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タイの暑い正月を祝う、冷やし茶漬け。

  • 2021.1.10
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文・写真/松本幸子(在バンコクコーディネーター)タイの正月は1月ではなく4月中旬で、1年で最も暑い季節である。正月といえば『水掛祭』といわれる人々が水をかけ合うイベントが有名だが、もうひとつ忘れてはならないのが、その暑い時期を乗り切るための料理、カオチェーである。カオ(Khao)はご飯、チェー(Chae)は漬ける・浸すという意味で、日本でいうところの冷やし茶漬け的な食べ物である。

タイ料理といえば辛いもののイメージが強いだろうが、このカオチェーはさっぱりしていてサラサラと食べられる。冷やし茶漬けがただの正月料理と侮るなかれ、カオチェーの歴史は古く、ラマ2世の時代に王室シェフが王様の食欲減退を心配して暑い季節を乗り切るためモン族の食事からヒントを得て作ったと伝えられている。こうして、夏の伝統料理としていまでも定番となっている。

カオチェーの作り方は、まずはメインとなるご飯を冷たい水に浸すのだが、この水がポイントでジャスミンの花を水に浸して花の香りを水に移したものを使う。ほのかに香る爽やかなジャスミンの香りが、食欲が減退する暑い夏の日でも食べやすくしてくれる。仕上げには少し花も浮かべて見た目から気分を盛り上げるようにも工夫されている。

このメインの冷や飯にさまざまなおかずが添えられるわけだが、これらもまた栄養もあり、見た目にも美しいものが考えられているようである。

たとえば、プリックヤッサイムーは豚の挽き肉を大きめの唐辛子に詰めて揚げたもの、カピットートはエビ味噌にみじん切りのニンニク、小玉ネギ、コリアンダー、レモングラスを混ぜて揚げたもので、いわゆる伝統的なタイのおかずでさっぱりしたご飯に合うように、どれも甘かったり辛かったりと比較的濃い味になっているようだ。

カオチェーはおかずの種類が多いのと、ジャスミンの花を水に浸し香りを移したりと結構手間がかかるため、最近の都市部の核家族は自宅で作るよりレストランで食べることが多いようだ。しかし、やはり正月なので家族親戚が集まれば女性たちはせっせとおかずを準備して、みな今年も健康に過ごしいい年になりますように、と食卓を囲む。街のレストランでは3月後半になると、「カオチェーあります」という看板が出されるようになる。この看板を見かけると、あ〜そろそろ正月かぁ、という気分になるのも暑い国のタイならでは。

カオチェーはタイのいちばん暑い季節、3月後半から5月頃までの限定の料理だ。各レストランは美しく飾る工夫をしてオリジナルカオチェーを提供しているので、その時期にタイに行く機会があれば、ぜひいろいろなレストランで試してみてはいかがだろうか。

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