1. トップ
  2. 恋愛
  3. 「会えないから…」と結婚するカップル 3密で“会えない”婚活市場の今

「会えないから…」と結婚するカップル 3密で“会えない”婚活市場の今

  • 2021.2.17
新型コロナで、婚活のあり方も変化?
新型コロナで、婚活のあり方も変化?

新型コロナウイルスがまん延し、世界中が混乱しています。日本でも4月7日、安倍晋三首相による緊急事態宣言が出されました。

「密閉」「密集」「密接」の“3密”を避けるよう、国や自治体が呼び掛けていますが、お相手に会わなければ始まらないのが婚活です。そんな中で婚活市場が今、大きく変わり始めています。

お見合いのリスケが続く婚活業界

中国・武漢市から発生したといわれている新型コロナウイルスですが、年が明けた頃から瞬く間に世界中に広がっていきました。

当初、日本では、「よその国の出来事」と人ごとのように捉えていた人たちも多かったのですが、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の船内感染が報じられ、その後、芸能界での感染者も出てくるようになり、コメディアンの志村けんさんが亡くなったことで、一気に緊張感が高まっていきました。

それに伴って、婚活市場も混乱していきました。2月に入った頃から、既に日程が決まっていたお見合いの「日程再調整」を申し出る人が増えてきました。電車に乗ったり、対面で会ったりすることを避ける人が出てきたのです。お見合いは2人でするものなので、どちらか一方が延期を申し出ると、もう一方は会う気でいても、日程を再調整せざるを得ません。

「不要不急の外出は避けるように」という政府の要請が出ていましたが、吉田史也さん(37歳、仮名)は「お見合いは一生の伴侶を決める出会いなので、“不要不急の外出”ではない」と考えていました。そのため、河本佐江さん(32歳、仮名)とのお見合いは、通常通りやるつもりでいたのです。

ところが、佐江さんの相談室から、「緊急事態宣言が明けた5月以降のお見合いにしてください」という連絡が入りました。

仲人さんは、私に言いました。

「河本は看護師なので、プライベートで人と接触することはできるだけ避けるように勤務先の病院から言われているようです。また、医療現場も混乱しているので、彼女も疲労がたまっています。『コロナが落ち着いてからでないと、婚活をする余裕がない』と言っています」

確かに今、心身共に一番大変な思いをしているのは、医療従事者でしょう。このことを史也さんに告げると、彼もそれには納得し、こんなことを言いました。

「分かりました。楽しみが先に延びたと思って待っていますよ」

いつ終息するかは今のところ分かりませんが、「楽しみが先に延びた」と捉えることができる史也さんは、前向きな考え方ができる人なのでしょう。一日も早く、2人がお見合いできる日が訪れるといいなと、私も願っています。

リアルに会えないなら、オンラインでお見合いを

実際に会ってお見合いができない状況が続く中、結婚相談所業界では、テレビ会議ができる「Zoom」というアプリを使ってお見合いをすることを奨励するようになりました。

結婚相談所では個人情報を保護する観点から、登録サイトには会員番号のみが出ていて、お名前は出ていません。お見合いが成立すると、お相手に名字のみをお知らせします。お見合い後に「交際」になると、そこで初めてフルネームと連絡先の交換をするのです。

スカイプやLINEのビデオ通話は、個人のIDを交換しないとつながることができないので、お見合いには使えません。

しかし、Zoomは仲人がホストとなり、お見合い開催のミーティング設定をして、URLとパスワードを2人に送れば、個人情報を交換することなく、パソコンやスマホを見ながらお見合いができるのです。

有吉貴男さん(38歳、仮名)は佐野智美さん(32歳、仮名)とのお見合いが成立すると、智美さんの相談室からZoomでのお見合いを提案されました。そのことを告げると、貴男さんが言いました。

「画面上でお見合いするってどんな感じなんでしょうね。初めての試みなので、感覚が分かりませんが、トライしてみようと思います」

智美さんの仲人さんがホストをしてくださり、ある土曜日の午後1時より、「Zoomお見合い」が開催されました。

終えた後、貴男さんが言いました。

「最初は、画面を見ながら話がスムーズにできるのかなと思っていたんですが、話も盛り上がって、40分があっという間でした。交際希望でお願いします」

また、Zoomは背景を好きな写真や絵に変えられるので、変えてしまえば部屋の様子が映ることもありません。智美さんの背景は、熱海のパワースポットとして有名な神社でした。貴男さんもかつて、そこを訪れたことがあり、その神社のことや熱海の観光、名物品の話でひとしきり盛り上がったといいます。

お見合い後、智美さんからも交際希望が来ました。それから2週間後に、貴男さんからこんな連絡がありました。

「最初がZoomのお見合いだったので、ファーストコール以降も頻繁にZoomで話をしています。慣れてくると、これが楽しいんですよ。LINEの文字のやりとりよりも、顔が見えて生の声を聞くことができると、より身近に感じます」

今回の新型コロナ騒動で、会員の動向は本当にさまざまでした。休会を決めた人、自由に行動できないことをストレスに感じている人、業務連絡のLINEを入れても既読スルーで返信もしてこない人…そんな中でも、この状況下をどう楽しむか、そのやり方を見つけた貴男さんと智美さんは、お似合いのカップルではないでしょうか。

この2人が結婚したら、どんな事態が起こっても強く、たくましく、前向きに笑っていられる夫婦になりそうですよね。

会えないなら、家族になろう

そして最後は、結婚を決めてしまった会員男性の話です。

大谷智紀さん(40歳、仮名)は、中国人女性のチョウさん(33歳、仮名)とお見合いをし、交際に入っていました。

チョウさんが働く会社は従業員のほとんどが中国人で、住んでいるマンションも会社が一棟、社員寮として借り上げています。新型コロナ騒動の発端が中国・武漢市だったことから、会社も社員の感染には敏感になっていたようでした。3月に入って会社から、「土日はマンションから出てはいけない」という外出禁止令が出てしまいました。

智紀さんは、チョウさんと会うことができなくなってしまったのです。それまでの2人は週末、土曜日と日曜日に連続で会うようなデートを繰り返していました。智紀さんが危惧したのは、会えなくなって心が離れてしまうことでした。

「車で近くまで行くよ」と提案したのですが、「外出禁止令を破ってマンションを出て、男の人の車に乗るところを誰かに見られたら、会社をクビになってしまうかもしれません」と、チョウさんは言います。

緊急事態宣言は5月6日までとされていますが、このまま感染者が増える一方なら、解除も先延ばしになるかもしれません。いつ終息するかは、全く見通しが立たない状況です。

そんなとき、智紀さんから私にLINEが来ました。

「チョウさんに今夜、電話でプロポーズをして、受けてもらいました。今は他人だから会えない。それなら家族になれば、ずっと一緒にいられると思ったんです」

また、婚約をすることで、彼女の気持ちをしっかりとつかみたかったのでしょう。

新型コロナが生み出す、さまざまな人間模様。こんな事態は誰も経験したことがないからこそ、どう行動するか、何を発言するかで、その人の人間性が垣間見えてくるような気がします。

新型コロナのピンチは、お相手の本質を見極めるチャンスなのかもしれませんよ。

仲人・ライター 鎌田れい

元記事で読む
の記事をもっとみる