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事実婚はカスタマイズ。フリーランスの自分に適した結婚のカタチ[結婚の先輩に聞け!Vol.01]

  • 2021.3.15

時代やライフスタイルが刻々と変化するなか、結婚のカタチもそれに合わせて多様化している。中にはいわゆる法律婚といわれる正式な結婚制度ではなく、自分らしい結婚スタイルを確立している人もいて、そのカタチは家族であることと何ら変わりがない。当連載「結婚観を先輩に聞け!」ではそんな独自の結婚観を貫く人々を取材し、多様な幸せのあり方を考える。
今回取材したイラストレーターであり漫画家の水谷さるころさんは、その中から事実婚を選択した人のひとりだ。離婚を経験した後、事実婚という選択をした水谷さんに、そこに行き着いた経緯や結婚観の変化を訊いた。

なぜか、結婚だけ「らしくない」選択をした経験

「一般的に、結婚観は自分の親の影響を大きく受けると思います」

水谷さんがそう言うように、自分の結婚観や理想とする家庭像は幼少期から見てきた自分の親から影響を受けることが多いだろう。夫婦仲が良い家庭で育った水谷さんは、早く結婚して幸せになりたいとい言う気持ちがあったそうだ。両親がうまくいっているので、結婚に対して批判的な目を持つことがなく、「結婚というものに漠然といいイメージだけを抱いていた」とを振り返る。ところがいざ結婚してみると、これまでフリーランスのイラストレーターとしてバリバリ活躍していた仕事に支障が出るという、予想外のことが起こった。

「私の印象で4割くらいの仕事のクライアントが、結婚=仕事をやめるといいうようなムードになったんです。オファー時にも『“まだ”仕事やっていますか』のような聞かれ方をしたり、毎年呼ばれていた同業者交流会では『結婚したから飲み会には来られないよね』と言われることもありました」

当時、水谷さんは30歳でまさに仕事盛り。モチベーションを上げて、「これから人生のいろんなことを頑張りたい!」という時期であったそうだ。この頃の自分を振り返り、「ブランディングを間違えましたね。周囲の変化を体験してはじめて、世間知らずだったんだと思いました。現在や過去の結婚制度に対して何も知らないし、なんとなくのイメージで結婚してしまった。今思えば、結婚への意識の低い人こそ結婚観がアップデートされていないんじゃないかなとも感じます」と語る。

「総務省の資料を見ると90年代から共働き世帯と専業主婦世帯の数が逆転していますし、自分の価値観としても共働きが普通だと思っていたんですよ。私はフリーランスなので家で仕事をしているので、家庭的な選択をする人だと思われたんですね」

なるほど、確かに会社員なら「寿退社するか、しないか」で仕事を続けているかどうかが明白に周囲に伝わるが、フリーランスという働き方を選択している人はそこが見えづらいかもしれない。潜在的に「家にいる=家庭に入った」と思う人も多いだろう。

水谷さんの代表作である書籍『世界一周』シリーズは、世界一周をするくらい仕事に対するやる気と覚悟を示したくて受けた仕事だという。そのきっかけは前述したような、結婚を経て感じた周囲の変化への違和感。その後、紆余曲折あり結婚から3年後に離婚。このタイミングで、結婚ときちんと向き合うことになる。

「私らしい結婚ってなに?」が原点

「私は結婚したかったんじゃなくて家族が欲しかったんだということに気づきました。要は、信頼している人と関係を築きたかったんです。そして同時に結婚しても法的に認められても、信頼しあえるとは限らないこともわかりました。私はそもそも、 “自由度の高い生活”のほうが向いている人間なんです。仕事も1回も就職したことがないし、フリーランスという形態を選んでいる。なのに、結婚に関しては深く考えずに“普通の”法律婚を選んでしまった。そこがもしかしたら違うのかもしれない、私らしい結婚ってなんだろう?と考えて、猛勉強しました」

どうしてみんなが結婚するのかや、世の中の結婚生活、結婚が破綻する理由などを、ネットで調べ世の中の一般論を学んだという水谷さん。特にWEBサイト「発言小町」では、書き込みへのコメントで、リアルな声や知恵を出しあっており、かなり勉強になったそう。その中で、結婚には事実婚という選択肢があることや選択的夫婦別姓制度の存在を知るに至った。離婚から3年後の36歳の時に、事実婚をした水谷さんだが、なぜ再び結婚する道を選んだのか。

「保守的な結婚観は全く向いていないので、次はそれをみんなに分かってもらえるような自分らしい結婚をしたいと思っていました。なので、 どうしたらいい関係になれるのか、前の結婚の失敗点などをしっかり相手と話しあって事実婚という選択をしました。私たちの場合、2人ともフリーランスなので会社の手当などもなく、特に困ることがないんですね。それより私の場合は、姓を変えることで銀行口座やクレジットカードで手続きの手間がかかるのでそれを避けたかったんです」

世界の結婚制度と比べると日本の結婚はかなりハードルが低いとい言う水谷さん。

確かに、カナダ(BC州)では結婚するときに3ヶ月前に結婚許可証を手に入れて、結婚式を必ずしなければならなかったり、イタリアでは2015年まで離婚するのに3年別居をする必要がある(現在は半年に短縮された)。

それらの国と比べると、日本は結婚も離婚も書類ひとつで簡単にできる。それなのに、「戸籍が汚れる」という表現があるように、結婚が神聖化されすぎるのは「何か違うのでは?」と水谷さんは疑問を抱く。

「結婚は神聖なものであるというのは間違ってはいないとは思うのですが、実際はただの制度だと思うんです。私は離婚したとときに戸籍を神聖視するのってなんで?って思ってしまいました。制度でしかないなと。所詮、書類でのやりとりなので役割は違えど、住民票と何が違うんだよって思っちゃいます(笑)」

結婚はただの制度。どう使いこなすかが決め手

結婚を制度と捉えているからこそ、うまくその制度を利用している水谷さん。その使いこなし方は、出産の時期だけ法律婚をしたエピソードからもうかがえる。

「出産の時だけ、法律婚をした一番の理由はこどもの名前は夫の姓にしたかったからなんです。事実婚で出産すると強制的に子供は水谷になる。夫の姓に変えたい場合は、出生後に家庭裁判所に書類を提出するなど、手続きをしますが、法律婚するのは役所に自分で婚姻届と離婚届を出すだけなので楽かなと。あとは、高齢出産だったので万が一出産時に何かあった場合、残された人が大変にならないようにという配慮もありました。いろんな要素を考えてやはり出産に関しては、私達は法律婚するのがいいかなと判断しました。結果、約半年は法律婚をしていましたね」

このように合理的に制度を使いこなしている水谷さんだが、事実婚の際に特に公正証書などの書類は作っていないという。しかし、こちらもしっかり自分で勉強し考えた上で、不要だと判断したからだった。

「書類を作るのではなく、自分で勉強して作ったプランを行政書士さんに相談してこのプランが機能するかの裏取りはしています。離婚経験があるからこそわかりますが、結局は感情がこじれるんですよね。感情がこじれた時に契約書は役に立つけれど、それがあっても揉める時は揉めるんです」

自分の大切にしたい生き方との適正プランを選ぼう

法律婚と事実婚。両方の結婚のスタイルを経験したからこそ見えてくる敵性とは何なのか。水谷さんは、法律婚を「お任せ安心パック」、事実婚を「カスタマイズプラン」と定義している。

「事実婚を選ぶなら、そもそものフォーマットがなく、自分たちに合うようにカスタマイズが必要。規約や制度などをすべて理解して、いる・いらないを選択しなければならないんです。私は好奇心が強いタイプなので、そっちの方が向いていました。例えば、母子別姓はどれくらい不便なのかとか、一つひとつ身を以て体験していくのがもはや楽しいですね」

一方でこのように制度を合理的に使いこなすにはある程度、環境などの条件はある。水谷さんは、多様性に対して比較的フラットな東京都心で生活しているが、これが地域によってはまだまだ事実婚への偏見があるところも存在する。

「私達は環境や条件に恵まれていて、困ったことはないのですが、まだまだ誤解や偏見がある人もいるようです。万人におすすめしているわけではないですね。1番良いのは“選べる”こと。たくさんある選択肢の中から自分に向いている結婚をするのがベストですね」

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