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障害のイメージをポジティブに変換。ヘラルボニーが目指す理想の世界

  • 2021.3.13
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2017年に「ダイバーシティ」という言葉が話題になって以降、人種や宗教、LGBTQや年齢などにとらわれず、多様な視点を持ってモノゴトを判断できる時代に変わりつつある。その中で、障害のある人も多様性のひとつだと彼らの可能性や才能をフックアップし、アートという付加価値を与えているのが、福祉実験ユニット「ヘラルボニー」だ。福祉とビジネスを掛け合わせたチャレンジングな挑戦をするヘラルボニー松田さんの目指す世界について、代表の松田崇弥さんに話を訊いた。

自閉症の兄の影響で立ち上がったヘラルボニー

民間企業に義務付けられる障害のある人の法定雇用率が、この2021年3月1日から0.1ポイント引き上げられ、2.3%と過去最高となった。少しずつではあるが、障害のある人が社会や企業の一端として活躍することが増えてきている。自閉症の兄を持ち、幼い頃から障害のある人と社会との関係を見てきた松田さんにその実態をうかがうと、ここ数年はよりオープンな環境に変わってきていると話す。

「『障害者』というカテゴライズも100年以上前は『白痴』という差別用語からスタートしていて、1998年から正式に『障害者』という言葉が使われるようになったので、長い目で見るとだんだんよくなってきているんです。 会社を起業してからここ2年は、SDGsなどの文脈も加速し、世の中のアップデートがより早まっているのを肌感覚で感じています」

ヘラルボニーの代表を務める松田崇弥さん。小山薫堂率いる企画会社オレンジ・アンド・パートナーズ、プランナーを経て独立。日本を変える30歳未満の30人「Forbes 30 UNDER 30 JAPAN」受賞。Harumari Inc.

「ヘラルボニー」は、全国の福祉施設とマネジメント契約を結び、障害のある方々が手がけたアートを使って、オリジナルブランド「HERALBONY」やアートプロジェクトを手掛けている。ただ障害のある人の雇用を生み出しているだけでなく、彼らが持つ感性を才能と定義し、世間が抱くイメージを大きく変容しているのが他にはない大きな魅力だ。そもそもなぜ松田さんは、障害のある人が描くアートに注目したのか。

4歳年上のお兄さんが描いた日記帳から、松田さんはインスピレーションを得たとのこと。Harumari Inc.

「これは兄の自由帳なんですが、今見返すと段落が統一されていたり、“トマト”という単語だけ英語で書くなどだいぶこだわりが詰まっていて……。他にも、日曜日の18時に絶対に『ちびまる子ちゃん』を見るなど、何かしらルーティンがある中で生きている人が多いんです。そういう毎日の決まり事が法則となってアートにも出てくるので、“障害があるから描ける世界”だとカテゴライズを強めて価値を放つことができると思いました」

障害のあるアーティストが放つ、強烈な個性とパワー。これは、価値になる・・・・・・!

松田さんがこう述べるように、障害のあるアーティストの描くアートは、ひたすら何かを揃えたりするなど本人のとてつもないこだわりから生まれる強烈な個性を放っている。モチーフやタッチに突き抜けたパワーがあり、そこに弱者のイメージは一切感じない。

「例えばこの作家ならボールペンで丸を描くのが好きで、丸の連なりが柄のように見えます。また文字と文字をつなげる作家さんなど基本的に何かを繰り返すので、非常にファブリックや柄に適した作品なんです。だから僕たちは『マリメッコ』をベンチマークにしていて、今後はファブリックメーカーのように彼らの作品をカーテンや絨毯などの柄として展開したいと思っています」

松田さんのお兄さんが幼少期に描いた「ヘラルボニー」の文字。Harumari Inc.

実は、「ヘラルボニー」という社名も松田さんのお兄さんが子どもの頃に自由帳に描いた言葉からとったもの。今でもその意味は分からないそうだが、文字の組み合わせや力強い質圧による独特のフォントが存在感を放っている。

「うちの兄を見ていても、福祉の世界ではできないことをできるように、マイナスをゼロに近づけていくことが非常に多いんですね。そうではなくて、社会側が最初から得意なところにフォーカスして、そこに可能性を生み出したり、アジャストしていくような構造が生まれていくといいなと思っています」

アートに大きな付加価値を生んだ「HERALBONY」のプロジェクト

個性的なデザインのネクタイは全てアーティストの作品を、プリントではなく、オールシルクの織りで再現したもの。ネクタイ 各24,200円(税込)Harumari Inc.

オリジナルブランド「HERALBONY」のアイテムは、デザインだけでなく、職人技を駆使した縫製やファブリックの質感、ツヤなど商品としてのクオリティが高いことに驚く。物づくりに対する誠実さとファッション性を備えていることから、最近では「トゥモローランド」をはじめとするセレクトショップやブランドとのコラボレーションも多い。そんなプロダクトのこだわりは、松田さんの話からも伝わってくる。

誰が作ったかなど抜きでも、純粋に商品として勝負できる高品質のアイテムを生み出している。アートスカーフ 各8,800円、アートハンカチ 各2,750円(税込)Harumari Inc.

「接客の際、お客様から『障害者が描いているのになんでこんなに高いの』と言われたことがありました。僕らは、”みんな同じ土俵で戦おうよ“ということではなく、障害があるからできることがあるというようにブランディングをしてもっと価値を高めていけたらと考えています。社会が彼らに依存していく新しいモデルを作っていきたいです」

事実、「HERALBONY」のプロダクトは思想や背景に惹かれて購入する人が多いという。店頭で接客もしたことがある松田さんは「アイテムを媒介にして、障害のある人の能力をポジティブに考えている会社があるということに共感していただき買っていただくことが増えました」と話す。

さらにブランドビジネスの他にも、最近スタートしたユニークな取り組みが、建設現場の仮囲いを期間限定の「ミュージアム」に仕立てた「全日本仮囲いアートミュージアム」だ。障害のあるアーティストたちが描くアート作品を「仮囲い」に展示したアイディアで、これを企業の利益につなげる仕組みができていると言う。アートはそのエリアとゆかりのあるアーティストが担当していることも多く、より親近感を感じることができる。

個性を活かし、弱さを補う社会を目指して

「僕らの仕事は、石ころを宝石にしているのではなく、埃をかぶっている石を綺麗にしたら宝石でしたというイメージです。福祉施設や障害のある人だけでプロデュースをするのはなかなか難しいと思うので、僕らが作家の「異彩」といろんな方とを繋ぐ接着剤となって、価値観を変えるような仕掛けをやっていければと思います」

松田さんがそう言うように、これからの時代は障害をひとつの個性として、お互いの得意なところを補い合っていくことができる社会が理想的である。今後の展望は、日本展開はもちろん、ゆくゆくは海外のアーティストをフックアップしこの価値観を世界に浸透させていきたいと前向きな松田さん。「ヘラルボニー」が打ち出す新たな価値観が広がることで、マイノリティに対する概念が大きく変わっていきそうだ。

一部表記に誤りがありましたので修正いたしました(3/14)

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