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会いに行けるパンダ。シャンシャンのアイドルとしての使命感【辛酸なめ子の東京アラカルト#46】

  • 2021.1.3
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2020年12月末で中国に返還されるはずだったパンダのシャンシャン。コロナの影響でその期限が延びて2021年5月末になった、というのは不安な世の中で明るいニュースの一つでした。

返還前に一目でも会いたい

シャンシャンは勝手ながら思い入れのあるパンダです。母親シンシンがシャンシャンを身ごもって無事に生まれるかどうか国民が見守っていた頃、パンダ舎の外側からシンシンにテレパシーで体調はどうか尋ねました。すると「この子は強いから大丈夫」という答えが返ってきたような気がしたのです。

それから無事に誕生したシャンシャン。一般公開の初日に朝早くから並んだのも良い思い出です。

モコモコしたシャンシャンがお母さんのあとをついて歩いている姿が忘れられません。それからあっという間に時が経ち、シャンシャンも3歳半に。返還前に一目でも会いたいです。

ただ昨今の感染症の状況から、ふらっと恩賜上野動物園に行けるような状況ではありません。動物園に行きたい人は公式サイトで整理券を予約する必要があります。見ると結構埋まっていて、平日の15時45分という微妙な時間帯を予約。

予約時間前に行くと入場待ちの列ができていました。10分ほど寒さに耐えて、入り口近くで整理券のQRコードを見せて、チケットを購入し、入場できた......とホッとしたのもつかの間、目の前にはさらに過酷な状況が広がっていました。パンダ舎の列です。

順路は二段階あって、最初にパンダ舎でひとめシャンシャンを見てそのまま通り過ぎて動物園内に進む動線。こちらは並ばずにスーッと通れますが写真撮影は禁止です。目にパンダを焼き付けるしかありません。

(やっと動物園に入れたらシャンシャン観覧に60分待ちの標示が......。寒さにも慣れるでしょうか)

もう一つの列は、写真撮影したい人が一階パンダ舎を通って並び直す列。こちらには「60分待ち」の標示があって16回くらい折り返している長蛇の列が......。

シャンシャンと再会し、成長ぶりに感涙

(パンダ舎に近付いてきました。壁の穴がパンダになっていたり、細かい演出に気付きました)

とりあえず、最初にシャンシャンを拝む道を通ったら、パンダがこちらを向いてまったりしていました。あれ? 大きい......これはシンシンかリーリーでは?と思って、行列を整備しているおじさんに「シャンシャンがいなかったですが......」と言ったら「いつもいるよ!」という答えが。

あの結構大きく育ったパンダがシャンシャンでした。赤ちゃんのイメージが強いので最初わかりませんでした。もう2回目の列に並んでもう一度じっくり見るしかありません。

ちなみにパンダの両親は西園の「バンダのもり」にいたらしいです。こちらの観覧終了は16時20分。間に合うためには園に入る時間を早めにした方が良いことがわかりました。

(1時間待ちのパンダ舎の列。他の動物を見るのは半ば諦めモードです。マヌルネコに会いたかった......。)

シャンシャンを撮影したい人の1時間待ちの列に並び、さらなる寒さに耐えました。パンダマニアの方が多いのか、パンダのぬいぐるみやキーホルダー、エコバッグなどを持っている人が多いです。そして本格的な望遠カメラを持った女性たちも。推しパンを激写したいという熱意が感じられます。

列は少しずつ進みながらも1時間ほど野外で待つことに。寒い時期は、手袋とホッカイロ、ホットドリンクが必須です。何も持っていなくて、かなり厳しかったです。

時間帯によっては100分待ちとかもあるようで、寒い季節は万全の準備で並ぶのがおすすめです。

後ろのバブル世代の女性が鈴木保奈美のような語り口調で、年末年始はスキーに行きたいとか飛行機乗りたいとか、福袋を買う予定などを無邪気に語っているのが聞こえ、その楽しげなヴァイブスで少し暖まりました。17時近くなると日が落ちて寒さが身にしみます。

(木の上でまったりしているシャンシャンとついに再会! こっちを向いてくれていてありがたいです。ずいぶん大きくなりました)

並び続けてやっと謁見できたシャンシャン。撮影は歩きながら短時間しかできませんが、こっちを向いて笑っているような表情で、アイドル的な動物のプロ意識に感じ入りました。これまで何度かパンダを見に動物園に来ましたが、後ろを向いているパターンも結構あったので......。

(歩きながら別の角度から撮影。このあとこちらを向いてくれて目が合った気がして感動。ほとんどアイドルイベントです)

寒い中、長時間並んでいた人々にサービス精神旺盛に顔を見せてくれたシャンシャン。「シャンシャンありがとう!」と通り過ぎながら声をかけたらもこっちを向いてくれたような......。感動で目頭が熱くなりました。シャンシャンはこの世に光明をもたらすために生まれてきてくれた天使です。一瞬の出会いでも心に焼き付けられました。

(お土産ショップのパンダグッズコーナー。オープンエアなので寒いですが感染の危険は少なそうです)

シャンシャンの列に並んでいたら閉園時間になってしまい、他に見ることができたのは近くにいたアメリカバイソンくらい。バイソンは荒ぶって鉄のドアに激しく頭突きしていました。

(荒ぶっていたアメリカバイソン。パンダ舎と近くて、17時の閉園までに唯一見ることができた動物です)

もしかしたらパンダばかり人気が集中しているのに理不尽さを感じているのかもしれません......。バイソンに心の中で励ましの念を送りつつ、動物園を後にしました。

(シャンシャンに捧げる駅構内のクリスマスツリー。思い出写真が飾られ、動画も流れていて胸が熱くなります)
(上野駅はこんなにパンダグッズだらけです。いずれシンシンとリーリーが返還された後はパンダの思い出でやっていくことになるのでしょうか......。)

寒くて過酷だった待ち時間も、シャンシャンの笑顔(推定)で和らぎました。上野の駅ナカショップはパンダだらけで、経済を回してくれているパンダファミリーの偉大さを実感しました。

※上野動物園は1/11まで臨時休園中。1/12は休園日です。再開日に関しては上野動物園公式サイトをご確認ください。

辛酸なめ子

東京都生まれ、埼玉県育ち。漫画家、コラムニスト。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。近著に、『ヌルラン』(太田出版)、『タピオカミルクティーで死にかけた土曜日の午後』(PHP研究所)『スピリチュアル系のトリセツ』(平凡社)『愛すべき音大生の生態』(PHP研究所)などがある。

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