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城田優「テクニック的には足りてなくても…」 ミュージカルで心に響く歌とは?

  • 2021.2.9
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ドラマティックな物語、人間のリアルな感情が、優れた音楽に乗って観客の心を時に蕩かし、時にかき立てる。ミュージカルに潜む官能性について、たぐい稀なる実力と華で日本ミュージカル界をもり立てる城田優さんが語ります。

ミュージカルが官能をくすぐるには、テクニックは必須。しかし難しいのは、どんなにうまい歌であっても、それが心に響く歌になるとは限らないということ。

「それをわかりやすく説明すると、役としての感情に寄り添えているかどうかだと思うんです。うまい歌を聴かせようという自意識が、役の気持ちよりも前に出てしまってはいけないんですよね。逆に、ミュージカルの世界だと、ごくたまにテクニック的には足りてなくても心に響く歌っていうのもあるんですよね。それは、テクニックを上回るくらいの半端ないパッションが、役としてそこに感じられるから。僕は、役として舞台に立って、そこで動いた感情の通りに演じたい人なんで、時には涙で声が詰まってしまうこともあります。でもパッケージ化された綺麗すぎる隙のない歌よりは、感情がこもった歌のほうが、お客さんに届くと思うんですよね」

なんと城田さん、役柄によって歌い方や声質なども変えるそう。

「『ロミオ&ジュリエット』のロミオのような、夢見がちなピュアな青年が歌うのと、『エリザベート』の“死”を象徴する存在であるトートでは、根底に持っているものも気持ちを吐露するレベルも違う。単純に歌詞の表現の仕方が違うんです。どんなキャラクターであっても歌で表現できるのが、技術っていうものなのかもしれません」

昨年末に主演した『NINE』で、読売演劇大賞優秀男優賞を受賞。名実ともにミュージカル界を牽引するひとりである城田さんの最新作は’18年に主演し好評を博した『ブロードウェイと銃弾』の再演。演じるチーチは、ギャングでありながら、演劇を愛するユニークなキャラクターだ。

「じつは再演って苦手なんですよ。同じ作品をやるならば、前回を上回るブラッシュアップされたものをみなさまにお届けしなきゃいけないって、勝手にプレッシャーに感じてしまって悩むんで。ただ、チーチに関しては、前回まだまだ追究できる部分があったなって不完全燃焼感が残った役。どんどん演劇にのめり込んでいく様子を、もっと魅せられるように演じられたら。そして前回より上達したタップダンスを披露したいですね」

官能を刺激する、城田優のこの役

『エリザベート』 2016年

従来のトート像とは違う独自性で多くのエリザファンの心を鷲掴み。
’96年に宝塚歌劇団での日本初演以降、四半世紀にわたり愛され続けるウィーンミュージカルの金字塔。城田さんは、ハプスブルク帝国皇后・エリザベートを愛してしまう黄泉の帝王“トート=死”を、’10年から3度演じている。死というものの甘美さと非情さとを持ち合わせたトート像は大評判を得た。
写真提供:東宝演劇部

『ブロードウェイと銃弾』 2018年

迫力ある強面ギャングの裏にある熱い演劇愛をチャーミングに。
ウディ・アレンが自身の監督した同名映画をミュージカル化。禁酒法時代のNY・ブロードウェイの劇場を舞台に、売れない劇作家・デビッドと演劇好きのギャング・チーチが、タッグを組んで作品を成功に導こうと奮闘するコメディ。城田さん演じるチーチの強面ぶりと演劇愛とのギャップが見どころ。
5月に日生劇場で再演。デビッド役はHey! Say! JUMPの髙木雄也さんが務める。全国公演も予定。
写真提供:東宝演劇部

しろた・ゆう 1985年12月26日生まれ、東京都出身。俳優の傍ら歌手としても活動。近年は自らミュージカル作品の演出も手がける。J‐POPカバーアルバム『Mariage』発売中。GWに出演映画『くれなずめ』が公開予定。

※『anan』2021年2月10日号より。写真・森山将人(TRIVAL) スタイリスト・橘 昌吾(QUI) ヘア&メイク・富岡克之(スタジオAD) 取材、文・望月リサ 撮影協力・BACKGROUNDS FACTORY

(by anan編集部)

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