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中学受験ブームに流され、3年間で400万円課金! 「なのに入学先は偏差値48校」「公立でよかった」母の言えない本音

  • 2021.3.1
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“親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

中学受験ブームに流され、3年間で400万円課金! 「なのに入学先は偏差値48校」「公立でよかった」母の言えない本音の画像1
写真ACより

中学受験界では、早くも新年度が始まった。最近では、新小学4年生が塾通いをスタートさせる「適齢期」といわれている。

つまり、受験熱が高い地域であれば、小3にもなると、校内で中学受験関連の話題が普通に出てくるということだ。

「〇〇ちゃんはA塾に決めたんだって」
「B塾は定員が一杯でもう入れないらしいよ」
「私はC塾に行こうと思うから、一緒に行こうよ!」

このように、塾に関する会話が子ども同士でなされることは、特段珍しいことではない。

ある日、由美子さん(仮名)は、当時小3の娘・美沙ちゃんから、こう言われたそうだ。

「真子(仮名)ちゃんがD塾に行くことにしたんだって。『一緒に行こうよ!』って誘ってくれるから、私も行きたい!」

D塾といえば、誰もが知る中学受験専門塾。普通に考えると、真子ちゃんは中学受験をして私立中高一貫校に進学するということになる。

由美子さん夫婦は首都圏出身ながらも、夫婦ともに公立中高育ち。大学こそ私立であったが、そもそも経験がないので、中学受験を選択することがいいのか悪いのかすらも、考えたことがなかったそうだ。

美紗ちゃんの小学校では例年、学年の約3分の1ほどの児童が中学受験をするという。由美子さんにはそれが多いのか少ないのかもわからなかったもののが、ママ友の話では、公立中学では、高校受験のための内申点を取るのが大変で、しかも、肝心のその中学校の評判が芳しくない。

由美子さんは、ぼんやりと、「私立中学のほうがイジメもなくていいのかな?」くらいに思っていたという。

その後も美沙ちゃんは、「ね~? いいでしょう? 真子ちゃんがせっかく誘ってくれたんだよ! ちゃんと勉強するから、お願い!」と、必死にお願いしてきたそうだ。聞けば、由美子さん一家は、美紗ちゃんが小3の初めにこの街へ転居。当初、クラスに馴染めなかった美紗ちゃんに優しくしてくれたのが、真子ちゃんだったという。

「真子ちゃんは、唯一ともいえる美紗の仲良し。『真子ちゃんを失いたくない』っていう美紗の気持ちもわかったのでD塾に通うことを許可したんですよね……」

娘の偏差値が「45より上にいかない」、悔しくて情けなくて……

小4のうちは塾の授業も週2日、月謝も3万5,000円ほどだったので、「時間的にも金銭的にも、そこまで負担は感じなかった」という由美子さん。

「やがて5年生になり、塾の言うままオプション講座を取るようになると、その年だけで100万円近くかかってしまいました。でも、美紗の偏差値は45より上にはいきません。誘ってくれた真子ちゃんは、あれよあれよという間に最上位クラスなのに。もう、私は悔しくて、情けなくて、6年になると、美紗の成績を上げたい一心で、D塾の補習をしてくれる個別塾まで行かせました」

真子ちゃんとは小学校も塾もクラスが離れてしまったせいか、自然と疎遠になってしまったという。

由美子さんは何度も「受験をやめよう」と思ったそうだが、一度、参入してしまうと、撤退するのが難しいのが中学受験である。費やすお金も時間も膨大だけに、今さら、へたにはやめられないものなのだ。

小学校→塾→補習塾という生活で、疲れ切っていることがわかっていても、「頑張れば、成績は上がる!」と、由美子さんは美紗ちゃんを鼓舞し続けたという。

結局、美紗ちゃんが昨年挑戦した中学受験は4戦3勝。費用の面でいえば、小6の1年間だけで200万円を突破。3年間の総額で400万円は超えたという。

「幸い美紗は、進学した私立中学を気に入っています。私も、このコロナ禍で大変手厚い指導がなされていることに感謝はしているんです。でも、正直、入学から1年が過ぎようとしている今も、私の中の『残念』という悔しさは消えなくて……。『あんなにお金をかけて、偏差値48のここなら、公立でよかった』って、どうしても思っちゃうんです。美紗には絶対、言えないですけどね……」

コロナ禍も続く中学受験ブーム、底なし沼には気をつけて

由美子さんは多分、「中学受験の底なし沼」に入り込んだ状態だったのではないかと、筆者は想像する。この状態に陥ると、目先の偏差値を上げることが目的になりやすいので、「何のために中学受験をするのか」という視点が消え失せてしまう。ここが、中学受験の怖い部分でもあるのだ。

本来「中学受験」は、我が子に与えたい教育環境、我が子が伸びる学校などという視点を持って、我が家の“教育方針”をじっくりと考えた上でなされるもの。

現在は「中学受験ブーム」であり、それはコロナ禍であっても続いているが、「みんながやっているからウチも……」というような理由で、周りの空気に流されて参入してしまうと、中学受験をする意味がわからなくなることが多い。

中学受験を考えているご家庭には、そのメリット・デメリットを十分に吟味してから参入することをお勧めしたい。

鳥居りんこ(とりい・りんこ)
エッセイスト、教育・子育てアドバイザー、受験カウンセラー、介護アドバイザー。我が子と二人三脚で中学受験に挑んだ実体験をもとにした『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などで知られ、長年、中学受験の取材し続けている。その他、子育て、夫婦関係、介護など、特に女性を悩ませる問題について執筆活動を展開。

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