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パンクコントバンド「グループ魂」解散直前緊急取材「また歌いますよ! 」

  • 2021.1.20
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【音楽通信】第67回目に登場するのは、結成25周年を迎えてもなお異彩を放ち続けている、破壊(阿部サダヲ/Vo)、暴動(宮藤官九郎/G)、バイト君(村杉蝉之介/大道具)ら、俳優が所属する無敵のパンクコントバンド、グループ魂!

【音楽通信】vol.67

25年前もいまも気持ちは変わっていない

写真左から、バイト君(村杉蝉之介/Cho)、港カヲル(皆川猿時/MC)、破壊(阿部サダヲ/Vo)。

1995年に破壊(阿部サダヲ/Vo)さん、暴動(宮藤官九郎/G)さん、バイト君(村杉蝉之介/Cho)の3人で結成された後、小園(小園竜一/B)さん、港カヲル(皆川猿時/MC)さん、石鹸(三宅弘城/Dr)さん、遅刻(富澤タク/G)さんの4人が加入して7人編成となりました。

2002年にメジャーデビューし、「NHK紅白歌合戦」に出場。2011年には初の日本武道館ワンマンライブを実施するなど、大人計画に所属するひっぱりだこの俳優陣を擁しながらも、オリジナリティあふれる楽曲とパフォーマンスで、音楽活動でも人気を博しています。

そんなグループ魂が、2020年に結成25周年を迎え、12月23日に『神々のアルバム』をリリース。そして12月30日に、電撃解散と2022年の再結成ライブを暴動(宮藤官九郎/G)さんがグループ魂のYouTube Live生配信中に発表し、世間を驚かせました(なかには知らされていなかったメンバーも)。

グループ魂としての、解散直前の貴重な取材となった今回。バンドを代表して、破壊(阿部サダヲ/Vo 以降、破壊)さん、バイト君(村杉蝉之介/Cho 以降、バイト君)、港カヲル(皆川猿時/MC 以降、港)さんの3人に、お話をうかがいました。

破壊(阿部サダヲ/Vo)。1970年4月23日、千葉県生まれ。

ーーananwebの読者の方には、どちらかというと「グループ魂」としてよりも、みなさんを役者さんとして認識している方が多いかもしれませんので、あらためてバンドの成り立ちから教えてください。

破壊 僕たちが役者以外に、バンドをやっていることを知らない人も増えているかもしれないね。

確かに、若い人とかね。

破壊 グループ魂はもともとコントをやっていたんです。僕と暴動さんとバイト君の3人で結成して、バンドの付き人をしている「ローディーコント」のようなところから始まって。そこからだんだん「バンドっぽくしていこうか」と話し合って、ライブをする機会が増えていったんです。そして後になって、港カヲルさんがMCとして入ってきて、年月を経ていまの7人になりました。

もともとメンバーそれぞれに細かい設定があったんですよ。僕は「浅草の芸人」という設定で、必ず愛している人が死んでいくという(笑)。「その人に捧げる一発ギャグをやる」という設定があったんですが、だんだんとグループ魂専属のMCというポジションになっていきました。

ーーコントグループの「グループ魂」から、いまのバンドとしての音楽活動にシフトしていったのですね。

破壊 そうです。

バイト君 名前も「パンクっぽい名前」を意識しているので、「破壊」もそうですし、僕の「バイト君」も(笑)。

破壊 実は結成当初にはもっとパンクっぽい名前のメンバーもいて。「狂犬」とか(笑)。

「戦争」とか、「必殺」とかね。

破壊 だんだんと「遅刻」か、「石鹸」あたりからおかしくなってきたね(笑)。

バイト君 最初の頃は、コントで渾身のギャグをやって倒れて、いまはいなくなっちゃったメンバーがマントを持ってきてかぶせるという。(アメリカのソウルシンガー)ジェームス・ブラウンが、ショーをしていてステージで力尽きて倒れてマントをかけられるという有名なパフォーマンスがあるんですが、そんな感じのことを僕らもやっていて。

港カヲル(皆川猿時/MC)。1971年2月1日、福島県生まれ。バンドでは永遠の「46歳」という設定も。

ーーコントから音楽活動のほうに力を入れ始めたのは何かきっかけがあったのですか。

バイト君 バンドにドラムなどを加入させるようになって、(イギリスのロックバンド)ザ・フーのロックオペラ『トミー』をやるようになったことかな。

破壊 『トミー』は昔から、みんなでやりたいと言っていて。そして実際に、自分たちのCDをリリースするようになってきて、本格的にグループ魂が音楽活動に軸を置くようになったんだと思います。さらにいろいろなフェスにも出演するようになっていって、すっかりアーティスト気分です(笑)。

バイト君 でも昔、僕らにローディーさんもついていない頃は、よく楽器のトラブルもありました。

破壊 楽器も自分たちで運んでいたよね。

バイト君 その頃は雑誌の取材にしても、まだ演劇専門誌だけだったんですよ(笑)。でも何年もやっていると気づいたら、音楽雑誌の取材も受けるようになっていました。

そうだったよねえ〜、懐かしい。

破壊 初めの頃は、僕らがコントをするということから、芸人さんがよく出る雑誌でも取材されてたよね。だから、やっぱりCDをリリースするようになってから、音楽をしていることが周知されるようになりましたね。

ーーそうして活動してこられた「グループ魂」は2020年で結成25周年となりました。私もライブは拝見しておりますしスリッパも持っておりますが、25年前と現在で変化を感じるところはありますか。

破壊 みんな歳をとったぐらいじゃないでしょうか(笑)。25年前から、あまり気持ちは変わっていないんです。ただ、昔に比べて、いまは7人みんなで集まる機会が難しくなってきているところは変わりましたね。

ライブもしてないもんねえ。2020年も本当はライブをやる予定でしたができなくなりましたし。続けていくと、15周年とか、20周年とか、25周年とか、節目になる時を感じることはあります。バンドはそういう思い出作りができるのもいいですよね(笑)。みんなでやっていて、「5年前はああだったな」とか思い返せたり。

バイト君(村杉蝉之介/Cho)。1965年9月7日、群馬県生まれ。バンドでは「大道具」という設定も。

ーーおひとりずつ、好きなアーティストや最近よく聴く音楽などがあれば、教えてください。

やっぱり音楽ってさ、そんときは「これ聴く」ってありますよね。僕は舞台の前は気分を上げるために、(80年代のトップアイドル)浅香唯さんの「Believe Again」(1988年発表)を聴きますね。

破壊、バイト君 ああ、必ず聴いてるね。

これ聴くとね、もう興奮してきますよ。

ーー以前、ananwebのこの「音楽通信」に浅香唯さんがご登場くださいましたが、いまも美しい方でした。

いまもきれいだよねえ。

バイト君 僕がこの人のCDが出たら必ず買うというのは、(ミュージシャンで小説家の)町田康さんです。旧名の町田町蔵さんから、町田康さん、いまはバンド「汝、我が民に非ズ(なんじわがたみにあらず)」のボーカリストとしても活動されていて、ライブにも行っていますし、カッコいいんですよ。

破壊 誰だろうなあ。いまは(イスラエル出身のソウルシンガー)J・ラモッタ・すずめさんがいいですね。

それは、バンド?

破壊 うーん、調べて? ラジオで聞いただけだから(笑)。

「すずめ」という名前は、おしゃれで、ananぽいね(笑)!

バイト君 ……そうか、ananっぽいのを出していったほうがいいか(笑)。

破壊 まあ、この3人の音楽の趣味がバラバラなのも、いいところです(笑)。

グループ魂は25年間青春している部活のような存在

ーー2020年12月23日にオリジナルアルバム『神々のアルバム』をリリースされましたが、5年ぶりになるのですね。

破壊 そうですね、なかなかみんなで集まれなかったのもあって。前にリリースしたのは、2015年のアルバム『20名』か。シングルは2018年に「もうすっかり NO FUTURE!」というのもありましたが、やっぱり暴動さんが忙しかったのかな(笑)。

ーージャケ写ではアルバムタイトルのように、メンバーのみなさんが神さまになっています。

破壊 グループ魂はメンバーが7人なので、ちょうど七福神と同じ人数だから、多分こうなったのかなと(笑)。タイトルもジャケ写も全部、暴動さんが考えているので。

バイト君 でも僕ら、この写真がアルバムのジャケ写になるなんて、聞いてなかったんですよ。

破壊 うん、なってもアーティスト写真なのかなと思っていたら(笑)。

けっこう神さまの衣装も重くて。

破壊 15キロぐらいあったかな。

ーーアルバムの題字は破壊さん直筆だそうですが、題字を担当されたのはボーカルだからなのですか、達筆だからなのでしょうか。

破壊 急に「書いてくれ」と言われたんですよね(笑)。もしかして、昔、グループ魂で出した「はいどおもこんばんわあ!!」という本でも題字を書いたから、今回も頼まれたのかもしれませんね。

ーー収録曲にある、銀杏BOYZの峯田和伸さんが作曲を担当し参加された「モテる努力をしないとモテないゾーン」では、破壊さんと峯田さんがツインボーカルを担当されていますが、実際にご一緒に歌われていかがでしたか。

破壊 すごく良かったですね。グループ魂にちょっと違う感じの人が入ってきたという新しい感じもしましたし、年齢も違いますし、普段の感じも僕らときっと違うから。峯田くんも役者をやるときもあるけれど、やっぱりバンドの人ですし、かわいい人ですよ。すごく素直な声というか、新鮮でした。なんかかわいくて笑っちゃったくらい、やさしい人なんだと感じました。

ーーカヲルさんとバイト君は、ゲストボーカルが入った楽曲を聴いて、何か印象は違いましたか。

ゲストボーカルといえば、これまでもクレイジーケンバンドの横山剣さんとかありましたね。

バイト君 BARBEE BOYSの杏子さんとかも。でも、この「モテる努力をしないとモテないゾーン」のように、しっかりとツインボーカルでアルバムの推し曲になったというのは、今回が初めてですね。

……なんか、バンドマンて、ちゃんと音楽をやっている人じゃないですか。だから、一緒になると恥ずかしくなってしまって。僕ら、バンドマンみたいなフリしてさ(笑)。調子に乗っちゃダメだよって思いますね。

ーー音楽家の方がお芝居をするときもありますが、みなさまは役者の方が音楽活動をするというところで、何か取り組み方に違いはありますか。

破壊 あまり変わらないですね。結局、「破壊」という人を演じている部分もけっこうあるんです。自分で歌は歌っていても、曲を作っていないこともあって、役者のときと演じるという意味で違いはないですね。

バイト君 よく言っているのは、グループ魂は「部活」みたいな存在。グループ魂として活動した後の疲れ方も、部活の後のような感じなんです。

うん、そうねえ。部活っぽいねえ。一生懸命やってる(笑)。

ーーグループ魂さんの楽曲は、ビートパンクからエモーショナルなロックまでいろいろなサウンドがあって、コミカルさやシュールさがあったり、実年齢は大人だったりしますが、こちら聴き手としてはずっと「青春」を感じることがあります。

破壊 青春、いいですねえ。25年間、青春しているのは長いかもしれないけど(笑)。

そう言われれば、青春かもしれない。

バイト君 うん、青春だね!

僕ら、一生懸命やってますからね、ずっと(笑)。

ーーメンバー全員男性ですし、ほぼ暴動さんが作詞作曲をご担当されていることから、男性からの視点の曲が多く同性からの共感度が高いと思いますが、明るくてクスリと笑える曲なので女性にも支持されていますよね。

破壊 そうですか。ありがとうございます。いまはけっこう、巷では、未練とか相手の女性を想う気持ちを歌った曲が多いじゃないですか。でも、グループ魂はそういう曲がないですからねぇ……。

まあ、そうだねえ。だいたい下ネタの歌が多いもんねえ(笑)。

バイト君 今回のアルバムに唯一ある女性目線の曲は「平成の記憶がない!」という曲。

破壊 ああ、これは朝起きたらおばさんになっていたという歌です(笑)。たまに女性が主人公の曲はありますね。

それぐらいですね、男性目線の歌が多いです。

またバンドで集まってライブをしたい

ーーお話は変わりますが、みなさん、音楽活動や俳優業などご多忙かと存じますが、オフの日はどんなふうに過ごしていますか。

破壊 そういえば普段どうしているか、みんなに聞いたことないね(笑)。

バイト君 僕も気になるなあ、何してるんですか(笑)?

破壊 本当、なんにもしてないなあ。

僕は自粛期間に、低温調理器にハマりましたね。「ボニーク」という低温調理器があって、自分でよく料理をするので、胸肉とかお肉を柔らかくしていましたね。最近はあまりできていないから、久しぶりにやりたいな。

破壊 僕はそうだな……食べ歩き。いま自分のなかで流行っているのは、ベトナムのサンドイッチの「バインミー」ですね。もともとはハード系のパンが好きだから……なんてウソなんですけど(笑)。

ーーあれ、ウソなんですか(笑)!? 破壊さんのオフの日は謎ですね(笑)。

破壊 ははは(笑)。

バイト君 僕は、部屋にちょっとしたレンタルビデオ屋さんの映画コーナーぐらいの数のDVDやBlu-rayがあって、古い映画ばっかり観ていますね。

あなたはDJもやってるよね、あれは仕事なの?

バイト君 いやいや、DJは趣味です。レコードを集めるのも趣味で、たまにDJをやっています。

破壊 そう、たまにカッコいいなと思うときがあって、それはDJをやっているときと、スキーをやっているとき(笑)!

バイト君 でもスキーにも全然行ってないですねえ。スキーをしているときの僕は、カッコいいんですよ(笑)。

破壊さんしか、スキーしているところを見たことないよね。

破壊 バイト君のお父さんが、映画『私をスキーに連れてって』の原田知世さんみたいな格好だったことを覚えています(笑)。

ーーでは最後に、今後の抱負をお聞かせください。

破壊 グループ魂としては、どんなふうに活動できるか、まだわからないんですよね。メンバー個人ではそれぞれの仕事でも忙しいから、バンドとして全員で会う機会がめったにないので、どうなっていくか……。

そのときどきの状況にもよりますが、またライブができるようになるといいですねえ。

バイト君 いつかまた、いろいろできるようになるといいなあ。

破壊 けっこう先になるかもしれませんが……また歌いますよ!

取材後記

電撃的な解散と再結成の発表直前に取材を決行。グループ魂から破壊さん、港カヲルさん、バイト君が『ananweb』に登場してくださいました。俳優など、もともと多忙を極める方を中心に結成されていることもあって、 新作も5年ぶりというタームです。今回、解散発表をされましたが、約1年後には再結成とライブも決定しているので、驚きながらも安心したファンの方も多いのでは。そんなグループ魂のニューアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。

写真・広川智基 取材、文・かわむらあみり

グループ魂 PROFILE

1995年に破壊(阿部サダヲ/Vo)さん、暴動(宮藤官九郎/G)さん、バイト君(村杉蝉之介/大道具)の3人で結成。その後、小園(小園竜一/B)、港カヲル(皆川猿時/MC)、石鹸(三宅弘城/Dr)、遅刻(富澤タク/G)の4人が加入して、現在のメンバー編成に。

2002年、アルバム『Run魂Run』でメジャーデビュー。2005年、シングル「君にジュースを買ってあげる」がヒットし、12月にはこの曲で「NHK紅白歌合戦」に出場。2011年、結成15周年を記念した全国ツアーを行い、ツアーファイナルとして初の日本武道館ワンマンライブを実施。

2015年に結成20周年を記念したオリジナルアルバム『20名』、2017年に港カヲルが実年齢で46歳を迎えることを記念したソロデビューアルバム『俺でいいのかい 〜港カヲル、歌いすぎる〜』をリリース。

2020年、結成25周年を迎える。12月23日には、5年ぶりのオリジナルフルアルバム『神々のアルバム』をリリース。

12月30日、解散と、2022年新春の再結成ライブを発表し、世間を驚かせた。

Information

New Release
『神々のアルバム』

(収録曲)
01.【VRグループ魂】
02.もうすっかりNO FUTURE!
03.モテる努力をしないとモテないゾーン
04.Over 50めんどくさい
05.ケーシー高峰
06.【助演男優賞】
07.サ!セ!テ!イタダイテマス
08.うそれもこんう
09.昼も蕎麦だった
10.【神々のアルバム】
11.それでも生きなきゃ死んじゃう音頭
12.平成の記憶がない!
13.【出演者ですけど】
14.きたえすぎ
15.マジックミラー Go! Go!
16.Mr.ハラスメント
17.【特報!皆川スポーツ ゲスト:病院坂49】
18.痛風だけど恋愛したい
19.男は泣く

2020年12月23日発売
(通常盤)
KSCL-3229(CD)
¥3,000(税別)

(完全生産限定盤)
KSCL-3227〜8(CD+DVD)
¥3,700(税別)
*DVD内容「特典映像 グループ魂独占男の60分」

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