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異例のゾンビドラマに挑む意欲作「君セカ」、不穏なスタートを招いた4つの理由

  • 2021.1.31
竹内涼真さん、中条あやみさん
竹内涼真さん、中条あやみさん

1月17日にスタートしたばかりのドラマ「君と世界が終わる日に」(日本テレビ系)が序盤から賛否両論を巻き起こしています。

同作は、ゾンビに占拠された世界で生きようとする人々を描くサバイバルドラマ。「プロポーズ前日にトンネル滑落事故で閉じ込められた間宮響(竹内涼真さん)が命からがら脱出すると、すでに街は荒れ果て、ゾンビたちが大量発生していた。響はこの絶望的状況でどう生き抜いていくのか? 恋人の来美(中条あやみさん)と無事に出会えるのか?」という筋書きの作品です。

公式ホームページに「いま世界中で注目のジャンルに、日ドラが地上波ゴールデンタイム連ドラで初の本格参戦!!」と掲げられているように、ゾンビを扱ったドラマは世界的に多くても日本では希少。ゴールデンタイムでは初めてである上に、深夜帯の作品も笑いを交えたライトなものばかりだったために、思い切ったチャレンジと言えるでしょう。

ただ、ツイッターや関連記事のコメント欄を見渡すと、「ハラハラドキドキでアッという間だった」「ゾンビものは好きじゃない私でも面白かった」などの肯定的な声があった一方で、否定的な声も目立っています。

否定的な声が思いのほか目につくのは「もう見ない」というドラマを見た人だけでなく、「一度も見ていない」という人の声が混在しているから。「時間もお金も手間もかかる」と言われるゾンビドラマは間違いなく力作であるにもかかわらず、なぜ、序盤の段階で厳しい声が飛んでいるのでしょうか。その理由と浮上のきっかけを探っていきます。

海外ドラマと「Hulu共同」のスケール感

まず、当作を見た上で上がっている否定的な声の多くは、ゾンビドラマが好きな人によるもの。

「ゾンビが弱くて怖くないし、『ウォーキング・デッド』と比べるとチープ」「グロテスクな描写が物足りない。地上波のゴールデンではこれくらいが限界なのかな」「ゾンビが発生して増えていく過程が重要な見どころの一つなのにそこを描いていない」「ラブストーリーが長すぎて、せっかくの設定がもったいない」などと、正統派のゾンビドラマだからこそのシビアな声が上がっていました。

一方、見ていない人は「また日テレのHulu誘導だから見ない」「コロナ禍の今、『感染症でゾンビになる』という設定は許せない」「阪神・淡路大震災が起きた日に『世界が終わる』という作品をスタートさせたのはひどい」などの声を上げていました。

当初から、「日本テレビ×Hulu共同製作ドラマ」であることを掲げ、公式ホームページの「イントロ」には「Huluとのタッグだからこそ出来る、これまでの地上波連続ドラマの域を超えたスケールで描かれる“#噛まれたら終わり”のゾンビサバイバル!!」と書かれています。つまり、「Huluとの共同製作だから、スケールを大きくできるし、思い切った描写もできる」と言いたいのでしょう。

ただ、それでも老若男女の目に触れる地上波のゴールデンタイムでは、グロテスクな描写に限界があり、それがゾンビドラマ好きに物足りなさを感じさせているようなのです。その意味では、日本テレビで放送されるSeason1(全10話)は一般向けで、表現の制限が少ないHuluで3月から配信されるSeason2(全6話)がゾンビドラマ好きに向けたものになるのかもしれません。

今後、視聴者に「Huluの月額料金を払って見るほどの価値がある」と思わせるためには、Season1の評判が極めて重要。1月31日放送の第3話では、夜ごと凶暴化するゾンビに加えて、日本刀を手にした謎の集団が現れ、警官である等々力(笠松将さん)に「銃を渡せ」と迫るなど、新たな展開も予定されていますが、より予測不能かつダイナミックな展開が求められていくでしょう。

竹内涼真さん、中条あやみさんをどう輝かせるか

では、「海外ドラマとの比較」「Huluと連動させた2部構成」「コロナ禍での感染症」「第1話が震災の日だった」という4つの逆風をどうはねのけていけばいいのでしょうか。

「海外ドラマとの比較」は、日本オリジナルのディテールを重ねていけば徐々にポジティブな声が増えていくでしょう。ここまでの2話では「走るゾンビ」が話題になりましたが、これと同等以上のインパクトを盛り込み、その中に怖さを感じさせていきたいところです。

次に「Huluと連動させた2部構成」は「地上波のSeason1だけで完結する」「HuluのSeason2を見ない人も楽しめる」ことをもっとはっきりアナウンスすべきでしょう。さらに、「コロナ禍での感染症」「第1話が震災の日だった」は、いかに脚本・演出で希望や絆を感じさせていくかが鍵を握っています。

肯定的な声の中には、竹内涼真さんと中条あやみさんを目当てに見ている人も多いだけに、2人の恋模様だけでなく、ゾンビとのアクションを含めて、過酷なサバイバルや活躍のシーンを増やすことが重要。2人が魅力的なキャラクターになるほど肯定的な声は増え、「お金を払ってでもHuluのSeason2を見たい」という人が増えていくでしょう。

コラムニスト、テレビ解説者 木村隆志

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