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「女性向け文具」って何!? ジェンダーを一括りする文具業界の違和感。【アンコンシャスバイアスを探せ!】

  • 2021.3.16
Illustration_ Sheina Szlamka
Illustration: Sheina Szlamka

7年前、私は文具専門のライターとなった。この世界に入って初めて、文房具は男性の世界なのだと思い知らされた。女性たちの社会進出が進んだ今でこそ「女子文具」というジャンルも知られてきたが、当時のこの業界は男性優位でプロダクトも実用性のみを重視したものが大半、女性のライターは皆無に近かった。そのため、さまざまな場面で自分が女性であることを意識させられた。

たとえば、私に打診される仕事の多くは「かわいい文房具の紹介」である。「おすすめ」を紹介してほしいという依頼に、私の考える「いい」文房具を提案すると、「こういう感じじゃなくて、かわいいのをお願いします」と返される。文具に精通した私への依頼というよりも、「かわいいものが好きな女性」への依頼と考えられているようなのだ。

ピンクの一極集中。

Photo_ 123RF
School equipment on wooden backgroundPhoto: 123RF

メーカーから新作等のサンプル品が届くこともままあり、文具好きとしてはこの上なくわくわくする。しかし、いざ箱を開けてみると、高頻度でピンク色の文具が入っている。すべての女性がピンク好きとは限らないし、むしろスモーキーな渋い色味を好む女性だって少なくないはず。ピンクだけでもこんなに種類があるのかと驚かされる反面、女性=ピンクという根強い固定観念には辟易してしまう。

ピンクは書籍を出したときにもつきまとった。表紙の色や文字体にこだわった自著が刷り上がってきたときは飛び上がるほど嬉しかった。けれど、出来上がった本を確認してみると、避けていたはずのピンクが本の背の部分に入っているではないか。さらに、私のトークイベントを告知するポスターやチラシには、ピンクのみならず白のレース模様まであしらわれている。ことほど左様に、女性に対するステレオタイプが今も色濃く残っていいることに唖然とした。

「個」を尊重した社会に。

Photo_ 123RF
Man opening refrigerator door with paper sheets and magnets at home, closeupPhoto: 123RF

文房具はオフィスだけでなく、家事や育児、教育の現場にも定着しているし、すでにあるジェンダーバイアスを強化しないように執筆時は心がけている。特に知育関連の文具や冷蔵庫に貼るアイデア商品等、育児や家事に関連する記事は、女性だけが家庭と仕事を両立させているようには書かず、その現場に男性の存在も入れるようにしている。だが、幼児向けの知育文具をいくつかセレクトして紹介する企画に対する編集者からのコメントに、がっくりときた。

「女性ならではの評価が詰まったセレクト」

ごくありふれた言葉なのだが、それを読んで、性別役割分業意識の強さを感じただけでなく、「女性だから書けた記事」と思われたようで引っかかった。私は子育ての経験がないながらも、自分なりに取材や調査を重ねて書いた記事だったのに、女性という個性だけが評価されているように感じた。女性だから気がつく視点が社会に役立つのは間違いない。でも、評価をジェンダーで一括していないか、一度立ち止まって考えるのも大切だ。

文具業界のトレンドは、ファッションやビューティーの3周遅れくらいでやってくると言われている。業界に入って初めて、それが流行色やキーワードのみならずジェンダーバイアスにおいてもに同じであることを知った。それは商品のデザインや色使いもさることながら、プレスリリース、チラシの類いにまで及ぶ。日本の文房具は商品数やバリエーション、そして技術力においても世界一と自負できるからこそ、文房具からはじまるジェンダー革命を起こしていきたい。

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Text: Yoshiko Yamamoto Editor: Mina Oba

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