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柔道家・福見友子さん 2度勝ったYAWARAちゃんに「ワクワクさせられ、気持ちを引き立たせられました」

  • 2021.1.23
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高校2年で田村亮子さんに勝利 見失った自分

——高校2年生だった2002年、当時、65連勝中だったYAWARAちゃんこと田村(現・谷)亮子さんを破り、一躍、時の人となりました。あれから19年になります。

福見友子さん(以下、福見): 山あり谷ありの柔道人生でしたけど、私にしか経験できないようなことがたくさんあったと思います。やっぱり、柔道界を代表するスーパースターの選手と大舞台(全日本選抜体重別選手権48kg級)の初戦で試合をして、まさかの勝利をすることができた。その舞台では次の準決勝で負けてしまいましたが、周囲の盛り上がりと、世間の注目度は一変。自分の心をどこに置いたらいいか、わからないような状況でした。高校2年生だから仕方がないとはいえ、自分を見失ってしまった。

——その後、しばらく同年代の選手にも負けるような不本意な試合が続きました。そして07年、結婚・出産を経た谷さんに再び勝利。日本柔道界のレジェンドに二度勝った日本人選手は福見さんだけです。

福見: 一度目の勝利のあと、高校の監督とゼロから自分の柔道をつくり直し、筑波大に進学。その中で柔道への取り組みが変わっていったと思います。そして、復活に向けた兆しが見えた時、目標としたのが07年の全日本選抜体重別選手権でした。

谷さんだけでなく、ライバルだった中村美里選手(08年北京、16年リオ大会の52㎏級銅メダリスト)も当時は48kg級にいましたからね。目標を立て、取り組みを変え、自分を取り戻して、自分の柔道をつくり直して、「日本一になりたい」という一心で畳にあがり、決勝で谷さんに勝ち、それを達成した。谷さんに勝った喜びよりも、その充実感が上回りました。

朝日新聞telling,(テリング)

初の五輪はロンドン「金メダル」だけを求めていたが・・・

——〝YAWARAちゃんに二度勝った柔道家〟としてばかり注目されたことに抵抗はありませんでしたか。

福見: 福見友子そのものを話題にしてもらえた方が嬉しいという思いがあった一方、私は、谷さんのおかげで今の立場があると感じています。谷さんとは現役時代に5回戦って、3回は負けているんです。常にオーラみたいなのは感じていましたね(笑)。谷さんはそれまでの柔道人生で積み上げてきた経験を、自分の柔道に取り込んでいて、自分の形というものがあって……どうやったら倒せるのだろうかとワクワクさせられるというか、私の気持ちを引き立たせてくれるというか。そんな柔道家は谷さんだけでした。

——谷さんの引退後、初の五輪切符を手にし、12年のロンドン五輪へ。柔道競技の初日に行われる女子48㎏級に出場し、残念ながら準決勝、3位決定戦と2連敗で5位という結果に終わりました。

福見: あの年は、最後の代表選考会の全日本選抜体重別が5月で、代表決定から五輪本番まで2ヶ月ほどでした。正直、代表決定からの日々をほとんど覚えていないぐらいあっという間。五輪本番では、金メダルだけを求めていましたが、振り返ると、それが敗因だったのかな。

朝日新聞telling,(テリング)

ロシアでの気づき「異なる柔道の世界があり、ハッと」

どのように五輪に立ち向かい、いかにして勝利し、五輪後(引退後)にどんな人生を歩むのか――。そういうことに目を向けず、金メダルのことだけしか考えていなかった。メダルが獲得できなかった瞬間は、「ただただ終わってしまったな」という感情しか残らなかった。「悔いが残らないようにやりきりたい」との思いで、すべてに全力で取り組みましたが、準備という面でまだまだ足りなかったと思いました。

——“集大成”と位置づけた五輪でしたが、終了後、すぐには引退を決断されませんでした。

福見: 負けたまま、悔いが残ったまま引退することに対しての抵抗がありました。
次のステージに向かうきっかけは、海外での指導経験。ロンドン五輪で男子の3階級で金メダルを獲得して大躍進したロシアチームが、女子の強化にも力を入れたいと。そこで私にアシスタントコーチとしてお声がけいただきました。

実際に足を運ぶと、女子の選手だけでなく、男子の金メダリストであっても、日本柔道の考え方や技術を知ろうと熱心に質問してくる。とっても柔道が好きなことが伝わってきたし、自分が強くなるために謙虚な姿勢で私と接してきた。

異なる柔道の世界があり、ハッとさせられた気分でした。日本の価値観にとらわれない柔道の形を伝えていきたいと思いましたね。

朝日新聞telling,(テリング)

——引退発表は13年4月でした。

福見: (最初に注目を浴びた02年から)時間はかかってしまいましたけど、五輪に日の丸を背負って出場することができた。今振り返れば、充実した柔道人生だったと思います。

●福見友子(ふくみ・ともこ)さんのプロフィール
1985年、茨城県土浦市生まれ。8歳から柔道を始め、土浦日大高、筑波大、同大学院、了徳寺学園職員。48kg級で活躍し、高校2年で無敗の田村亮子選手(当時)を破り、注目される。2012年のロンドン五輪に48kg級に出場し、5位入賞。現在はJR東日本女子柔道部ヘッドコーチと全日本女子代表チームのコーチを務める。

■岡田晃奈のプロフィール
1989年東京生まれ、神奈川育ち。写真学校卒業後、出版社カメラマンとして勤務。現在フリーランス。

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