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岡本太郎記念館の『対峙する眼』へ。「眼。眼。眼。」編。

  • 2021.3.3
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ちいさな美術館を巡って、作品から想いを馳せて物語を綴るこちらの連載。第3回目の舞台は、岡本太郎さんがアトリエとして42年間住まい続けた、南青山の〈岡本太郎記念館〉。3月14日(日)まで開催されている企画展『対峙する眼』にお邪魔しました。

おぞましさと、心地よさと。

『月の顔(岡本太郎)』

敷地内へ一歩踏み込めば、気配を感じます。それもそのはず、ここには、ありとあらゆるところに “眼” があるのです。 木陰にじっと潜むオブジェや、気持ちよさそうに天を仰いで佇む作品たち。それらにじっと見つめられます。ここでの感覚はまるで、平日の真昼間、誰もいない温室植物園で感じる、おぞましさと心地よさによく似ています。

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「眼。眼。眼。」

『接吻(岡本太郎)』

私は今、もの凄い数の眼に見つめられている。

『餐宴(岡本太郎)』

私の一挙一動を見逃すまいと、もの凄い集中で固唾を飲んで私の方を見つめている。

蛇みたいな眼。くまが凄い眼。まつ毛が⻑い眼。潤んだ眼。コンタクトで黒目がちのチワワみたいな眼。充血した眼。目頭が切り込まれた眼。きらきらした眼。奥二重の眼。ゲームのしすぎで寄り目になった現代っ子の眼。垂れた眼…。

この無数の眼と対峙する、私の目はどんなであろうか。目が大きいと言われる。ホラーに出てくる人形の目みたいだと言われる。言いたいことなんてないのに、「言いたい事があるなら言え」と言われる目である。

中学生の時、受験の面接練習をしていたら「あなたは目力が強すぎるから、直接相手の目を見ては失礼だ」と面接官役の先生から言われた。相手のネクタイの結び目を見て話すように なった。高校生の時、部活のコーチのジッパーを閉め切った首元の金具を見て話を聞いてい たら、「相手の目を見て話を聞かないやつは帰れ」と追い出された。アルフォンス・ ミュシャの『スラブ叙事詩』に出てきそうな目をしたコーチだった。あの日から、私は人のどこを見ればいいか分からなくなった。

目がチャームポイントだねと言われる。二重で羨ましいと言われる。メイクが映える目だと言われる。私は普段メイクをしない。

そんな造形の目で私は見つめ返す。

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今回訪れたのは…〈岡本太郎記念館〉

岡本太郎さんの作品に必ず描かれているという眼 。まるで生きているような作品たちに見つめられると、それは試されているようでもあり、微笑みかけられているようでもありました。皆さんも是非、自身の “眼” で見て対峙してみてはいかがでしょうか。私はすっかり『太陽の塔』に会ってみたくなり焦がれています。

凸レンズ形の屋根をのせて作られた、ユニークな建物もお気に入り。
太郎さんのエネルギーが、今も作品から満ち溢れています。

〈岡本太郎記念館〉

東京都港区南青山6-1-19
03-3406-0801
10:00~18:00
火休
入館料650円

※『対峙する眼』の公開は、3月14日(日)までです。

photo : Yumi Hosomi

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