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本音で語り合った結果、選んだのは一夫多妻制。西山家の結婚のカタチ[結婚の先輩に聞け!Vol.03]

  • 2021.3.15

時代やライフスタイルが刻々と変化するなか、結婚のカタチもそれに合わせて多様化している。そのなかには、正式な結婚制度ではなく自ら新しいスタイルを確立している人もいて、それは家族であることと何ら変わりがないように思える。日本では珍しい一夫多妻制を採用する西山家は、自分たちに適した幸せに生きる方法を模索した結果、今のスタイルに至ったそうだ。彼らがそこに行き着いた経緯や結婚に対する価値観とは。西山家の家長・西山嘉克さん、第一夫人であるゆかりさん、そして第二夫人の裕子さんの3人の話を訊くと、彼らの生き方にも通ずる新しい結婚観が見えてきた。

結婚していても人を好きになることはある

一夫多妻制生活を始めてから今年で8年という西山家。一般的なスタイルと一線を画す選択であるだけにメディアで話題になることも多い彼らだが、そもそも3人は最初からこのような結婚観を持っていたのか。
「いわゆる昭和なイメージの一般的な家庭で育ったので、結婚に対してもかなりノーマルでしたよ。一方で、両親のことを本音を言わない夫婦だと感じていたので、幼いながらもどこか寂しく思っていました。なので、ゆかりさんとの結婚生活では、ちゃんと本音で向き合える家庭を作りたいなと強く思う部分はありました」(嘉克さん)

「私も嘉克さんと同じで結婚観は至って普通。『結婚したら旦那さんが幸せにしてくれる!』と期待を大きく抱いたりしていましたね」(ゆかりさん)

そんな中、後に第二夫人となる裕子さんだけは、離婚歴があることから「結婚は我慢のイメージしかなかった」と語る。最初の結婚では、お互いを支配しあい、とにかく辛い日々だったそうだ。この経験もあり、二度と結婚はしたくないと思っていたという。

事の発端は嘉克さんが、自身が経営する個人事業の事務局、裕子さんを好きになってしまったことだった。とはいえ、嘉克さんはゆかりさんと結婚している身。嘉克さんはこの時を振り返り、「自分にとっては、隠れて不倫をする、ゆかりさんと別れるという選択肢はなかった。時間が立てば裕子さんへの気持ちは消えるだろうと、隠していた。しかし、次第に苦しくなり隠すという選択肢への違和感が強くなっていった。」と話す。

「このことを隠し続けていたら、自分も苦しいしゆかりさんのことも苦しませるという不安がありました。それに僕は仕事で人の目を見ながら言葉を描くというアーティスト活動をしているので、自分に誠実に生きていないと人の目が見られなくなってしまう……。とはいえ、好きという気持ちも簡単に消えないし、途方にくれて友人にそのことを相談しました」(嘉克さん)

友人から言われた言葉は「話してくれてありがとう。やっと弱さを見せてくれたね。それも人間らしさだと思うよ」。意外な返答に拍子抜けするとともに、自然と肩の荷が軽くなったという。嘉克さんはここで初めてゆかりさんに本音を話すことになる。“話す”といっても、別れる・別れないなどの解決策ではなく、今の自分の気持ちをゆかりさんへ開示するということだった。そして、できれば裕子さんに告白して、振ってもらいスッキリしたいということも告げたという。

「今でも不思議なんですけれど、本音を話してくれた嘉克さんに対して素直に『ありがとう』という言葉を言いました。でも、いきなりそんなことを言われても受け入れられませんよね。だから何十回も話をして嘉克さんと向き合う日々が始まりました」(ゆかりさん)

「ゆかりさんに対して自分の気持ちを隠したり嘘をついたりしたくなかったのは、自分の両親の影響かもしれません。自分を偽りながら夫婦をする事は、お互いにとって失礼な事なのかもしれない。そう感じていました」(嘉克さん)

最終的には「裕子さんに告白し、振ってもらえば納得がいくでしょう」とゆかりさんが折れる。それにより、嘉克さんは裕子さんに告白。ただ“告白”と言ってもこの先どうこうなりたいというものではなく、ゆかりさんとは別れないので振ってくださいというお願いだった。裕子さんも不倫がしたいわけではないので、きっぱり振ったという。

 

振られてからより深いところで自己開示をするようになる

裕子さんに振られたことをきっかけに、嘉克さんとゆかりさんは、今までしなかったいろいろな話をするように関係が変化していく。一度自己開示をしたことによって腹を割って話すことができるようになり、コミュニケーションの密度が変わった。これを裕子さんのおかげだと思った嘉克さんは、職場で裕子さんにお礼を言ったという。

「私のことをきっかけにゆかりさんとのコミュニケーションが変化したと、嘉克さんからお礼を言われました。その話を楽しそうに毎日聞かされるので、なんだかうらやましくなってきてしまって……。離婚をした時、二度と結婚はしないと思っていたのですが、2人みたいになんでも言いあえるパートナーがいてもいいなと思うようになりました。嘉克さんも自分の本音を言ったうえで前に進んでいるのなら、私も進みたいなと思ったんです」(裕子さん)

そこで裕子さんは自分を変えるために、自己開示をしようと決意。嘉克さんへの気持ちがあったことを自覚し、彼に告白。そして自分も新しいパートナーと出会うために前に進んでいくということを宣言したという。もちろん、この時点では、3人で生きることなど1ミリも考えていない。しかし、この裕子さんの告白がきっかけとなり、3人の運命の歯車が回り始めたのだ。

鳩が豆鉄砲を食らったようだったと、この時のことを話す嘉克さん。嬉しさと困惑が入り混じって複雑であり、この気持ちもそのままゆかりさんに報告したという。再び2人で自己開示を続けていった結果、埒があかず、思い切って裕子さんを呼んで3人で話すことになる。裕子さんからしたら、あの告白は自分にけりをつけるためのものだったため何のことかと驚いたそうだ。

 

腹を割って話せる関係幸せなことに気付く

仕事が終わったら集合し、腹を割って話す日々が続く。まずは自分が今どう思っているか・感じているかを開示していったという。これを1週間以上続けていると、解決策は出ていないものの、腹を割って話せる快感を覚えてきたそうだ。

「腹を割って告白した話を否定されずに聞いてもらえることってすごく幸せだなって気付いたんです。自分の本音を包み隠さず伝えて受け入れてもらうことを望んでいたし、僕は僕でいいんだと自分を肯定することができるようになりました。そう思ったら気持ちが楽になりましたね」(嘉克さん)

ここでさらに3人は結婚について考えるようになる。

「そもそも結婚は、昔の誰かが決めたルール。だからそれが万人にフィットするわけじゃないし、それが絶対的なモノだというのは不自然な事なのかもしれない。そこで突発的に、3人で生きるのもありなんじゃないかなと思いついたんです」(嘉克さん)

嘉克さんの大胆な提案に驚いたゆかりさんと裕子さん。「3人のうち誰か1人でも不幸になるならやめる。法律を学び守る」という条件のもと、3人のチャレンジがスタートした。

「とんでもない提案をしましたが(笑)、僕はごく一般的な家庭で育って大学まで行って一般常識の中で育ってきています。その感覚からしても、最初からかなり叩かれるだろうなということはわかっていました。ただ、今はそうだとしても、長い目で見たら、新しい結婚のカタチのパイオニアとして社会や人類の貢献になるんじゃないかなとも感じました。当初、そういう使命感と好奇心が、罪悪感を上回ったのかもしれませんね」(嘉克さん)

「正直、発想の転換が衝撃でした(笑)。でも、嘉克さんのワクワクしている様子がすごく楽しそうだなと思いました」(ゆかりさん)

とはいえ、いきなり3人で同居するというわけではなく、裕子さんの住むアパートへ遊びに行き3人で食事をする時間を増やしていくなど少しずつコミュニケーションの段階を踏んでいったという。そして一つひとつのアクションに対して、これはよかった・悪かったなど意見交換を欠かさなかった。

「誰も見本がいないから、成功も失敗もわからないので、一人ひとりの意見の尊重や距離すごく意識していましたね」(嘉克さん)

過去や未来でなく、今の幸せのために生きている

3人が一緒に暮らすようになるここまでの経緯を聞くだけでも、自分を理解し相手を知るためのコミュニケーションにかなり時間を費やしていることがわかる。西山家では、どんな些細なことも丁寧に受け止め話しあいをし、みんなが納得いく選択をできているように思える。そしてその本音のコミュニケーションは今日まで8年の間、毎日続いているそうだ。3人でうまくやる秘訣は一体何なのか。

「“決めつけないこと”と“相手を知ろうとすること”ですね。昨日思っていたことと、今日思っていることは変わるかもしれないから、答えを固定化しないというのは大切。あとは、自分を理解できるようになると自然と、相手との調和が取れるようになる。意外と難しいしできていないことが多いですよね」(嘉克さん)

「未来とか過去ではなく、今を大事にしている感覚が強いですね。結婚生活を続けるためではなくて、今の自分の幸せのために一緒にいます」(ゆかりさん)

「あとは所有物ではないということ。やっぱり、結婚すると、旦那や妻という立ち位置みたいなものができてしまう。そういう意味では3人でそれぞれに個が確立していること、所有しあわないのがいいなと思います」(裕子さん)

たとえば、「結婚とは何ですか」と問われたとき、人から聞いた情報や固定観念からイメージを膨らませがちだ。物事を正解か不正解かで判断してしまい、自分がどうしたいかという意思を忘れがちである。しかし、西山家のように自分と向きあうことで、本当に望む答えを導き出せるようになる。まるで実験をしているかのように、人と人が幸せに生きる方法をも模索している3人を見ると、生きる上で大切ことが見えてくる。

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