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個性派クリエイターたちの秘密基地。長屋型シェアスペース 「レインボー倉庫」池尻大橋

  • 2021.1.22
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新しい年を迎え、働き方の多様化がますます加速する中で、拠点の形にも変化が起きている。得意分野や好きなことを武器に、自由に生きたいと考える大人たちが今注目するのが、複合的シェアスペース「レインボー倉庫」だ。アトリエ、工房、オフィス、カフェなど、多様な目的で利用する個性派クリエイターが集まる「大人の秘密基地」である。

「レインボー倉庫」があるのは、池尻大橋の住宅街に建つ築50年以上になるマンションの地下1階。以前は食品工場だったというそこは、最新の設備を充実させたコワーキングスペースとは一線を画す、文字通りアンダーグラウンドな世界だった。

近頃は自分の好きなことを極めたいと企業勤めから飛び出す人も少なくない。しかしその一方で、「店舗を持ちたい」「工房やアトリエが欲しい」と思っても、条件が厳しく不動産を借りられなかったり膨大な初期費用がかかったりと、高い壁が立ちはだかるのが現実だ。レインボー倉庫は、そんな未来あるクリエイターたちに拠点として使える場所をと、2011年に横浜でスタートし、2013年に池尻大橋にオープン。ここは、色とりどりの才能を秘めた大人が集まる場所なのだ。

倉庫内には共有スペースと、間仕切り壁で区切られた大小16の占有スペースがあり、入居者たちはそれぞれそのひとつを自分の拠点として利用している。一般的なシェアオフィスのように利用可能時間に制限はなく、24時間365日いつでも利用できるうえ、壁に色を塗る、板を張る、絵を描く、棚を造りつけるなど、内装も自由にカスタマイズが可能。事務仕事をするオフィスとしてクローズドで利用するのはもちろん、作画や作品づくりの作業場、店舗やギャラリーとして一般客に開放するなど、入居者次第でいかようにも使うことができる。実際、“店”として利用している入居者も多い。

もうひとつの大きな特徴が、天井がすべてつながっており、占有スペースの中でも常に周りの音や人の気配を感じられることだ。いわば、江戸時代の長屋スタイル。ひとつの占有スペースにこもっていても「近くに誰かがそばにいる」という感覚は、不思議な安心感と一体感を与える。入居者同士はもちろん、客を紹介し合ったり客同士が会話を交わしたりと、倉庫に集まった人の中で自然と交流が始まるという。

ここに集まるのは、自分の個性を存分に発揮し、好きなことを楽しもうとする生き生きとしたクリエイターたちだ。だからこそ、個性豊かな“集合”となり、客として集まってくる人たちにとっても魅力的な場所となっている。入居しているおもしろいクリエイターたちを紹介しよう。

楽になるカイロプラクティック

2018年からここをプライベートサロンとして利用するのは、女性カイロプラクターの加藤佳子さん。シェアスペースでカイロプラクティックとは一見ユニークに思えるが、客と施術士が1対1で行うというカイロの特性上、完全個室での施術は、施術をする側である加藤さんにとっても不安があったという。「見知らぬ誰かと個室で2人きりなることに抵抗もあるでしょう。でもレインボー倉庫は常に人の気配がするので、誰かが周りにいるという安心感があります」と話す。内装は自身でピンクにアレンジし、落ち着く雰囲気に。夜は21:00まで営業しているので、仕事帰りにもおすすめだ。
(営業時間:平日 11:00~21:00 土・日・祝 10:00~20:00 ※予約制)
HOTPEPPERBeauty

zen wa zen

「zen wa zen」は、中医学をベースにした薬膳茶ショップだ。カイロプラクターの加藤さんの元同僚が始めた。「カイロプラクティックの施術とあわせて、体の中からのケアも大切」と、生薬をオリジナルで調合し、「むくみ」「眼精疲労」「免疫力」など、さまざまな目的別の薬膳茶を販売している。「お店はひとりで営業していますが、ほかの入居者さんと話をしたり、お客様を紹介しあったりして、みんながいるから楽しく仕事ができています」と、店主の小林さん。ティーパックのほかに、「薬膳ぐらのーら」の販売も。
(営業時間:金曜 13:00〜17:30 土・日曜 12:00〜17:30)
Instagram

B.H.R COFFEE & FLOWERS

毎朝早くから地元客で賑わうのは、自家焙煎スペシャルティコーヒーとフラワーショップ「B.H.R COFFEE & FLOWERS」。「特別なときだけでなく、花と近い生活を送ってほしい」と、暮らしに身近な存在であるコーヒーと花の販売を始めた。日常の暮らしに根付くという面でも、住宅地にあるこの場所は魅力的だという。月々1,500円で、1日1本花を持って帰れるサブスクリプションサービスを行っており、美味しいコーヒーと花で毎日癒やされに来る近隣住民も多い。コーヒーの焙煎やハンドドリップもこの場所で行っている。ペットの散歩や通勤ルートに加えてみてはいかがだろう。
(営業時間:平日 7:30〜18:00 土・日・祝 8:30〜18:00 / 定休日 火曜)
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Wanders

完全クローズドで使う入居者もいる。WEBページの制作やディレクションを行う小林さんは、オフィスとして利用して約5年になるという。部屋の中には仕事用のPCのほかに、バイクのエンジンが。「仕事場兼趣味の部屋です。一般的なノマドカフェと違ってプライベートはしっかり保たれつつ、いろんな人と関われるのがおもしろいですね。入居者のWEBページを制作することもありますし、息抜きや仕事終わりにはよく共有スペースに集まってみんなで話をしています」。
HP

Maison PHOTOGRAPHICA

写真家の金森玲奈さんは、アトリエとして活用している。写真雑貨の制作を行うことはもちろん、ワークショップや企画展を開き、客を招き入れることも。クリエイターにとって、拠点とする場所には、自身の感性や作品のイメージとの相性も重要だ。「シンプルだけどレトロな雰囲気もあるので、とても気に入っています」と、金森さん。入居者の作品や商品の撮影も手がけるなど、倉庫内でのコラボレーションが盛んなのもこの場所の魅力のひとつだ。
HP

16(Sixteen)

同じく空間が決め手で入居したというのが、セレクトショップ「16(Sixteen)」。ドキドキしながら入って行くアンダーグラウンドさ欲しかったと、倉庫の一番奥のスペースで、国内外のアーティスト関連のアパレルや本、アート作品と、スケートボードギアなどを販売している。コンセプトは「カルチャーの交差点」。マニアだけが楽しむものではなく、「見た目がかっこいい」「なんとなく惹かれる」など、Tシャツを選ぶような感覚で本やアート作品も手に取ってほしいという。夕暮れを過ぎるとスケートボードを手にした少年たちが集まり始め、情報交換の場としての役割も果たす。営業は夕方以降。渋谷や三軒茶屋で働く人も、仕事の後に立ち寄れる。
(営業時間:火〜金曜 16:00〜22:00 土 16:00〜20:00 /定休日 日・月曜)
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華々しい流行りの最新スポットもいいが、時にはアンダーグラウンドな大人の秘密基地へ足を踏み入れてみよう。レインボー倉庫には、繁華街の大型商業施設ではけっして出逢えない個性派クリエイターたちが待っている。

取材・文 山本愛理

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