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なんかいい、が揃う。個性派コンビニ&カフェ「コンビニエンスストア髙橋」

  • 2021.3.5
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今や全国に5万5千店以上あるといわれるコンビニ。その品揃えは弁当や飲み物だけにとどまらず、本格スイーツにホットスナック、雑誌や日用品に至るまで何でも揃う。近年ではイートインスペースも充実してきており、私たちの日常には欠かせない存在だ。「コンビニエンスストア髙橋」は、そんなコンビニのようなオールマイティな一面を持ちながら、独自の視点で“なんかいいもの”を寄せ集めた唯一無二の個性派コンビニ&カフェである。

「コンビニエンスストア髙橋」は、都営大江戸線の練馬春日町駅からバス通りを進んだ一角にある。名前だけ聞けば、失礼ながら、昔ながらの商店のようだが、2020年11月にオープンしたばかりと実はまだ新しい。入り口の大きなガラス扉に描かれた個性的な女性の絵や手書き文字を見ても、どうやらいわゆる大手チェーンのコンビニとも、一昔前の個人商店とも違いそうだ。

ビストロのような、開放的なカフェスペース

店内は、コンビニという名からは想像できないほど開放的な空間が広がる。南国のリゾートホテルの一室のような大きなダイニングテーブルがあるかと思えば、オープンキッチンを備えたビストロ風のカウンター。さらにレジ前にはパンと焼き菓子のショーケース、ビールなどのドリンク類が入った小型冷蔵庫が並び、よく見ると物販コーナーもある。この店は本当にコンビニ……?

コンビニエンスストア髙橋を営むのは、ズバリ、髙橋さん夫妻だ。飲食店での調理経験を持つ妻のねいとさんと、国内外のベーカリーでパン作りをしてきた夫のりょうじさん。「ふたりとも飲食の経験しかないのですが、古着や雑貨、お花、音楽も大好きなので、物販もやりたくて……。絞りきれなかったんです。どれかひとつに絞ってしまうと絶対に飽きるし、かならず後々やりたいことも増える。ジャンルに囚われずに好きなものを寄せ集めてできることと考えたら、いちばんしっくり来たのがコンビニという位置付けでした」と、ねいとさん。

そこでふたりが目指したのが、“なんかいい”コンビニだ。自慢の食事とパンはもちろん、たとえばトイレットペーパーがなくなったり、急に手土産が必要になったりしたときでも、ここに来れば完結できて、なおかつ「とりあえず」ではなく「ちゃんと満足するもの」に出逢える店。「とはいえ、まだまだ物販はこれからなので、堂々と“コンビニ”といえるほど全く揃っていないのですが……。ただ、普通のコンビニと同じものを置いても仕方がないので、ものすごく厳選した貴重なものではないけど、自分たちが『なんかちょっといいな』と思ったお気に入りのものを置きたいと思っています。今はほぼカフェが占めていますが、今後はマガジンラックや無農薬の野菜、靴下などの衣料品や絆創膏とか歯磨き粉とかも置けたらいいですね」

現代の便利な“コンビニ”と、昔ながらの個人商店のハイブリッドを目指して

思い返せば、かつて街中や商店街には、個人で経営している小さな商店があった。売店とも呼べる規模のものだろう。そこには食品や酒、生活雑貨がやや雑多に並べられる中に、気まぐれで手作り和菓子があったり惣菜があったり、そもそも店主のキャラクターが立っていたりと、それぞれの店の味があったものだ。一方で今の大手コンビニには店ごとの違いこそあまりないが、本格派スイーツや焼き立てパン、淹れたてのコーヒーなどが揃い、そのクオリティの高さとラインナップの充実度には目を見張る。

そんな昔と今のコンビニの“いいとこ取り”をしながら、独自の視点で選んだものだけを集めた個性派コンビニが「コンビニエンスストア髙橋」。本格的なランチボックスや自家製天然酵母のパン、こだわりの日用品(品揃えは絶賛準備中!)も買える上、充実した“イートインスペース”では、新鮮な野菜をたっぷり使った食事ができてクラフトビールやナチュラルワインだって飲める。

そうしたコンビニと同じ顔を持ちつつも、ひとつひとつのメニューは大手のコンビニチェーンとはまったく方向性が違うのがまたおもしろい。「基本的には既製品や余計な調味料は使わず、自然のものを使って、素材を活かした調理をしています。野菜そのものが本当に美味しいので、味付けも塩とオリーブオイル、ハーブ、スパイスくらい。メニューもあまり固定していないんです。農家さんがお任せで入れてくれる野菜の種類に合わせてその都度決めています」

唯一の定番メニュー「ファラフェルとフムスとパン」。おばあちゃんから子どもまで、誰もが食べられるような味付けを心がけているという。Harumari Inc.

パンは、夫・りょうじさんが担当。実家で採れた柿や、お隣さんにもらったザボンなどで天然酵母を起こし、可能な限り在来種に近い国産小麦を使って作る滋味深い美味しさがすっかり評判だ。
「できるだけ原始的な方法で作りたくて、すべて手捏ねで、発酵はクーラーボックスで行っています。工場で大量生産するコンビニのパンとは真逆ですね(笑)」と、りょうじさん。
コンビニ同様にラインナップの入れ替えはあるが、それも気分次第。「毎日決まったものがきっちり時間どおりにすべてそろっているわけではないですが、時にはお客様のリクエストに応えたり、自分が好きなものを作ったり、自由にできるのは個人店だからこそ」

コンビニという店名がメッセージする、圧倒的な“いつでも入れる感”

既製品やメーカー品も便利で美味しい、それは紛れもない事実だ。
「わたしたちもめちゃくちゃコンビニにはお世話になっています。だから、役割分担でいいと思うんです。うちはATMなんかは絶対に置けないですしね(笑)」
今は店の中でパンが占める割合が多いが、今後はごはんもののメニューや物販を充実させ、酒販も始めたいという。まだ道半ばだが、これから少しずつコンビニらしくなりそうだ。

もし、ベーカリーやトラットリア、セレクトショップという位置づけにしてしまえば、利用する人やシーンを限定してしまっていたかもしれない。だがコンビニに行くのに、気を使う人はいない。朝ごはん用のパンとジュースを買いに行ったり、学生たちが受験勉強や部活帰りに集まったり、新聞を片手にコーヒーを飲みに行ったり。長居するもサクッと帰るも、気兼ねなく立ち寄ってみよう。これからのコンビニの進化が楽しみだ。

取材・文 : RIN

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