮装売買

見せ玉では約定しそうになると取り消しますが、仮装売買では実際に売買します。ただし、売りも買いも同一人物であり、しかも同一時刻、同一価格です。
同一人物なので、売買価格は好きにできますが、それを見た他の投資家が実態のある売買だと誤解することによって、相場操縦となります。

馴合売買

売買をするのが同一人物でなくても、知り合い同士であらかじめ約束しておいた価格で売買すれば、馴合売買という相場操縦です。

買い上がり

現在値よりも高値で買い注文を大量発注し、その間にある売り注文もすべて約定させて、株価を引き上げながら出来高も上昇させることを買い上がりといいます。

ゲームストップ株騒動は、SNSで株を買おうという呼びかけで始まりました。それらの呼びかけに応じた多くの個人投資家が、ゲームストップ株を買ったことで株価が上がったのです。
このことが相場操縦にあたるかどうかは、議論が分かれるところです。
相場操縦だと判断されれば、今後何らかの規制がされることになるでしょう。

相場操縦にあたらないとされたとしても、業績などとは関係なく急騰した株価は、時間とともに下落していきます。
企業の業績がアップし、将来性があると投資家から判断されて株価が上がったのであれば、実態をともなっている価格として安定するでしょう。

しかし、ゲームストップ株の急騰は実態を伴っていません。2021年2月に入ってからは低めに推移しており、2月19日には38.50ドルまで下げました。
機関投資家をやりこめた個人投資家たちですが、実際にどれだけ利益を出したかはそれぞれで大きな違いがあると考えられます。

予想通りに値上がりし、大きな利益を出した投資家もいるでしょう。
一方で、なかには、「これからもっと上がる」と見込んで買ったのに急落したり、急落しても損切できず保有し続けたり、という個人投資家もいると思われます。
株式投資では、感情に流されずに一定の株価で売買することが大切です。
乱高下していてもあらかじめ決めておいた株価で売ることで、確実に利益を確定できます。そして、損失が出ても一定の株価で見切りをつけて売ることで、損失を大きくしないことができるのです。

ゲームストップ株騒動は、日本でも起こり得るか

日本でもSNSの利用は普及しています。また、個人投資家はネット証券で株式投資が手軽にできるようになりました。
有名人のSNS発言は影響力があり、特定の銘柄の株式を買おうと呼びかければ応える個人投資家はいるかもしれません。

しかし、機関投資家が大きな損失をこうむるほどの騒動になるかどうか考えると、日本ではここまで大規模にならないのではないかと思われます。
大きな理由として、日本ではアメリカほど投資が身近ではないことが挙げられます。ゲームストップ株のように株価が乱高下したら利益を上げる可能性もありますが、投資は元本保証ではなく損失を出す場合もあります。
日本では、すぐに使わないお金があっても、元本保証ではない投資をするより預貯金をする人が多いため、アメリカのような騒動にまで発展しないのではないでしょうか。

また、アメリカほど貧富の差が大きくないことも挙げられると思います。
アメリカ社会では、さまざまな格差や分断が問題になっています。貧富だけではなく、人種、学歴、性別などが絡み合い、決して単純な問題ではありません。それによる怒りもまた大きいと感じます。
日本ではそこまでの格差や怒りは感じられず、そのためゲームストップ株ほどの騒動にはならいと思うのです。

ただし、SNSの呼びかけでこれほどまでに株価が動いたことも事実です。
株式投資には情報が重要。今後はSNSも含めて、幅広い情報収集が必要になりそうです。

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