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フリーランサーは要注意!確定申告で節約に失敗した女性の話

  • 2021.2.1
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個人がさまざまな勤務形態を選択できるようにと、働き方改革という取り組みが行われる中で、フリーランスとして働く人も増えています。フリーランスは柔軟な働き方ができる一方、確定申告という、忘れてはならない義務があります。

確定申告とは、1年間の所得にかかる税金を計算し、税務署に税額を報告すること。確定申告には複数の方法があり、場合によっては大きく節約できることがあるのです。
今回は、確定申告の種類を確認せず、節約に失敗した筆者知人・Kさんの体験談をご紹介します。

▼プロフィール
Kさん 33歳 女性
大学卒業
30歳からフリーランスとして働く

妊娠・出産を経て持病が悪化…整体に興味を持つ

大学在学中に妊娠が発覚したKさんは、卒業とともに結婚し出産。しかしこのとき、学生時代から患っていた腰痛が、出産の影響で悪化してしまいます。産後、育児が少し落ち着いたころから整形外科へ通院していましたが、一向に良くなりませんでした。

Kさんは、自分と同じように腰痛に悩んでいた友人に相談します。友人から整体に行き始めたら腰痛が改善したという話を聞き、藁をもつかむ思いで勧められた整体サロンへ足を運びました。すると、Kさんの体質とサロンの整体が合っていたようで、腰の痛みが治まってきたのです!そこからKさんは、定期的に整体サロンへ通うことにしました。

自分の体を治してくれた整体を仕事にしたい!しかし…

整体の素晴らしさに気づいたKさんは、腰痛をはじめとする体の痛みに悩む人たちを助けたいと考えるようになったのです。

整体に感銘を受け整体師を志す

子どもが少し成長し、自分の時間を作れるようになったKさんは、整体師を目指します。通信制の専門学校で育児と両立しながら整体の基礎を学んだことで、心の安定が身体に影響するのではと考えました。

そして、精神面に影響を与えるとされるアロマテラピーにも興味を持ったKさん。せっかく働くならば、自分が良いと思うこと全てをお客様に提供できる職業に就きたいと、整体以外についても学びを進めました。

整体師やセラピストは特別な資格が不要であるため、どのように働こうか悩んだ結果、体だけではなく心のサポートもできるような仕事として、セラピストを選択。その後、はれてセラピーサロンに就職を果たしますが、産後Kさんには家事や育児に専念してもらいたいと考えていた夫との関係が、徐々に悪くなっていってしまったのです。

憧れていたセラピストの道を突き進む

Kさんは、子どもを保育園に預けてセラピストとして働き、充実した日々を送ります。すると突然、親会社が経営不振のため、業務の規模縮小を決定。勤務先のセラピーサロンも影響を受けて閉店してしまいます。

同じグループの系列店が近隣県にはなく、今まで通りに働くことができません。Kさんはセラピーサロンでの評価や指名顧客数から、セラピストとして独立できるだけの経験を積んだと感じ、フリーランスのセラピストとして働くことを決意。

良いきっかけになったと、勤務先の閉店を前向きに捉えようとしていたところ、不仲になっていた夫がKさんの独立に猛反対します。何度も話し合いましたが、仕事を続けたいKさんと、専業主婦を望む夫の意見は平行線…。そして、お互い折り合うことができず、離婚することになったのです。

シングルマザーかつフリーランサーとして再出発

離婚が決定し、1人で子どもを育てることになったKさん。仕事も転機を迎え、やらなければならないことが山積みです。

1人で全てをこなすのは難しいと実家に助けを求める

セラピストとしての独立とシングルマザーのデビューが重なってしまったKさん。仕事と育児の両立をスムーズに行うためには、少しの間だけでも誰かの助けが必要だと考え、実家へ引っ越すことにしました。

現在の居住区とKさんの実家は比較的近い場所にあったため、以前働いていたサロンに訪れていた顧客も呼ぶことができると考えたKさん。実家に引っ越したのち、自宅サロンを開いたのでした。ちなみに、軌道に乗ったら本格的に…と思っていたため、フリーランサーになった当初は、開業届を出さなかったようです。

そして、初めての確定申告

今までは働きつつも夫の扶養に入っていたKさん。扶養内の収入であったため確定申告とは無縁の生活でしたが、フリーランスで働き収入を得たからには、毎年確定申告をして、自分で税金を納めなければいけません。

確定申告の知識が少なく、節税についても関心が薄かったKさんは、セラピーの際に使用した光熱費などは自宅の生活費用に含まれているため、経費にはできないと考えます。インターネットなどで情報を得ながら、ひとまず開業届が必須ではなく、手続きが簡単な白色申告にしよう、と悩みながらも自分の力で白色申告の作業を何とか終えたのでした。

確定申告には種類がある

実は確定申告には、白色申告と青色申告という種類があります。そして、その中の青色申告は、特別控除の金額によって2種類に分けられるため、細かく分類すると3種類の確定申告があるということになります。

全ての申告方法に記帳義務があり、最高65万円の控除がある青色申告は正規の複式簿記を作らなければなりません。一方で、白色申告と特別控除が10万円の青色申告は簡易簿記で良いことになっています。

さらに、青色申告は決算書や支払調書の提出が必要です。白色申告は収支内訳書、確定申告書、各種控除の添付書類を提出するだけで良いため、ややこしい確定申告の中でも比較的簡単な作業で済みます。

Kさんは、簡易な書類を作るだけの白色申告を選択。次年度、さらに3年目以降も変更せず白色申告のまま、確定申告を済ませてしまいます。しかし、青色申告は複雑な作業が必要なだけ、特典も多くあったことに後から気づくことになったのです…。

確定申告のメリットを調べておけば…

特別控除とは課税対象の所得額から差し引ける金額で、青色申告を行うと10万円か65万円を除いた金額に税金がかかることになり、白色申告よりも節税になります。

また、電気代やガソリン代などを経費として計上できる家事按分にも違いがあります。白色申告では業務に関連する割合が50%以上、または明確に生活費と区分ができるものだけを申告できるのですが、青色申告は、業務を行うにあたり必要と認められる費用であれば、すべての経費を計上できるのです。

さらに、青色申告を行うと、純損失の繰越し控除を受けられます。繰越し控除とは、事業で赤字が発生した場合、翌年以降3年間に出た黒字と相殺ができるというもの。

サロンを開業した初年度は赤字だったKさんも、新居地が地元であり友人が訪ねてきたことで、2年目からは大きく収入が増えました。以前の勤務先と開業したサロンが近かったこともあり、多くの顧客が通い始め、経営は黒字になったのです。

しかし、はじめから青色申告をしていれば、特別控除を受けられた上、光熱費や通信費などを全額経費にできて大きな節税になったでしょう。また、Kさんのサロンの経営状況から考えると、純損失の繰越し控除の対象にもなっているため、申告方法をじっくりと選んでいれば、かなりの節約ができたことになります。

後にこの大きな違いに気づいたKさんは、はじめに詳しく調べておけば…と後悔したのでした。

確定申告は申請方法を選ぶところから慎重に

確定申告には大変というイメージがあるため、簡単な作業で終えられる方法を選びがちです。しかし、フリーランサーにとって確定申告は重要なポイント。

フリーで働く予定がある人は、Kさんのように申告作業だけに目を向けるのではなく、数年先の所得や控除などのメリットも含めて、しっかりと考えると良いでしょう。既に確定申告の対象となっている人は、自分の申告方法を見つめ直してみてください。

文:amatsuhi
監修者:ファイナンシャルプランナー歴3年 千見寺 拓実

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