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積立貯金しすぎで積立貧乏?現在と将来にかけるお金のバランスとは

  • 2021.2.15

貯金の王道と言えば、積立貯金!毎月確実にお金を貯めることができ、堅実派の人はもちろん、なかなか貯金できない人にもおすすめの方法です。しかしながら、中には積立貯金に邁進しすぎて、積立貧乏に陥る人もいるようです。
今回は、積立貧乏になってしまった筆者知人Aさんの体験談を元に、今と将来にかけるお金のバランスについて学んでいきましょう。

▼プロフィール
Aさん(42歳)独身
職業:営業事務
月収:20万円
家賃:6万円

お得な制度をフル活用してお金をしっかり貯めたい堅実派

今回ご紹介するAさんは、40代独身女性。複数回転職し、30歳からは食品メーカーの営業事務として働いています。大学進学を機に地元を離れてからずっと一人暮らしで、実家は両親と弟家族が同居しているため、今後も帰る予定はありません。

以前は、結婚したい思いから結婚相談所やマッチングアプリなどを使って婚活し、何人かと結婚を見据えたお付き合いをしましたが、他人と暮らすよりも自分1人で気ままに暮らす方が向いていると判断。現在の目標は、お金を貯めてマンションを購入することにシフトしたそうです。

ネットでお得な情報を仕入れるのが好きで、お金は銀行に預けておくだけではなく、お得な制度を上手く利用して貯めたい堅実派。ただし、面倒なことは苦手です。マンション購入と将来を見据えて老後資金を貯めるべく、仕事と貯金に励んでいます。

貯金の王道積立貯金!取り入れたものは

とにかくお得に貯金をしたいAさん。手元にあると使ってしまうということで、すぐ引き出せる貯金ではなく、確実に貯金ができる貯金の王道、積立貯金を主に取り入れていたようです。Aさんの行っていた貯金や投資について見ていきましょう。

会社の年金・住宅の財形貯蓄で確実に貯める

会社の財形貯蓄は、給与から貯蓄分を抜いて振り込まれるというもの。貯金分は元々ないものとして生活することができるため、確実に貯蓄したい人にぴったりです。Aさんが取り入れたのは、財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄。年金貯蓄に1万円、住宅貯蓄に2万円の計3万円が、貯蓄分として手取り給与から引かれて振り込まれます。

財形年金貯蓄は、満60歳以上で受け取ることができる老後資金のための貯蓄です。一方、財形住宅貯蓄は、住宅の購入や建築、リフォームのための貯蓄。どちらも非課税となっていますが、決まった目的以外の払い出しの場合には非課税となりません。

老後に備えてiDeCo(個人型確定拠出年金)

会社には企業年金制度がなかったため、財形年金貯蓄だけでは不安だと感じたAさん。老後のためのお得な制度であるiDeCo(個人型確定拠出年金)にも加入することにしました。

iDeCoとは、自分で決めた掛け金を運用、老後の資産形成に役立てる私的年金制度です。原則として60歳まで引き出すことはできず、60歳以上で老齢給付金を受け取ることになります。

iDeCoの運用商品は金融機関によって異なりますが、基本的には元本割れの可能性のある投資信託タイプか、掛け金以上に増えない代わりに減らない元本確保タイプかを選択することになります。投資に興味があったAさんは投資信託タイプを選択。銀行員の友達に相談して、複数の商品を選びました。

iDeCoのメリットは、積み立てた金額が所得控除の対象となること。そして、運用によって利益が発生した場合、利益に対する税金はかからないことです。iDeCoは毎月の口座維持費がかかるところもありますが、維持費は金融機関によって差があり、中には無料のところもあります。Aさんは口座維持手数料のかからない金融機関を選択しました。

iDeCoの掛け金の上限は、加入者によって異なります。Aさんはサラリーマンで企業年金がないため、上限である2万3千円の掛け金でiDeCoをスタートすることにしました。

つみたてNISAにもチャレンジ

気になったものは全部取り入れたいAさん。iDeCoで投資信託についての知識がついたため、つみたてNISAにも興味が出てきました。つみたてNISAでラインナップされているのは、金融庁により長期・積立・分散投資に適していると判断された商品です。

iDeCoは60歳までしか積立ができないのに対し、つみたてNISAには年齢制限がありません。「少額から始められる」「いつでも換金できる」などのメリットがあるため、気軽にスタートできるのがメリットです。

老後資金とは別に、長い期間運用できるものがあってもいいのではと考えたAさんは、毎月2万円の掛け金でつみたてNISAを始めることにしました。

いつしか目的が貯金に…生活費を切り詰めるように
あれ…手元に残るお金が少ない?貯金の目的は何だっけ?

目的は老後とマンション購入の資金形成だったはずが、いろいろな積立貯金に手を出しているうちに、いつしか“貯金すること”が目的になっていたAさん。少しやりすぎかもしれないけれど、とりあえず将来の資金はなんとかなる、そう思っていたのですが……。

あるとき、毎月恒例になっていた給料日後の同僚との飲み会の前に、お財布に現金を補充しておこうと銀行に立ち寄り記帳すると、給料日だったはずの通帳の残高がなんと4万円ほどしかありません。それもそのはず。家賃や光熱費、保険料、クレジットカード代金といった引き落としに加え、いろいろな積立貯金が引き落とされ、現金として残ったのがたった4万円ほど、というわけだったのです。

これでは、食費や交際費、現金が必要なときやその他支払いなどで、あっという間になくなってしまいます。こうしてAさんは生活費を切り詰めるほかなく、食費はできるだけ抑える、月に1度の同期会の参加を止める、趣味のヨガ教室通いを休止するなどし、気がつけば会社と家の往復のみの生活になっていました。

ついに不安が現実に…!お金がない!!

将来のために仕方なしと考え、切り詰めた生活を送っていたAさんですが、飲み会を断ったり楽しむ同僚を見たりするのが、次第に辛くなってしまいます。極めつけは、友人の出産祝いにも困ってしまったこと。すぐ引き出せる貯金をしていなかったため、余分なお金はありません。

このときは、見かねた友人がお金を貸してくれ事なきを得たAさん。しかし、「生活費を切り詰めて貯金して、今の生活がおろそかになっているのはおかしい!」との言葉を受け、現在積立しているもののどれかを止めることを決意したのでした。

3つの積立からやめるものを検討するも…

<iDeCoは60歳から、目的外の年金・住宅の財形の引き出しは非課税…>
友人の助言に納得したAさんは、どれをやめるか検討し始めました。iDeCoは60歳からしか引き出すことはできません。年金・住宅の財形貯蓄も、目的外の引き出しは非課税とならず、今解約するのは損になるとのこと。

<つみたてNISAは今やめると損かも>
つみたてNISAは、いつでも自由に引き出すことができる商品ではありますが、あくまでも投資であるため、引き出したいときが売りどきであるかどうかは分かりません。Aさんの購入した商品を調べてみると、今解約すると損なタイミング……。Aさんは頭を抱えることとなってしまいます。

手元に残すお金と貯めるお金のバランスを再検討

悩みに悩んだAさんは仕方なく、損を覚悟でつみたてNISAをやめ、iDeCoの掛け金を5千円に変更することにし、とりあえずは積立貧乏を脱却することができました。財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄はそのまま継続し、ひとまずは生活費の確保といつでも引き出せるある程度のお金を貯めることにしたそうです。

そして、「今を楽しめないと将来お金があっても楽しめないかもしれない」と考え直し、飲み会への参加やヨガ教室も再開。こういった日々の楽しみが生活の活力になっていることを再認識するきっかけにもなりました。

Aさんの失敗は、将来への不安とお得な制度だから使わないともったいない!という考えのもと、今使うお金と貯めるお金のバランスを考えなかったこと。お金を貯めると確かに将来は楽になりますが、今をきちんと暮らすことも大事ではないでしょうか。まずは手元に残すお金を検討し、その上で貯金や投資に回すお金を検討してみてください。

王道の積立貯金もやりすぎはNG!バランスを見極めて

積立貯金は確実にお金を貯めるひとつの方法ではありますが、なんでもやりすぎはよくありません。Aさんのように将来を心配するあまり、いつの間にか現在の生活が窮屈になってしまう人も少なくないようです。

貯蓄や投資で良さそうものを見つけたときは、お得な制度だからと飛びつくのではなく、手元に残すお金と貯金や投資に回すお金のバランスをきちんと見極めて選んでくださいね。

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