1. トップ
  2. ライフスタイル
  3. 住宅ローン減税延長へ!しくみと変更点、得する条件をチェック

住宅ローン減税延長へ!しくみと変更点、得する条件をチェック

  • 2021.1.25

2020年の新型コロナウイルスの問題は、私たちの暮らし方や働き方を見直すきっかけになりました。テレワークが進み在宅での仕事が増えると、今までの住まいでは手狭だと感じる人も多いのではないでしょうか。これから住宅を購入しようとするなら、減税になるしくみを使って、住宅ローンを上手に返済しましょう。

今回はそもそも住宅ローン減税とは何なのか、今回の見直しで何か変わるのかを中心に住宅購入にあたって検討すべき視点を考えていきます。

住宅ローン減税の要件と基本的な仕組み

住宅ローン減税とは、一定の要件を満たす住宅ローンを組んで購入したり、増改築を行ったりした場合に住宅ローンの残高に応じて支払った所得税や住民税の一部が戻ってくる制度です。確定申告で手続きすると、住宅ローンの年末残高の1%にあたる金額を、原則10年間税金から差し引くことができます。

また特例措置として、個人が家屋について消費税の税率10%で取得した場合で、一定期間(2021年9月末または11月末まで)に契約し、2022年12月末までに入居した際は住宅ローン減税が13年間に延長されます。

住宅ローン減税が受けられる主な要件として

・自ら居住すること
・新築や購入してから6か月以内に住むこと
・住宅の床面積が50㎡以上であること(改正により一部緩和)
・控除を受ける年の合計所得金額が3000万円以下であること(改正により一部緩和)
・返済期間が10年以上の住宅ローン等の借入れがあること
・既存住宅の場合、耐震性能を有していること
・5年間に居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得課税の特例などを受けていないこと

などをすべて満たす必要があります。

この減税を受けるためには、一定の書類を添付して確定申告を行うことが必要です。会社員などの給与所得だけの人は、2年目以降は会社の年末調整で手続きが済みます。

住宅ローン減税のしくみ

住宅ローン減税は、住宅ローン年末残高をベースにして計算されます。新築の場合、一般住宅では4000万円が限度額になります。認定長期優良住宅・認定低炭素住宅では、一般住宅より1000万円上乗せされて5000万円が上限になっています。

たとえば新築の一般住宅を取得した場合なら、
4000万円×1%=40万円
が年間の最大の控除額になります。

減税額は1~10年目の10年間で最大400万円、拡充される特例では11~13年目の3年間で最大80万円が戻ってくる計算になります。

住宅ローン減税の仕組み

表:筆者作成

ただし、そのまま税金が戻ってくるとは限りません。まず減税は基本的に1年間に支払う税金のうち所得税で行います。もし、所得税から引ききれなかった額があれば、翌年の住民税から差し引きます。しかし、住民税には制約があり前年課税所得の7%、上限13万6500円までとなっています。この結果、住宅ローンの年末残高から計算した40万円より少ない減税額しか受けられない場合があります。

所得税の控除イメージ
所得税の控除イメージ

表:筆者作成

所得税と住民税の控除のイメージ
所得税と住民税の控除のイメージ

表:筆者作成

実際の住宅ローン減税の計算は、収入の中から給与所得控除や社会保険料や所得控除になる扶養控除、生命保険料控除などを差し引いた金額がベースになるので、同じ収入の人でも家庭の状況によって、減税になる金額は変わってきます。

2021年税制改正で住宅ローン減税はどうなった?

2021年の税制改正では、住宅ローン減税特例が期間延長、対象床面積が40㎡以上に拡充されることになりました。

2019年に行われた消費税増税の影響を緩和するために、消費税10%適用の住宅を購入し、2020年末までに居住した場合に減税される期間が3年延長され13年間になりました。しかし新型コロナの感染拡大の影響により入居が遅れたケース(コロナ特例)では、2021年末までの入居まで延長するとしていました。

今回の2021年度税制改正では、落ち込んだ経済の回復を目的として、一定期間に契約を終え2022年末までに入居すれば住宅ローン減税特例の対象とします。具体的には、注文住宅は2021年9月末まで、分譲住宅や既存住宅は2021年11月末までの契約になります。この特例の延長の場合には、コロナの影響による入居遅延の証明は不要になっています。そのためコロナの影響がない新規の住宅取得者まで対象が広がることになります。

住宅ローン減税契約期限と入居期限

表:筆者作成

さらに条件緩和の動きもありました。従来住宅減税の対象となる床面積の要件が「50㎡以上」から「40㎡以上」に緩和されました。

これは単身や少人数の世帯が増えていることや、若い世代では比較的小型のマンションの需要が高まっていることなどによるものです。業界や国土交通省などからも小規模世帯に対する支援を要望しており、やっと実現した形です。
なお、床面積が40㎡以上50㎡未満とする住宅取得の場合には、その年の合計所得が1000万円以下の人に限られています。

2021年税制改正でどんな人が得をする?

この改正では、住宅購入を迷っていた人、これから住宅購入を検討しようという人には特例の延長は朗報です。

住宅購入には、多額の資金が必要です。消費税が2%増税されると住宅は高額なので、3000万円なら60万円、4000万円なら80万円もの負担が増えます。これが消費税増税前の前の水準で購入できるとしたら、とても有利です。
当初この消費税増税の緩和策は、2020年末までの予定でした。しかし、住宅ローン減税特例が延長されたことにより、コロナ禍の影響で住宅購入に迷っていたり、悩んでいたりして購入に踏み切れないでいた人にとっては、税金の還付を受ければ増税前の価格で建物を購入するチャンスが再度巡ってきました。

特に住宅ローン減税の要件である床面積の緩和の影響は、コンパクトな生活を望む人や単身、夫婦だけなど小規模な住宅を購入したいと思っていた人には、恩恵が大きいでしょう。床面積が小さい1LDK程度の住宅には、今まで住宅ローン減税の適用がなかったので、この改正を機会に住宅ローンを利用して小規模な住宅を購入しようという動きが出てくると思われます。

総務省統計局「地方、世帯員数別世帯分布2020年1月分」※1によれば、世帯の人数では単身が一番多く34.4%、次いで2人が29.6%、3人が16.8%と少人数の家庭が多いことがわかります。少人数の世帯の場合、広い住宅を必要としない人もいます。

かつては賃貸物件に住んでいて家族が増えて手狭になり、住宅を購入するケースが主流を占めてしましたが、現在では少子高齢化で子どもの数も減っていますし、結婚しない未婚の期間も長くなっています。こうした世帯の人数が少ない場合には、賃貸住宅に住むケースが多いのですが、低金利の住宅ローンを利用して住宅を購入すれば、家賃並みのローン返済で済むかもしれません。
※1:https://www.stat.go.jp/data/kakei/setai_bunpu.html

今後は控除率「1%ルール」の変更もある?

今回の2021年税制改正では見送られましたが、隠れた論点として住宅ローン減税の控除率が会計検査院から問題視※2されています。会計検査院は、国や地方自治体が税金を無駄遣いしていないかチェックする役割を担っています。さて、何が問題なのでしょうか。

会計検査院は、住宅ローン減税の控除率の「1%」が妥当かどうかに目をつけました。2019年11月の決算検査報告で関係各省に、この控除率1%が国民の納得できる必要最小限のものになっているかなどの検証を行うように指摘しています。

会計検査院の調査※3では、2017年に住宅ローン控除の適用を始めた人のうち、借入金利が1%以下の人が78.1%を占めていました。

住宅ローン減税は、もともと右肩上がりの高金利の時代に、住宅ローンの金利負担を軽減するために始まったものです。たとえば5%の金利で住宅ローンを借りていて、負担軽減のために1%税金を戻すというのなら何の問題も生じません。

しかし、このところの超低金利が続く中にあっては、変動金利で0.5%前後という金融機関も多くあります。ですから1%以下の金利で住宅ローンを組んで、住宅ローン減税で1%税金が戻ってくるという逆ザヤが生じています。つまり、住宅ローンを組むことによって、儲かるしくみになっているのはおかしいと指摘したのです。中には逆ザヤ目的で住宅ローンを組む必要がない人までローンを組む状況も見受けられ、繰り上げ返済を抑制する動機づけにもなっているというのです。

これを受けて2021年度税制大綱では、控除率について2022年度税制改正で見直す予定としています。今後は住宅ローン残高の1%という控除率を縮小するかどうかも議論され、ローン残高の1%か支払利息額のいずれか少ない方にするなどの見直しが予想されます。ただし、1%の控除率の引き下げは、すでに住宅ローン控除を利用している人には適用しない見通しです。
※2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64445990Q0A930C2EE8000
※3:https://www.jbaudit.go.jp/report/new/characteristic30/fy30_kanshin_ch04_p1.html

住宅ローン減税と今後の動向

2021年税制改正の後押しを受けて、今まで住宅ローン減税の対象にならなかった床面積が40㎡以上50㎡未満の小規模な住宅の価格には「減税プレミア」がつくかもしれないと話す業者もいます。需要が増えるため、多少値段を高めにしても成約に結び付くという目論見のようです。

さらに住宅ローン減税の控除率1%についても、減税による控除額が支払利息を上回る状況が是正される可能性が大きいので、13年間1%の控除が受けられるのは2021年だけになりそうです。こうした背景から不動産業界では、「1%の控除と13年間の減税」が営業トークに用いられるのではないでしょうか。

税制改正を受け、今年を目標に住宅購入を検討する人は少なくないでしょう。ただし、持ち家の価格や賃貸住宅の賃料は高止まりの傾向にあるため、資金計画を慎重に立てないと収支が狂ってしまう可能性があります。特に首都圏のマンションは新築販売件数、中古成約件数とも回復し、価格も高値圏にあります。需要の強さから好立地で人気のエリアは、高止まりが当面続くと予想されています。

減税制度の恩恵を受けるべく2021年の9月または11月までに何が何でも契約を…と考えていると、状況の変化に対応できず、住宅ローンを無理なく返せない状態に陥るかもしれません。持家、賃貸住宅のどちらに住んでも老後資金は必要になりますし、子育て世代なら教育費もかかります。それには将来においても毎月一定額の貯蓄ができる程度の家計であるのか、物件選びには将来のシミュレーションも欠かせません。

また住宅の購入にあたって価格以外に注意したいのが、将来的な資産価値です。老後は自宅を売却して介護施設へ入居することも多くなってきています。こうした観点から駅からの距離、利便性、行政のサービス、災害の危険度などの多方面からのアプローチを忘れないようにしましょう。

執筆者:ファイナンシャルプランナー(AFP) 池田 幸代

元記事で読む
の記事をもっとみる